【角田裕毅F1第5戦分析】着実なタイヤマネージメントでオーバーカットに成功。土曜のセットアップ変更も実を結ぶ
アルファタウリのヘッド・オブ・エンジニアリングを務めるフィル・ミッチェルによれば、「レースストラテジストが、17番手からならハードタイヤでスタートしたほうが巻き返すチャンスが大きいとユウキに提案し、ユウキも納得してその戦略を受け入れた」と語る。
それでも、アルファタウリのレースストラテジストは「よくて14位か13位を予想していた」というから、いかに角田裕毅が想定以上の走りを披露していたかがわかる。角田自身も「予想していた以上によかったです。ただ、ハードタイヤだけでなく、今日は全体的にいいペースだったと思います」と語っていた。
その要因として考えられるのは、この日の気温と金曜日の夜に変更したセットアップだ。
日曜日のマイアミは曇りときどき晴れという天候で最高気温は30.4度だった。路面温度も最高で43度。路面温度が最高で46.5度まで上がった土曜日よりもやや涼しかった。これにより、土曜日に悩まされていたフロントのオーバーヒートが若干、解消され、リヤのスタビリティを高めたセットアップが威力を発揮していくことになる。
リヤが安定していると、ブレーキングで突っ込める。「ブレーキングには自信があったので、思い切って突っ込んで抜くことができました」と語る角田は、このレースで周冠宇(アルファロメオ)、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)らをオーバーテイクしている。
攻める走りだけでなく、ハードタイヤをきちんとマネージメントする冷静さも失っていなかった。角田のピットストップは36周目だったが、これはタイヤマネージメントに長けたルイス・ハミルトン(メルセデス)の37周目より1周短いだけだった。
しかも、ただピットストップを延ばしていただけでなく、ペースを落とさなかった。ミッチェルによれば、「チームはピットストップ後にどのポジションでコースに復帰するかというウインドウを見ていた」という。チームとしては、ランド・ノリス(マクラーレン)の前でレースを再開させたかったが、36周目にピットインした角田がコースに復帰すると、さらにひとつ前のニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)の前で合流することに成功した。つまり角田は3周前にピットインして新品のミディアムに履き替えたヒュルケンベルグよりも、30周以上走ったハードタイヤで上回るペースで走行を続け、オーバーカットに成功した。
その後、2台をオーバーテイクし、10番手のケビン・マグヌッセン(ハース)を最後まで追い詰めたが、あと1.3秒足りずにチェッカーフラッグとなった。マグヌッセンが4番手からスタートしたことを考えれば、この日の角田とアルファタウリのレースは望みうる最高の結果だったと言っていいだろう。
だから、レース後の角田の表情には悔しさよりも全力を出し切った満足感が滲み出ていた。
「自分のパフォーマンスには満足しています。ポイントを獲れなかったことは残念ですが、自分が持っているものをすべて出し切って、ポジティブにレースを終えられたことはよかったと思います」
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