特集|ガラリと変わるフォーミュラEのシーズン9。ニューマシンやニューフェイス……幕開けを前に知っておきたい5つのこと

 

 2023年のフォーミュラEシーズン9に先立ち、フォーミュラEでは11チームのうち10チームがドライバーラインナップを変更し、エントリーリストには様々な名前が並んでいる。これまでフォーミュラEで使用されてきたGen2マシンは役目を終え、戦闘機にインスパイアされたGen3マシンに置き換えられる。なお、このチャンピオンシップに否定的な姿勢を取る人たちに向けて言うと、ファン投票によって出力向上が行なえる「ファンブースト」は廃止された。5秒の出力向上ではほとんど差が生まれることはかったが、もう単なる”人気投票”とはならないのだ。
 開幕を前に、各チームはデリバリーされたGen3マシンを箱から出し、タミヤのプラモデルのようにマシンを組み立てていったのだろう。そして出力向上が行なわれたパワートレインを新たに搭載する機会を得たのだ。
 駆動用モーターは、これまでの250kW(340PS)から350kW(475PS)に最高出力が大幅アップ。フロントに搭載される250kWのモーターはエネルギー回生用としてのみ使用され、フロントとリヤで計600kWの回生能力を持っている。レース中に使用されるエネルギーのうち40%が回生によるもので、Gen2の25%からは大きく増加しており、フォーミュラEはこの数字に誇りを持っている。
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 ウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングが設計したGen3の新バッテリーでは、これまでマクラーレン/アティエヴァ(現ルシッド・モータズ)が製造していた52kWhの旧パッケージから小型化に成功。結果として、マシンの軽量化にも貢献している。
 タイヤサプライヤーもミシュランからハンコックに変わり、新シーズンに向けて基準となるモノはほとんどない。しかしその未知の領域は、これからどんどん開拓されていくことだろう。
 そうした要素が相まって、シーズン9は本当に素晴らしいシーズンとなるかもしれない。新レギュレーションによる予想不可能性、競技フォーマットの調整、そしてリセットされた各チームの開発進度によって、一進一退のタイトル争いが展開される可能性もある。新マシンによるスペクタクルなレースが実現すれば、伸び悩むフォーミュラEのの視聴率も大きく向上するかもしれない。
 ただ、ここで問題なのが、開幕前に発生しているマシンの問題だ。Gen3に使用される共通部品の納期に遅れが生じ、メーカーがテストをキャンセルする事態が発生。新型バッテリーの開発も難航し、オーバーヒートや出力低減が頻発し、パッケージングそのものを見直す必要に迫られた。
 フォーミュラEはGen3マシンでリヤブレーキを廃止し、モーターの回生で制動能力をまかなうという大胆な選択を行なったが、走行マイレージが限られるテストの中で、ブレーキ・バイ・ワイヤーの問題に悩まされたチームもあった。
 ジャガーから参戦するサム・バードはルーマニア・カラファートで行なわれたプライベートテストでクラッシュを喫し、エンビジョン・レーシングのセバスチャン・ブエミはスペイン・バレンシアで行なわれた公式テストでマシンがシャットダウンするトラブルに見舞われた。
 不安要素ではあるものの、これはあくまでもテスト。エンジニアたちは、実戦を前に全てのトラブルを洗い出すために「マシンを壊す」必要があるとも言う。仮に開幕戦メキシコシティePrixでこれらの問題が続けば、ドライバーは危機的状況に陥るが、我々はまだその時を迎えていない。緊急ブレーキの搭載が準備されているが、開幕戦までには間に合わないだろう。

ブエミは日産からエンビジョンへ移籍したが、良い蹴り出しとはならなかった。
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