【全ドライバー独自採点/F1第17戦】チャンピオンもミスする難コンディションで力を発揮したペレスとノリス
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回はシンガポールGPでの戦いぶりを振り返る。
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■評価 10/10:難コンディションでノーミスだったペレス
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選2番手/決勝1位
ランド・ノリス(マクラーレン):予選6番手/決勝4位
マリーナ・ベイ・サーキットはカレンダー中最もタフなサーキットのひとつだが、そこで予選の初めからレースの終わりまで、最高のパフォーマンスを見せたドライバーがふたりいた。
セルジオ・ペレス(レッドブル)は最近思うようにいかない時期を過ごしていたが、今回は予選でポールポジション争いに加わった。僅差の2番手に終わったものの、決勝スタートでトップに立つという一番重要な仕事を成功させた。59周にわたり、限界ぎりぎりでありながら、決して行き過ぎることなく、シャルル・ルクレールを抑えきった。この日は何人かのトップドライバーたちがミスをするほどの難コンディションだったが、ペレスは一切ミスをせずに優勝をつかんだ。
ランド・ノリス(マクラーレン)はコンディションが難しくなるたびに力を見せつける。マクラーレンのアップグレードパッケージは金曜には期待したほどの効果を発揮しておらず、土曜日にもいまひとつだった。しかしノリスは予選6番手タイムを記録した。レースのトリッキーなコンディションでノリスは素晴らしい走りを見せ、5番手を走行、ルイス・ハミルトンの後退で番手に上がった。マックス・フェルスタッペンからのチャレンジをしのぎきり、一時は前を行くカルロス・サインツとのギャップを縮めたが、4位はマクラーレンとして可能な最大の結果だったろう。
■評価 9/10:2位に甘んじるも、速さを証明したルクレール
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選1番手/決勝2位
シャルル・ルクレール(フェラーリ)は非常に難しいコンディションの予選でポールポジションを獲得し、速さを証明した。だが決勝スタート時に2速でひどいホイールスピンを起こし、2番手に後退。必死にペレスをプッシュしたが、彼のミスを誘うことができず、逆に自分自身でミスをしてしまった。ペレスを追いかけ続けたことでタイヤに負担をかけてしまい、最後の8周は何もできず。それでも見事なスピードとマシンコントロールを披露した。
■評価 8/10:またもや不運に襲われたアロンソ
フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ):予選5番手/決勝リタイア
フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は今回もチームメイトより優れた走りを見せてA522をグリッド3列目につけた。スタートでランド・ノリスの後ろに下がったが、長くマックス・フェルスタッペンを抑え続けた。しかし残念ながらエンジンが息絶えたことで、またもやその速さにふさわしい結果を得られなかった。
■評価 7/10:いつもほど冷静ではなかったフェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選8番手/決勝7位
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選4番手/決勝3位
ダニエル・リカルド(マクラーレン):予選17番手/決勝5位
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選12番手/決勝6位
ピエール・ガスリー(アルファタウリ):予選7番手/決勝10位
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)には、今回タイトル獲得の可能性があったが、それが関係してか、通常より冷静ではなかったように見える。Q3でミスを犯したため、チームはそのラップをアボートするよう彼にアドバイス。しかし燃料が不足し、次のラップも断念しなければならなかった。走り切っていれば、ポールを獲得した可能性があったが、彼が予選後に示した反応は褒められたものではない。
スタートでアンチストールに入ってポジションを落とした後、うまく挽回しつつあった。しかしノリスを抜こうとしたところでブレーキングにおいて判断ミスを犯し、タイヤにフラットスポットを作り、追加のピットストップが必要になった。その後の追い上げで、なんとか7番手をつかむことができた。
カルロス・サインツ(フェラーリ)は3位を獲得したものの、予選ではポールポジション争いに加わっていただけに、自分のレースに満足していなかった。良いスタートを切ってルイス・ハミルトンの前に出た後、最後までそのポジションを守り、フェラーリに貴重なポイントをもたらした。しかしインターミディエイトでもスリックでもルクレールのペースには及ばず、彼自身、そのことに困惑していた。
ダニエル・リカルド(マクラーレン)はシーズンここまででベストの5位を獲得、その貢献もあってマクラーレンは選手権ランキングでアルピーヌの上に浮上することができた。予選はひどかったが、リカルドは決勝序盤の数周で大きくポジションを上げ、ミスなく走った。チームがスリックに交換するのを遅らせたことにより6番手に浮上、フェルスタッペンがミスで後退したため、リカルドは5位に上がり、真の笑顔を取り戻した。
アストンマーティンは今回、好結果を挙げた。ふたりのうちで上位に入ったのはランス・ストロール(アストンマーティン)の方だった。予選Q2でスリックを履くというギャンブルは実を結ばなかったが、レース戦略は完璧で、それによってストロールはピエール・ガスリーや角田裕毅の前に出ることができた。今回のストロールはひとつのミスもせず、シーズンここまででベストの走りを見せたといっていいだろう。
