【F1カタールGP決勝の要点】夜でも30度超、周回制限で3ストップ必至。レースに適さない環境での開催が生んだ過酷な戦い

 

 2023年F1第18戦カタールGP決勝レースは、直前になってタイヤの上限周回数が決められるという前代未聞の事態が起きた。その伏線となったのが、ロサイル・インターナショナル・サーキットの全面的な改修工事だった。2年前の初開催時にタイヤが壊れることが相次ぎ、その原因とされた高い縁石も見直されたのだ。

 ところが初日予選終了後、ピレリがタイヤの詳細な分析を行ったところ、サイドウォールに微細なダメージが発見された。新たに設置された高さ50mmの尖った縁石が原因とわかり、19周のスプリントレースではターン12、13のトラックリミットをコースイン側に広げて、なんとか乗り切った。

 しかし58周という長丁場の決勝レースでは、そんな応急処置だけでは対処できない。そこで『1セット最大18周』の周回制限が実施された。4セットのタイヤを使うことが必至で、実質的に3ストップを強制する措置だった。

 安全上の理由であり、やむを得ない部分は確かにあった。しかしその結果、各スティントは12〜18周と想定よりかなり少なくなり、これがドライバーたちにとって想像を絶する過酷な試練を強いることになった。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2023年F1第18戦カタールGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 というのも今回のカタールは2年前より1ヶ月半早い10月上旬開催のため、気温は夜になっても30度超えだった。しかも湿度はスタート時の69%から77%へと逆に上がっていき、完全な高温多湿状態。そんな状況で高速コーナーや減速時の2〜4Gもの荷重に耐えつつ、毎ラップ全力プッシュを続けるのだから、鍛え上げたF1ドライバーでも激しく消耗するのは当然だった。

 レース前から体調不良だったローガン・サージェント(ウイリアムズ)は、脱水症状を起こし41周目にリタイア。ランス・ストロール(アストンマーティン)は11位でなんとか完走したものの、「途中で気を失いかけた」という。7位のエステバン・オコン(アルピーヌ)は「2周の間、嘔吐し続けた」。

 ストレート走行中にヘルメットのバイザーを開けたり、両手を前に出して風を入れたりといった、通常のレースでは考えられない危険すぎる光景も現出した。表彰台に上がった3人も、控え室で普通に座っていたのは、これまで最も過酷とされたシンガポールでさえ、レース中水分を取らなかったランド・ノリス(マクラーレン)のみ。優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は床に座り込み、2位オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は完全に横たわっていた。

 そもそもこの数年で相次いで開催されるようになったカタール、サウジアラビアは、国内の人権抑圧問題から、開催に反対する声はルイス・ハミルトン(メルセデス)やセバスチャン・ベッテルら、ドライバーからも根強く出ていた。

 しかし潤沢な中東マネーはF1にはあまりに魅力的で、カタールはすでに2033年までの超長期契約を結んでいる。今回のゴタゴタとカタールの人権問題は、確かにまったく無関係だ。だが本来、F1レースが行われるような環境でない地域で開催を強行したことが、今回のような歪みを生んだのは間違いない。

2023年F1第18戦カタールGP
2023年F1第18戦カタールGP レース後、マシンを降りて座り込んだオスカー・ピアストリ(マクラーレン)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)

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