【F1オーストリアGP技術解説(2)】レッドブルとアストンからヒントを得たマクラーレンの改良と、残された課題
2023年F1第10戦オーストリアGPに導入されたマシンアップグレードを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察。第1回「アップグレードを入れたライバルたちが、レッドブルに追いつけない理由」 に続く今回は、マクラーレンの新パーツ詳細の写真を紹介しつつ、チームが抱える課題について伝える。
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オーストリアGPでのマックス・フェルスタッペンは、シャルル・ルクレールの追撃に悩まされることなく勝利し、セルジオ・ペレスは15番グリッドから表彰台の3位まで上り詰めた。オーストリアの週末にMCL60を大幅に改良したマクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは、レッドブルマシンの特徴をこう述べている。
「GPSデータを分析する限り、RB19は低速コーナーと高速コーナーの間でスピードがうまく配分されている。何か特定のコーナーで速さを発揮するのではなく、あらゆるタイプのコーナーで速いのだ」
レッドブルマシンの特徴の一端は、ライバルたちよりも高いベンチュリートンネルと、より柔らかいサスペンションだ。そのため低い車高を保ったまま、コーナリングすることができる(これは低速コーナーで特に有効だ)。
そして高速コーナーでは逆に、柔らかなサスペンションがダウンフォースによって強く圧縮されても、トンネルの大きさが十分な高さを保つため、路面に近づきすぎるのを防ぐことができる。
レッドブルリンクは高速コーナーと低速コーナーのギャップが大きいコースレイアウトだ。RB19は安心して走ることができるが、アストンマーティンとメルセデスはオーストリアの低速コーナーで特に苦しんでいたようだ。AMR23については、これまでこのタイプのコーナーを得意としていただけに少し意外だった。
オーストリアでマクラーレンが投入したアップグレードは、レッドブルとアストンマーティンに触発されたものだ。今回は1台だけに限られたものの、ランド・ノリスはストレートで、そして全てのコーナーでも、ルイス・ハミルトンと同じくらい速かった。その意味では、大きな進歩を遂げたと言える。しかしノリス自身が認めるように、マシンの挙動は非常に神経質なままだ。
「マシンはどのコーナーでも速くなっているけれど、運転するのがまだとても難しい。それは今後の克服課題だね」とノリスは言う。
「そして今年に入ってからずっと不満に思っていた特性は、相変わらず変わってない。それどころか、まるで増幅されたように感じるくらいだよ」
「マシンは確かに、あらゆるコーナーで速くなった。でも挙動は変わってない。ダウンフォースがどうこうというよりも、純粋にハンドリングの問題なんだ。その解決策を見つける必要がある。そうすれば、もっと自信を持ってハンドルを握れるようになる」
マクラーレンは今週末のイギリスGPとその次のハンガリーGPで、さらなるアップデートを予定している。7月のF1にバカンスはないのだ。
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