F1技術解説:レッドブルRB19の圧倒的速さを可能にしたアイデア(2)圧力中心の移動を軽減、挙動の安定を図る
2023年F1で圧倒的強さを誇るレッドブルRB19。その速さをもたらすコンセプトとアイデアを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが分析する(全3回)。第1回「独創的なフロアとサスペンション」 に続く今回は、走行中のダウンフォースのバランスをより一定にするためのレッドブルの発想について紹介する。
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ブレーキングでマシン前部がダイブすると、フロントウイングがより強く働く(フロントウイングがより路面に近づくことで、グランドエフェクトの効果が増すため)。言い換えれば空力的な圧力中心が、前方に移動することになる。
その後、ブレーキングを終えて挙動が安定すると、圧力中心は後方に移動する。そしてドライバーがアクセルを踏み込むと、圧力中心はさらに後方に移動する。このような圧力中心の移動はレーシングカーに限らず、あらゆる移動物体に存在するものだ。そしてF1マシンの場合、昨シーズンから導入されたグランドエフェクトトンネルによって、この傾向はより強調されるようになった。
圧力中心の移動が大きくなるということは、マシンの挙動がいっそう不安定になることを意味する。新規約導入初年度だった2022年のF1マシンの中には、その傾向を防ごうとするあまり、極端なフロア下のデザインを採用したものもあった。
その結果、たとえばブレーキング時に何が起きたかといえば、圧力の中心を後方に移動させ過ぎ、フロントがうまく入らなくなる。昨シーズン、少なからぬマシンがアンダーステア挙動に手こずったのは、まさにこの理由からだった。
レッドブルの場合、それらの問題をさまざまなシステムによって軽減している。
・トンネルの高さを変えることで、圧力の中心が急激に動くことなく、より緩やかにした(ただし理論上の最大ダウンフォースは小さくなる)。
・ブレーキングで潜り込みにくいマシンは、圧力中心が前方に急激に移動しないので、コーナーでのバランスが取りやすい。
・ブレーキング時にダイブしにくいと同時に、加速の際の後方へのピッチングもしにくい。その結果、コーナリング中のバランスが一定になり、運転しやすくなる。
(第3回に続く)
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