F1技術解説:レッドブルRB19の圧倒的速さを可能にしたアイデア(3)強力なDRSも武器のひとつ。すべての要素が完璧に融合
2023年F1で圧倒的強さを誇るレッドブルRB19。その速さをもたらすコンセプトとアイデアを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが分析する(全3回)。第1回「独創的なフロアとサスペンション」、第2回「圧力中心の移動を軽減、挙動の安定を図る」に続く今回は、RB19の優れたパフォーマンスを説明するチーフエンジニアの言葉を紹介するとともに、強力なDRSシステムにも注目する。
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圧力中心の移動が少ないことは同時に、車高の変化が少ないことを意味する。その結果、RB19はより地面に近い位置で走ることができ、ダウンフォースを増加させられる(さらに比較的柔らかいダンパーを装着しながらマシンの姿勢を維持できるので、昨年のメルセデスが経験したようなバウンシングを避けることができる)。
しかし、繰り返しになるが、こうしたシステムには欠点もある。レッドブルの成功は、これらのシステムを導入したことよりも、それを完璧に機能させる方法を見出したことにあると言える。
RB19のフロアにおける高さの変化、アンチダイブフロントサスペンション、アンチスクワットリヤサスペンションといったもの自体は、決してレッドブルの発明ではない。多くの開発エンジニアにとっては既知のものだ。しかしこれらを巧みに連携させたことが、レッドブルの優れたパフォーマンスを支えている。エイドリアン・ニューウェイが自ら設計したサスペンションは、本来のメカニカルグリップの発揮と空力的安定性の両方を、高いレベルで両立させているのだ。
「ハンドリングと空力的な安定性が、車の性能に大きな役割を果たすのは言うまでもない。そしてこれらの要素は、他の側面とも連携しなければならない」と、チーフエンジニアのポール・モナハンは言う。
「エアロマップ(車の挙動に応じた空力特性を一覧表にしたもの)を完璧に作り上げたとしても、サーキットで実際に適用できなければ意味がない」
「同じように、車体特性と相性の良いパワーユニットも重要だ。さらにドライバーに、十分にコントロール可能だと感じさせる車体でなければならない。つまりF1マシンとは、さまざまな要素の融合だということだ。車体デザインはさまざまな要素のひとつの側面に過ぎないが、影響力は非常に大きい」
■DRSの効果を支えるビームウイング
RB19では、DRSもかなり有効なデバイスになっている。DRSが作動するとリヤウイングのフラップが開き、ダウンフォースが大幅に減少する(車体の曲面に沿った空気の流れが剥離するため。この現象を専門用語で「ストールする」という)。それと同時に、ドラッグも小さくなる。
そして車体後端にはリヤウイングの下に、2枚のフラップを持つビームウイングがある。ディフューザーが吐き出した気流を、上方へと効率よく流すデバイスだ。
RB19のビームウイングはアッパーフラップが他のF1マシンに比べて大きく(上の比較写真参照)、低速ではダウンフォースのさらなる発生を助けている。そしてDRSが開放された際には、その効果はさらに上がる。リヤウイングのフラップが開くと、ビームウイングも(そしてある程度はディフューザーも)ストールする。そして、ビームウイングの空力効率が強力であればあるほど、ストールの効果は大きくなるのだ。
今季のレッドブルRB19の優位性を説明する魔法の言葉はない。多くの材料が完璧に組み合わされ、この結果を出しているのだ。
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