F1のタイヤウォーマー、2024年以降も”やっぱり”禁止されない? 多くのチームが反対の意向

 

 F1では2024年から、ドライタイヤも含めて全てのタイヤでタイヤウォーマーの使用を禁止することが目指され、タイヤウォーマーなしでもしっかりと作動するタイヤの開発も進められている。しかし特にドライタイヤに関しては、タイヤウォーマーの禁止に賛同するチームは少ないようだ。
 2024年にタイヤウォーマーを禁止するか否かの最終決定は、7月末に下される予定である。しかしこの件についてはチームの賛同を集めるのに依然苦労しているようだ。
 各チームの首脳陣はタイヤウォーマーを必要としないタイヤについて、反対意見を公の場で語るのには慎重な姿勢を見せている。しかしその一方で、このタイヤを導入することについて積極的とも言えず、チーム首脳陣の大半は、この導入を望んでいないと考えられている。
 ドライバーたちもこの新しいタイヤの導入にはあまり乗り気ではなく、GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエイション)の理事を務めるジョージ・ラッセルは、スペインGP後に行なわれたこのタイヤの開発テストを担当した後、タイヤウォーマーを使わなければ「危険」になる可能性を示唆している。
 なぜタイヤウォーマーが必要かと言えば、タイヤを構成するゴム(コンパウンド)には、想定されたグリップ力を発揮するのに最適な温度があるためだ。その最適な温度よりも冷たければ、想定されたようなグリップを発揮することができず、速く走ることはできない。特にタイヤウォーマーを使わなければ、コースイン直後はタイヤが冷えた状態であるため、しっかりと温まるまでの間はグリップ力を生み出さず、走行が安定しないわけだ。
 そのため、走行開始当初から適切なグリップ力を発揮するため、適切な温度まで温める……それがタイヤウォーマーの役割である。
 しかしタイヤウォーマーを禁止するというのは、世界中のモータースポーツで潮流となっており、逆に今ではF1のようにタイヤウォーマーを使うのは少数派である。実際、町中を走っている自動車が、タイヤウォーマーを必要とすることはない。つまり、幅広い温度で最適なパフォーマンスを発揮するタイヤになっているというわけであり、F1でも同様に幅広い温度で作動するタイヤが求められている。
 とはいえ、F1で必要とされるグリップ力は絶大であり、そのパフォーマンスと汎用性を併用するのは、至難の業とも言える。しかしながらタイヤウォーマーは今やF1でしか役に立たない装備になりつつあるというのもまた事実だし、その上装備は高価で重量も重いため、様々な側面で”持続可能性”の重要さが叫ばれる昨今には適さないとして、禁止される方向で調整が進められているのだ。
 ピレリは今シーズンからウエットタイヤをタイヤウォーマーを必要としない仕様に変更。モナコGPで実戦デビューしている。また、タイヤウォーマーを必要としないインターミディエイトタイヤをシンガポールGPから投入しようとしたが、これはチームの反対に遭い却下されている。
 またピレリは、タイヤウォーマー無しのスリックタイヤの開発を進めており、スペインGP終了後にはフェラーリとメルセデスがこのテスト走行を担当。イギリスGPの後には、レッドブル、ウイリアムズ、ハースの3チームがこのスリックタイヤをテストする予定である。このテスト終了後に、2024年からタイヤウォーマーを廃止するかどうかが最終決定される。この決定は、チームの投票によって左右されることになるだろう。
 レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは「テストが終わるまで、判断を下さないと思う」とmotorsport.comに対して語った。
「ダニエル(リカルド)がテストを担当する予定だ。その走行からフィードバックを得て、ピレリが正しい決断を下すと、我々は確信している」
「これは、ドライバーたちが求めていることではないと思う。しかし私が懸念しているのは、良い形でレースを戦おうと考えた時、アウトラップなどでタイヤを急激に加熱するために、多大な労力が費やされ、その結果コストが上がってしまう可能性があるということだ」
「今は誰もがタイヤウォーマーを持っていて、それがしっかりと機能している。我々が検討すべきは、タイヤウォーマーを廃止するのではなく、それに使うエネルギーを持続可能なモノにする方法だと思う」
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