F1カナダGP技術解説:アストンマーティンAMR23のアップデート(2)レッドブルとの差は縮まったのか

 

 2023年F1第9戦カナダGPに、アストンマーティンが導入したマシンアップグレードを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察。AMR23の細部の画像を紹介するとともに、デザインの変化とその狙いを分析する。

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 F1カナダGPでアストンマーティンがAMR23に加えたアップグレード、つまりサイドポンツーンとフロアの変更について、「第1回:レッドブルにインスパイアされたアンダーカットデザイン」 に続き、詳しく見ていこう。

アストンマーティンAMR23 F1カナダGPアップデート比較写真

 サイドポンツーン上面を見ると、エアインテーク下の窪みはより顕著になっている。フラットな部分も長くなり、その後より鋭く落ち込んでいる(マゼンタ矢印参照)。

アストンマーティンAMR23 F1カナダGPアップデート比較写真

 これによりダウンウォッシュの影響は、さらに下流から始まる。またサイドディフレクター(2022年以前のバージボードに代わるもの)は上部がわずかに手直しされ、ベンチュリートンネルの前縁もカーブしている。

 さらにポンツーンに切り込まれた溝はかなり狭くなり、蛇行している(下の比較図の黄色矢印を参照)。この部分のサイドポンツーンの端はより平らになり、丸みを帯びていない(赤矢印参照)。

アストンマーティンAMR23 F1カナダGPアップデート比較写真
アストンマーティンAMR23 F1カナダGPアップデート比較写真

 このあたかも水路のような溝の目的は、空気の流れをディフューザーの上部に導くことである。エネルギッシュで動きの速い空気がディフューザーの上部を吹き抜け、フロア下からディフューザーへと流れて行った空気を引き込む。つまり強く吸い込むのだ。

■カナダでアップデート評価を行うのは難しかった

 ではこの改良は実際のところ、どこまでうまく行っているのだろう。確かにAMR23はRB19と非常に似たコンセプトだが、同じレベルの空力的繊細さを持っているわけではない。それはカナダGP予選での一貫して低い最高速度(20台中10位と11位)が証明している。

 とはいえ今回のカナダは、フリー走行1回目がキャンセルされるという特殊事情があった。そのためアストンマーティンのエンジニアたちは、十分にアップデートの効果を確認することができなかった。レース中の特殊な天候も、助けにはなっていない。

 だが、アロンソが勝者フェルスタッペンの9秒差にまで迫れたのは(以前のレースでは20秒から30秒差が普通だった)、マシン性能の優劣というより、レッドブルがタイヤに細心の注意を払っていたからだろう。

 RB19のアンチダイブ&アンチスクワット・サスペンションは非常に安定した空力プラットフォームを提供するが、ひとつ難点がある。フロントタイヤが温まりにくいのだ。予選でのレッドブルのアドバンテージが決勝でのリードよりも小さいのは、まさにそのためだ。こうしてフェルスタッペンはタイヤを温めるのに苦労し、いつものように大きなギャップを広げることができなかったのだった。

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