F1第11戦木曜会見:「一番の問題はクルマの中で熱くなること」同士討ちを喫した角田、旧知のスポーツ心理学者と再タッグ
今季これまでドライバーズ会見は、グランプリ週末の金曜日に行われていた。メディア対応を含めた週末のプログラムを金曜からの3日間に凝縮して、ドライバーたちの負担が減らすというのが、当初の意図だったからだ。しかし前戦イギリスGPから、木曜日に前倒しされることになった。
実際にはドライバーたちは木曜からサーキットに来て、ミーティングや単独インタビューやプロモーション活動など、山ほどの行事をこなす必要があった。定例会見を金曜日に移す恩恵は、ほとんどなかったということだ。
しかも今年からの金曜会見は20人全員の出席が義務付けられ、終了後は待ち構えているTV局の囲み取材で同じ質問に延々と答え続けなければならない。そのため会見が木曜日に戻っただけでなく、出席者も5人ずつ2グループの10人、残りの10人は会見場の外で囲み取材のみを受けるという形式に変更された。
会見第1部には、ダニエル・リカルド(マクラーレン)、ジョージ・ラッセル(メルセデス)ら5人が出席。リカルドはマクラーレン2年目の今季も、浮上のきっかけを掴めずにいる。イギリスGPも予選14番手、レースも13位完走と、まったくいいところがなかった。
その理由を問われたリカルドは、「正直言って、まだその真相を探っているところだ」と、本人も五里霧中の状態。そのコメントを聴く限り、症状はかなり深刻なようだ。
リカルド:かなり暗いレースだった。とても、とても、とても遅くて、ずっとペースが上がらなかった。簡単にいえば、あの週末はグリップ不足だった。周りのクルマと同じグリップが得られているとは、とても思えなかった。1周の間に、それが何度も繰り返された。あるコーナーだけが悪くて、他のコーナーは大丈夫というんじゃなくて、どこもかしこもグリップが不足している感じだったんだ。不可解なレースだったよ
一方のラッセルは、メルセデスマシンのアップデートに手応えを感じながらも、悔しいリタイアとなった。周冠宇(アルファロメオ)の大クラッシュ直後にコクピットから降りて駆けつけたために、レース復帰を許されなかったのだ。
Q:赤旗中断後の再スタートができなかった点で、トト・ウォルフ代表やチームと話し合ったと思います。彼らはあなたが飛び降りた理由を、理解していたのでしょうか?
ラッセル:もちろんだよ。ごく自然な反応だった。あんな恐ろしい出来事を目の当たりにしたんだからね。そしてあの時は、僕のマシンも終わりだと思ってた。でも結果的には、ただのパンクだった。だから余計に、悔しさがこみ上げてきたよ。もう一度やり直せば、きっといい結果を残せたはずだからね。
Q:車から降りたときの、心境を話してください。具体的に、何を見たのでしょう?
ラッセル:周が車から出られずに閉じ込められているのを見たとき、ある種の恐怖を覚えたよ。ドライバーなら誰でも、閉所恐怖症とは言わないまでも、自分のヘルメットの周りがヘイローやヘッドレストで囲まれ、頭の上にタイヤの壁があって出口をふさがれ、逆さまにぶら下がった状況には恐怖を感じるに違いない。そしてあれを見て、状況改善の必要性も感じた。バリアとキャッチフェンスの間に隙間があって、彼は明らかにそこに捕らわれていたからね。あれは早急に、解決すべき問題だよ
第二部に出席した角田裕毅(アルファタウリ)には、いつも以上に多くの質問が飛んだ。ほとんどがピエール・ガスリーとの同士討ちに関するものだったが、角田は淡々と、そして真摯に受け応えていた。
Q:チームメイト同士の接触は、特にポイントが目前に迫っているときには、決して理想的なことではありません。レース後のブリーフィングでは、どんな話し合いが?
角田:接触は、完全に僕のミスでした。チームにはすぐに謝りましたよ。特にピエールには。もちろんチームはがっかりしていました。シルバーストンは難しいレースになると予想していて、それでもふたりがポイント圏内を走っている最中でしたからね。それに加えて、僕のデブリがマックスのクルマに入ってしまった。つまり僕にとっては、本当に悪い1日でした
Q:ヘルムート・マルコは今週からスポーツ心理学者を雇い、あなたとアルファタウリに協力してもらい、彼が言うところの気性の激しさをマシンのなかでコントロールするようにしたと言っています。あなたにとってその措置は、歓迎すべきことですか?
角田:彼とはすでにF2で一緒に仕事をしてきました。なので再び彼と組めるのは、本当によかったです。彼の存在は、僕がF1にステップアップできた理由のひとつと言ってもいいくらいですから。F2で安定した結果を出すことに、彼は大きく貢献してくれました
僕の一番の問題は、依然としてクルマのなかで熱くなってしまうことです。少しはマシになったとはいえ、もっと改善しなければと思ってます。だから、新しいトレーナーがうまく機能してくれて、今後に向けていい仕事ができることを期待しています。
すると端に座っていたフェルスタッペンが、角田への援護射撃のような発言をしてくれた。
フェルスタッペン:僕は特に心理学者と組んではいないけれど、もっとうまくやれることはないかといつも振り返っているよ。僕自身、無線で怒ることはよくある。それが自分のパフォーマンスに影響するとは、思っていないけどね。何より、自分自身が周囲の状況に腹を立てなくなる日が来たら、もうこのスポーツではやっていけないと思う。自分の結果を気にして、どんなパフォーマンスを発揮できるか気にしているからこそ、いろんなことに腹を立てるわけだから。もちろん週末を通しての仕事の進め方は、できる限り冷静でいるように心がけてるけどね。
旧知のスポーツ心理学者と再び組むことで、角田の走りにどんな変化が現れるか。大いに期待し、注目したいところだ。
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