F1解説:アゼルバイジャンでのペレスの勝因を探る(1)フェルスタッペンを凌ぐレース運びのうまさ
2023年F1第4戦アゼルバイジャンGPで、レッドブルのセルジオ・ペレスが、チームメイトのマックス・フェルスタッペンを破って優勝を飾った。ペレスが2度のチャンピオンに勝った理由を、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが分析する。
────────────────────────────────
セルジオ・ペレスは、アゼルバイジャンGPで2勝した最初のF1ドライバーである。これはおそらく偶然でも、幸運によるものでもない。
ペレスが大きな幸運に恵まれたように見られるのは、セーフティカーが導入され、マックス・フェルスタッペンなど多くのドライバーがまだコース上をスロー走行する中、最高のタイミングでピットストップを行えたからである。ペレスの他にはシャルル・ルクレールもこの運に恵まれ、おかげでライバルたちより約9秒少ないタイムロスで済んだのだった。
この点だけでいえば、運はペレスに味方した。しかしそれ以降、フェルスタッペンの脅威を抑え、1秒以上の間隔を維持してDRSを使わせなかったのは、ペレス自身の実力に他ならない。フェルスタッペンはなんとかその差を詰めようと、40周にわたって限界のドライビングで勝負に出た。残り12周でウォールに接触したほどだ。それでもフェルスタッペンは、逆転勝利を挙げることができなかった。
ペレスの勝因で、まず最初に挙げられるのは、彼がバクーを大の得意としていることだ。フォース・インディア時代の2016年にはレッドブルやフェラーリを抑えて、予選2番手タイムを記録した。今年も金曜日の予選ではフェルスタッペンからわずかコンマ1秒遅れ、土曜日のスプリント・シュートアウトではフェルスタッペンより速いタイムを叩き出し、スプリントでの自身初優勝を果たした。
ペレスは車体アップデートの恩恵も受けた。最初の3戦を制したRB19には、フロアにさらなる変更を施され、サイドポンツーンの開口部を広くするためにバージボードのデザインも変更された(下写真参照)。その結果、これまでフェルスタッペンに敵わないことが多かったペレスの最高速が、ほぼ互角のレベルになった。
フェルスタッペンを凌ぐレース運びの巧みさが、第2の勝因だ。「第1スティントがすごく重要だった。DRSを積極的に使うことで、マックスにタイヤを必要以上に使わせることができた」と、ペレスはレース後に語っている。
どういうことかというと、ペレスはスタートタイヤのミディアムを温存するために、タイトなコーナーであえて無理せず、そこでのコンマ3秒の遅れを、終盤のストレートでのDRSで取り戻す作戦を取ったのだ。
3つ目の勝因は、フェルスタッペンが満タン状態の第1スティントで、リヤタイヤを守ることを意識し過ぎて、必要以上にペースを落としたことだった。
「いくつかのコーナーで、明らかにスピードが足りなかった」とフェルスタッペンは言う。「タイヤをもう少しアグレッシブに使うべきだった。慎重になりすぎたんだ」
リードしていた序盤2周の間、マックスは想定タイムよりコンマ7秒ほど遅かった。もしもっと速く走っていれば、チームメイトとの差は1.2秒ではなく2.6秒まで広がっていたことだろう。ペレスのタイヤマネージメントの巧さを、フェルスタッペンが警戒し過ぎたことは明らかだった。
(第2回に続く)
積読本や購入予定の書籍の情報を投稿しています
小説/開発/F1&雑談アカウントは、フォロバを返す可能性が高いアカウントです