ピエール・ガスリー(アルファタウリ)が1ポイントにとどまったのは気の毒だ。予選では7番手を獲得、決勝では堅実にポイント圏内を走っていたが、チームがスリックに交換すると判断したのが早すぎたことで、ポジションを落とした。レース後、悔しさを表していたのも理解できる。
■評価 6/10:予選だけなら満点だったハミルトン
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選3番手/決勝9位
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選19番手/決勝リタイア
周冠宇(アルファロメオ):予選15番手/決勝リタイア
セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン):予選14番手/決勝8位
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選9番手/決勝12位
予選後に採点していれば、ルイス・ハミルトン(メルセデス)に10点をつけていただろう。それほど見事なパフォーマンスだった。だが決勝ではスタートを失敗してサインツの後ろに落ち、サインツのペースが悪かったにもかかわらず、W13のストレートラインスピードでは抜くことができず、苛立ちをつのらせた。そうして珍しいミスを犯し、ハミルトンはバリアにヒットした。幸いフロントウイングが壊れただけでコースに復帰できたが、8番手まで後退。セバスチャン・ベッテルを抜く速さがなく、終盤、小さなミスを犯してフェルスタッペンに抜かれてしまい、さらにひとつポジションを落とした。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、シンガポールGPに出場しただけで賞賛に値する。イタリアGPの週末に虫垂炎の手術を受けた後、身体的なコンディションは万全とはほど遠かった。それなのにニコラス・ラティフィより常に速かったのだ。マシンのパフォーマンスが悪かったことで大きな結果は望めないなか、クラッシュし、マシンに大きなダメージを負った。
周冠宇(アルファロメオ)はトリッキーなコンディションでチームメイトより速く、予選ではQ2に進出した。しかし決勝1周目が良くなかったことでポジションを落とし、さらにラティフィのミスによりリタイアしなければならなかった。
セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)は、ストロール同様、予選はスリックタイヤへの交換が早すぎてうまくいかなかったが、決勝ではしっかり貴重な4ポイントを稼いだ。スタート直後、素晴らしいラップを走って8番手まで上がった。スリックに交換するのがストロールより1周早く、チームメイトの後ろに後退。終盤まで7番手を走っていたが、残り半周でフェルスタッペンに抜かれてしまった。
Q3に進出したケビン・マグヌッセン(ハース)は今回の予選のヒーローのひとりだった。決勝1周目ではわずかの間、フェルスタッペンの前を走ったが、接触があったことで、マグヌッセンはまたもやブラック&オレンジフラッグを示された。なんと今年3回目のことだ。追加ピットストップにより、彼は競争から脱落、今回の彼にふさわしい結果を得られなかった。
■評価 5/10:初のシンガポールで健闘していた角田裕毅
角田裕毅(アルファタウリ):予選10番手/決勝リタイア
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選18番手/決勝リタイア
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選16番手/決勝11位
ミック・シューマッハー(ハース):予選13番手/決勝13位
角田裕毅(アルファタウリ)が予選Q3に進んだのは驚くべきことだった。今回は彼にとって初のシンガポールだったのだ。決勝ではミスなくポイント圏内を走っていた。しかしチームの判断で早めにスリックタイヤに交換したところ、コースに復帰した角田は濡れた路面に乗ってクラッシュしてしまった。
エステバン・オコン(アルピーヌ)は予選の時点からペースに苦しみ、Q1で敗退。レースでは14番手で走行した後、エンジントラブルでリタイアした。
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は金曜のドライコンディションでは期待を感じさせたが、ウエットになってからは、周冠宇ほどの速さがなかった。予選はQ1で敗退、決勝ではずっとオコンに抑えられていたが、スリックに履き替えてからはペースが大きく向上した。それでもポイントには届かなかった。
ミック・シューマッハー(ハース)は自身初のシンガポールで、チームメイトに全く太刀打ちできなかったが、それでも予選ではQ2に進出。決勝ではポイント圏外を走り続けた後に、ジョージ・ラッセルとの接触が起きて、入賞のわずかなチャンスも失った。
■評価 3/10:ラッセルにとって、今年最悪の週末
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選11番手/決勝14位
ジョージ・ラッセル(メルセデス)にとって、メルセデスに加入してから最悪の週末だったのではないだろうか。この難コースでW13を乗りこなすことができなかった。予選Q2で敗退した後、新しいパワーユニットを積んでピットレーンからスタートしたが、珍しく何度もミスを繰り返し、終盤にはシューマッハーと接触した。
■評価 1/10:ラティフィ、アクシデントで悲惨な週末に
ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ):予選20番手/決勝リタイア
これ以上ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)を批判したくないのだが、彼にとって最初で最後のシンガポールGPは悲惨な週末となった。アルボンより大幅に遅く、決勝では不注意で周冠宇に当たり、相手をリタイアさせ、自分もその後、レースを終えた。
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