【角田裕毅F1第4戦分析】直線スピード改善のため新パーツ投入。新品ソフトを使い切る戦略で期待に応える走りを披露

 

 2023年F1第4戦アゼルバイジャンGPで、角田裕毅(アルファタウリ)が自身だけでなく、チームとしても今シーズン初となるQ3進出を決めた。

 この結果にはもちろん、アルファタウリのマシンがアゼルバイジャンGPの舞台であるバクー・シティ・サーキットと相性がいいことが関係している。角田がF1にデビューした2021年に予選で初めてQ3に進出したのがアゼルバイジャンGPだった。チームメートのピエール・ガスリー(現アルピーヌ)もQ3に進出しただけでなく、レースでは3位表彰台を獲得した。昨年も予選で2台そろってQ3に進出。レースではリヤウイングにトラブルが生じて入賞はならなかったが、それまではポイント圏内を走行していた。

 ただし、相性だけが今年初のQ3進出の理由ではない。

「今回、僕たちはここにアップデートを持ち込み、それによってストレートラインスピードが向上しました」

 バクー・シティ・サーキットは市街地コースで直角コーナーや旧市街を通り抜ける曲がりくねったコーナーがある一方で、2.22kmという非常に長いメインストレートがある。そのため、この直線区間でのスピードが重要となる。

 今年のアルファタウリのマシンはダウンフォースがライバルと比較して十分ではない。そのため、不足したダウンフォースを補うために前後のウイングを立てなければならない。そうなると、どうしても空気抵抗が増え、ストレートが遅くなる。バーレーンGPとサウジアラビアGPで11位に終わった最大の要因もそれだった。そこで3戦目のオーストラリアGPで新しいフロアを投入したが、角田がフリー走行でダメージを与えたため、予選とレースでは使用できていなかった。今回はそのフロアを使用しているだけでなく、さらに直線スピードを上げるための新パーツを投入してきた。

角田裕毅(アルファタウリ)
2023年F1第4戦アゼルバイジャンGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 その開発陣の努力を無駄にしないよう現場のエンジニアたちが立てた戦略も素晴らしかった。今回のアゼルバイジャンGPは新しいフォーマットで週末を戦っている。予選は金曜日だけでなく、土曜日にも『スプリント』用の予選となる『スプリント・シュートアウト』が行われる。したがって、金曜日の予選だけでなく、土曜日のスプリント・シュートアウト用にも新品のソフトタイヤを用意しておきたいところだ。

 しかし、アルファタウリは金曜日の予選で新品のソフトタイヤをすべて投入した。理由はふたつ考えられる。ひとつはスプリントは8位でも1点しかポイントを獲得できないのに対して、日曜日のレースでは8位は4点も手にできる。ならば、日曜日のスタートポジションは金曜日の予選で決めるので、スプリントよりも金曜日の予選を優先したほうがいいと考えたのではないか。

 そのチームの期待に見事に応えた角田の走りも素晴らしかった。Q3に進出した角田は、最後のセッションで今シーズンのトップ4チームの一角であるアストンマーティンのランス・ストロールを上回る予選8番手を獲得。

 3年連続となるアゼルバイジャンGPでの今回のQ3進出に、3年目の成長の跡がしっかりと刻まれていた。

角田裕毅(アルファタウリ)
2023年F1第4戦アゼルバイジャンGP 角田裕毅(アルファタウリ)

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