【角田裕毅F1第16戦分析】Q3進出可能な速さがありながらも15番手。ミスの後も走行を続けるべきだったと悔やむ
アルファタウリは今回のF1第16戦シンガポールGPで、イギリスGP以来となる大きなアップデートを行ってきた。その内容はマクラーレンの9項目に次ぐ、8項目にものぼる。中央部のジオメトリを変更したフロアボディとフロアエッジ、サイドウォールのカットアウトを最適化したディフューザー、インレットを変更したサイドポッド、冷却用アウトレットが追加されたエンジンカバー、これらの空力的効果を高めるためにリヤサスペンションのシュラウドにも変更が加えられた。さらにリヤブレーキドラムとリヤビューミラーにも改良が加えられた。
こうした変更により、アルファタウリのマシンAT04は「ブレーキングからエイペックスへ向かうまでのコーナーリングスピードが安定して、速くなっていると思います。今年のマシンはここが弱点だったんですが、ようやく改善されました。自信を持って、コーナーに進入していける」(角田)ようになった。
初日のフリー走行ではソフトタイヤでのアタックで失速して16番手に終わった角田だが、土曜日にはペースが回復。予選ではQ1でトップタイムをマークした。
「Q1はよかったです。クルマが期待していた反応を見せてくれました」
角田がいかに調子がよかったかは、Q1でチームメイトが3セットのソフトタイヤを投入したのに対して、角田は2セットだけだったことでもわかる。それは「Q3に進出できる自信がかなりあったから」(角田)だ。
ところが、Q2に入ると、歯車が狂いだす。まず、1セット目のソフトタイヤでのアタックで、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)に邪魔されてしまう。
「彼らのコミュニケーションがうまく行っていなかったんだと思います。マックスがまったくこちらの存在に気がついていなかったようでしたから」(角田)
これにより、角田はアタックをやめて、ピットインした。これで、角田に残されたアタックは2セット目での1アタックだけとなった。そして、そのアタックで角田はターン14のブレーキングでロックアップさせて、15番手に終わった。
「ターン14のブレーキングでロックアップしました。僕のミスです。Q3へ行けるペースがあっただけに、フラストレーションが残る予選になりました」
角田はそう言って、自らのミスを認めた。しかし、角田が犯した本当のミスはロックアップではなかった。それはフェルスタッペンにアタックを妨害された後、アタックを完全にやめてしまったことだった。
予選後、角田に「ターン4でアタックを邪魔された後、続けるという選択肢はなかったのか?」と尋ねると、角田はこう答えた。
「そのまま行けばよかったかもしれないですけど、1周あることを忘れてしまって……。満足のいくタイムを残せなかったとしても、そのまま続けるべきでした」
角田がフェルスタッペンに引っかかったのはターン3から4にかけて。つまり、まだ15ものコーナーが残っていた。もちろん、そのまま走っていても、トップ10に残れるようなタイムは刻めなかっただろう。それでもアタックを続けておいたほうがよかったと本人が後悔したのは、Q2に入ってからの路面コンディションを確認することができたからではないだろうか。
フェルスタッペンに妨害された後、5コーナーから再びアタックを開始して、全開で走ったときのブレーキングやコーナーリング中のグリップ力を確認していれば、Q2の最後のアタックで角田はターン14でのグリップ力をもう少し予測でき、ミスを犯さなかったかもしれない。
走行時間と使用できるタイヤのセット数が限られている現在のF1では、無用なラップはないと言われる。それがわかっているからこそ、角田は悔しさをにじませた。
「Q3へ行けるペースがあっただけに、かなりフラストレーションがたまっています」
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