F1技術解説:サウジアラビアGP(3)アップデートの効果見られず。フロントリミテッドサーキットで苦しんだフェラーリ

 

 2023年F1第2戦サウジアラビアGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回「レッドブルが導入したビームウイングと、明らかになったトランスミッションへの不安」第2回「レッドブルに次ぐポジションに浮上したアストンマーティンAMR23の長所と短所」 に続く今回は、フェラーリが苦戦した理由に注目した。

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■1ラップの速さは優れているフェラーリ

 フェラーリの開幕戦での不調は、サクヒール・サーキットの舗装路面の荒さとデグラデーションの大きさが理由だとされた。

 ところが第2戦サウジアラジアでも、フェラーリは速さを見せられなかった。SF-23に加えたフロントウイングフィンの切り欠き(下写真の緑矢印参照)と再設計したフロアエッジというアップデートが、ほとんど効果を発揮しなかったのだ。

フェラーリSF-23 ウイングエンドプレート比較
フェラーリSF-23 ウイングエンドプレート比較

フェラーリSF-23 フロア比較
フェラーリSF-23 フロア比較

 シャルル・ルクレールは予選で2番手タイムを出し、セルジオ・ペレスのポールポジションからわずか0.155秒差だった(ただしフェルスタッペンがQ3に出場していれば3番手タイムだっただろう)。純粋なスピードという点では、フェラーリはかなりの実力を備えていると言える。

 ただしアストンマーティンと同様、フェラーリも高速区間でできるだけ抵抗を少なくする必要があり、レッドブルに劣る点はまさにそこだ。

■決勝ではフロントタイヤの劣化に苦しみ、競争力が低下

 一方で第2戦サウジアラビアではバーレーンで見えた傾向とは逆に、フェラーリもレッドブルも先代の血統を受け継いでいることがわかった。少なくともジェッダの市街地コースでは、フェラーリはより良い加速と低速コーナーでの大きなダウンフォースを持ち、レッドブルは高いトップスピードと優れたエアロ効率を持っていたのだ。

 とはいえ2022年と比較すると、フェラーリはもはや再加速と低速コーナーの速さにおいて、ベストマシンの座をアストンマーティンに奪われている。ただしその代償として、アストンマーティンは高速区間でのタイムロスが大きく、フェルナンド・アロンソは予選でルクレールに対しコンマ3秒以上も遅れを取った。

 だがレースでは形勢が逆転する。フロントリミテッド・サーキット(フロントタイヤに厳しい)のジェッダでは、フロントタイヤのオーバーヒートによって、フェラーリの相対的な競争力は消失した。

2023年F1第2戦サウジアラビアGP カルロス・サインツ(フェラーリ)
2023年F1第2戦サウジアラビアGP カルロス・サインツ(フェラーリ)

「特にハードタイヤが問題だった」と、カルロス・サインツは言う。
「メルセデスやアストンマーティンよりも、タイヤの劣化が酷かった。レースでスピードが出ないのは、ダーティーエアの中で走っていたからでもあった。まともなラップタイムを出すには、(予選のような)クリーンエアが必要なんだ」

「シャルルと僕はハードタイヤで本当にプッシュしていた。でも前のマシンについていくのは不可能だった。メルセデスやアストンマーティンは、僕らのコンマ2、3秒前にいた。そしてレース序盤は、(バーレーンよりも)路面が優しい有利な条件にもかかわらず、僕らはレッドブルより1秒遅かった」

 ピットストップを行った直後にセーフティカーが導入されたことも、フェラーリの2台の助けにはならなかった。とはいえセーフティカーがなかったとしても、レッドブル勢は圧倒的なアドバンテージで2連勝を達成していたことだろう。どうすればレッドブルに追いつくことができるのか、フェラーリとメルセデスは今、大いに自問自答を重ねているはずだ。

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