【F1チーム代表の現場事情:メルセデス】トト・ウォルフが新規チーム誕生に強硬に反対する特別な理由
大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、メルセデスのチーム代表トト・ウォルフに注目した。
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今月、F1チーム代表やCEOらが、ダウニング街10番地の英国首相官邸を訪れ、F1が産業としてイギリスの経済にどのような影響を及ぼすかについての議論を行った。メルセデスF1代表トト・ウォルフは、妻スージーと共に出席し、F1アカデミーの話題についても話し合った。その後、イギリスGPのためにシルバーストン・サーキットに移ったウォルフは、再び、今後のF1に関するある重要な問題について、意見を求められることになった。
モハメド・ビン・スライエムFIA会長が、新規F1チームについて発言、条件を満たす限り、アンドレッティと提携するゼネラルモーターズ/キャデラックを拒否するのは不可能であると述べたことについて、F1イギリスGPの週末、ウォルフを含む既存チームの代表たちが意見を聞かれた。
既存チームは、チーム数が増えることについて、否定的な見解をはっきりと示し続けている。F1がこの数年、世界的な人気を博し、収益が上がるなか、新しく参入するチームに収益の一部を持っていかれることを、嫌がっているのだ。
一方で、FIAは、参入希望者を募る『関心表明』の手続きを進め、5チーム以上が申請を行った。そのなかで最も注目を集めているのが、アンドレッティ・キャデラックのプロジェクトだ。
FIAが申請の審査を進めるなか、ウォルフは改めて新チーム加入の動きに否定的な意見を述べた。彼は、反対するための理由を懸命に見つけようとしているようだが、今回出てきた発言は、F1ファンからの共感を得られるものではなかった。
「(11番目のチームが加わる)影響は大きい」とウォルフ。
「予選セッションを見ると、現状でゴーカート場のような状態になっており、非常にこみあっている。安全面で懸念があると思う。11番目のチームをどこに配置するのかも問題だ。シルバーストンでは(映画撮影用の)ハリウッドのチームを収容することが可能だったが、他のサーキットではそれができない」
そう、ウォルフは新チーム追加に反対する理由のひとつとして、Q1でのトラフィックが危険なレベルになる可能性を指摘したのだ。2012年に24台が予選に参加していた時には、誰も不満を言っていなかったと思うのだが……。
フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールは、それほど深刻な様子ではなかったもののウォルフの発言を支持し、レッドブル代表クリスチャン・ホーナーも、チーム追加に乗り気ではなかった。しかしバスールやホーナーと、ウォルフには決定的な違いがある。ウォルフだけが、代表であると同時に、チームの株式を所有しているのだ。
株主でもあるため、ウォルフは、新規チームが自分のチームにどのような影響を及ぼすのか、株の価値にどう影響するのかについて、詳細に理解している。
チーム数増加を防ぎたいウォルフは、「我々は以前から立場を明確にしてきた。(新たに参入したい者は)チームを買収すればいい」とも述べた。
一部F1関係者のなかには、新しくF1に参戦することを望むチームにとって、唯一の手段が既存チームの買収ということになれば、10チームの価値が大幅に上昇するため、ウォルフがこういうスタンスを取っているのだと皮肉まじりに言う者もいる。メルセデスF1チームの33パーセントを所有するウォルフにとって、そうなれば潜在的な利益が高まることになるからだ。
メルセデスF1を大きな成功に導いたウォルフは、F1史上、最も優れたチームボスのひとりであり、パドック全体から大きな尊敬を集めている。しかし、チーム数の増加という問題に関しては、F1の利益とは別に、彼自身の利益の問題を抱えているため、一般からの支持を得られない発言が出てくる。FIAが新しいチームを承認した場合、大多数のチームが反発するだろうが、なかでも最も強く抵抗するのはウォルフだろう。
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