レッドブルRB19の強さの理由は“効率性”とTDが語る「過大なドラッグを発生させずにダウンフォースを生み出した」
レッドブルのテクニカルディレクターを務めるピエール・ワシェは、レッドブルの2023年型マシンRB19がメルセデス、アストンマーティン、フェラーリといった競合勢のマシンと比べてなぜ圧倒的に強いのか、その理由について自らの見解を語った。
現在までのところRB19はまさに破竹の勢いで、マックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスのドライバーふたりで、これまで開催されたグランプリ8戦のすべてで優勝している。しかも、苦戦するライバルを尻目に余裕をみせて勝っているのだ。
転機となったのは2022年初めに導入された空力に関する新レギュレーションで、これに対応したエイドリアン・ニューウェイによる新マシンは、ライバル勢よりもかなり先を行く設計であり、長年続いたメルセデスの優位に終止符が打たれた。
ワシェは、レッドブルの現在のマシンは、設計において他チームのマシンよりも空力の効率性が優れていると認めた。
「さまざまなコースで、過大なドラッグなしにダウンフォースを生み出すことに成功している。それが強さの主な理由になっているのではないかと考えている。効率性と言い換えてもいいだろう」
レッドブルの競合相手にとってひときわ大きな関心の対象となっているのが、マシンのアンダーフロアの設計だ。ペレスがモナコGPでクラッシュし、クレーンで高々と吊り上げられたとき、この部分が白日の下にさらされた。精緻な設計が極めて多くを物語っており、パドックのあちこちから驚きとも歓迎ともとれるエンジニアの嘆声が漏れてきた。しかしワシェは、他チームがアンダーフロアの設計から洞察を得たのではないかということに関して、懸念はしていないという。
「確かに彼らはフロアのディテールを見たかもしれないが、何を目の当たりにしたのか、そこから何か学べそうかと聞いてみるのも悪くない」とワシェは語った。
「彼らはガレージで撮られた写真をすでに何枚か持っていたはずだし、これまでも多少のディテールを目にしたことがあっただろう」
「これはそういうものだし、競合相手にもこうしたことは起きている」とワシェは述べた。メルセデスのアンダーフロアがやはり人々の目にさらされ、トト・ウォルフが腹を立てたという出来事を念頭に置いたものだ。
秘密が暴露されたことにチームは腹を立てたか尋ねられたワシェは、「フロアが見られてしまったからではない」と答えた。
「マシンが壁にクラッシュしてしまったことのほうがこたえたよ」
ふたつの出来事が示唆するなかで最も重要なのは、メルセデスのアンダーフロアがレッドブルのそれに比べていかに単純に見えるかということかもしれない。レッドブルのアンダーフロアは、重なった層がそれ自体で現代アートの作品のようになっている。
この差は、ニューウェイとそのテクニカルチームが、他のF1チームに比べていかに先を行っているかを改めて強調するものだ。また、他チームがなんとかしようとしても、この2、3年のうちでは対策が難しいことが浮き彫りとなった。
「正直なところ、マシンを開発しようというのであれば、できるだけ速いものにしたいと思うだろう。考えうるかぎり最速のマシンだ」
「だが成功するかどうかは、自分の速さだけではなく相手の速さも関係してくる。そう、その差が思ったよりも大きかった」
ライバル勢が差を詰めようと大規模アップグレードパッケージを新規導入するのに必死になっているなか(最も直近では、アストンマーティンがモントリオールに新パーツを持ち込んだ)、レッドブル自体の改良は比較的ゆるやかなペースで進行している。
メルセデスは今後の2戦にかけてさらなる大型アップグレードをマシンに導入すると確約しているし、ワシェは、週末が過ぎるごとにライバル勢がレッドブルに肉迫してきていることを自覚していると述べた。
「予選でそれがはっきり見えている。純粋な性能という面で回を追うごとに我々に近づいてきている」と事実を認めた。折しも、オーストリアのシュピールベルクに位置するレッドブルリンクでのホームレースが次に迫っている。
「レース中のペース管理という意味では、私たちに分がある。しかし、彼らもさらなるペースを解き放ってくるだろう。ここで競合チームがアップグレードを追加してくることがわかっており、いよいよ追い上げが厳しくなるだろう」
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