【F1チーム代表の現場事情:番外編】F1参戦目指しロビイングに励むアンドレッティと、既存チームの冷ややかな反応
大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、F1参戦計画をなんとか前に進めようとマイアミGPを訪れていたマイケル・アンドレッティと、既存チームの代表らの反応を観察した。
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どのF1チーム代表にとっても、マイアミGPは忙しい週末だった。グランプリを前にした水曜夜にはローンチパーティが行われ、大勢のファンの歓声を浴びながら、ドライバーたちとともに全代表がステージの上に上がった。
アメリカにおいてF1がどれだけ大きな存在になったのかを目の当たりにした瞬間だった。NFLのスーパースターや有名な俳優たちがパドックを自由に歩き回っていたが、ファンの興味の対象は、F1で働く人々だったのだ。
F1に強い関心を持つ人々が大勢いる。それこそが、マイケル・アンドレッティがF1参戦を強く望んでいる理由のひとつだ。
アメリカを拠点とするレーシングチームの代表者を務めるアンドレッティは、2024年にF1に参戦することを計画しており、その承認を求めている。今のところ、F1参戦への道は非常に険しくみえる。だからこそ、状況を少しでも向上させるため、アンドレッティは関係者と話をする機会を求めてマイアミGPに足を運んだ。
週末の間、何人かのF1チーム代表の話を聞いて思ったのは、アンドレッティにとってのハードルは高そうだ、ということだ。彼らは、マイアミは素晴らしいブランプリであると賞賛し、アメリカでF1人気が高まっていることに興奮していた。だが、アンドレッティによるアメリカのF1チーム参戦プロジェクトの話題になると、一気にトーンが変わった。
「真のアメリカのチームが、アメリカ人ドライバーを擁して参戦するなら、それは非常に意味のあることだと思う」とメルセデス代表トト・ウォルフは語った。
「だが、現状、10チームがエントリーしており、プライズファンドを10チームで分けている。我々は過去10年以上にわたって莫大な額の投資を行ってきた。ここにいる組織(メルセデス、マクラーレン、アルピーヌ)は、長年F1プロジェクトに10億ドル(約1287億円)以上を投入してきたのだ。従って、(F1チームの)価値は上がる必要がある」
既存チームのプリンシパルのほとんどが、新チームが参入することでF1が希薄化することを望まないと述べている。彼らが得ている収入の割合が減ってしまうことを言っているのだ。ハース代表ギュンター・シュタイナーは、より率直な言葉で懸念を示した。
「ビジネスとして、現状、10の安定したチームが参戦している。これはF1では長年不可能なことだったし、長い間、実現できずにいたことだ。だがこの5年、すべてが非常に安定している。極めて良い状況だ。そんなときに、この10チームが、新しく誰かを連れてくるために、あえて我々自身の価値を薄める理由はあるだろうか?」
「我々は長年参戦してきた。FOMがより高い金額を分配することを望むなら、話は別だ。だが、チーム数が増えることが、単純により良い状況につながるとは言えない」
アンドレッティがF1に参戦する場合、新規チームに義務化されている料金を支払わなければならず、既存チームはそれぞれ2,000万ドル(約25億円)ずつを受け取ることになる。だがこの額では、2021年の数字に基づけば、わずか2年間の収入減をカバーすることしかできない。つまり、アンドレッティは、自身の加入によって確実にスポーツの価値を上げることを求められるのだ。
マイアミの週末、アンドレッティは、何をしていたか。自分のプランに賛同してもらうための書類にサインしてもらおうと、すべてのチームの元を訪れていた。自身のインディカーチームに所属するスタードライバーのコルトン・ハータを連れてきて、週末を通してマクラーレンで過ごさせたりもした。
インディカーチームのいくつかは、アンドレッティのプランを保証している。また、アンドレッティのメインスポンサーのひとつゲインブリッジ社がトラックサイド広告に投資したことも、F1への関心が本物であるとアピールすることになり、賢い行動だったと思う。オンライン金融サービス会社であるゲインブリッジは、世界的なブランド認知を得ることを望み、インディカーでハータをサポートしている。
マイアミでロビー活動を行っていたのはマイケルだけではなかった。アンドレッティの名前にF1が敬意を示すのは、父マリオの存在のおかげであることを、マイケルは十分承知していた。マイアミGPにはマリオも訪れており、新チームのプランに賛同する人々を増やそうと懸命に働きかけていた。また、マリオがメディア対応を引き受けたことで、マイケルはスポットライトから外れて、ビジネスに集中することができた。
こういったアンドレッティ家の努力が実るのかどうか、今後の動きに注目していきたい。この週末をきっかけに、F1やF1チームが『アンドレッティ・グローバル』がこのスポーツにもたらす価値は大きいと思い始めたとしたら、そしてそれが最終的に11番目のチーム誕生につながったとしたら、2022年のマイアミGPはより一層大きな意味のあるイベントだったということになるだろう。
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