F1第11戦技術解説:マクラーレンはなぜ突然速くなったのか(3)「メルセデスを超えてはいない」チームが楽観しない理由
2023年F1第11戦イギリスGPで驚きの速さを発揮したマクラーレンMCL60の最近のアップグレードを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察。細部の画像を紹介するとともに、速さの理由を分析する(全3回)。
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マクラーレンMCL60は、シルバーストンと違って、バルセロナではレースで失速した。ルイス・ハミルトンとの接触でピットインを余儀なくされたことも大きかったが、予選3番手だったランド・ノリスは、17位に終わっている。それがオーストリアやイギリスでは、レースでも速さを維持していた。
MCL60はタイヤのウォームアップが早く、イギリスGPではセーフティカー導入後の再スタートでそのアドバンテージを発揮した。一方、ハミルトンのメルセデスはソフトタイヤを装着していたにもかかわらず(下の写真はメルセデスの新フロントウイング)、DRSを使っても高速コーナーで、ハードを履くマクラーレンに追いつくことができなかった。
■「弱点の70パーセントはまだ解決されていない」とノリス
しかしノリスは、今後どんなサーキットでもMCL60が速さを発揮するというわけではないと考えている。
「このタイプのサーキットではタイヤをうまくコントロールできる。高速コーナーではとても競争力があるからね。ストウのような特定のコーナーでは、レッドブルとほとんど変わらない。コプスではそれほど良くはなかったが、レース中もスピードをキープしていた。熱劣化がなかったことも、大きな助けになった」
「でもその一方で、低速コーナーではダメなクルマなんだ。運転するのがとても難しい。最新の開発でダウンフォースが増えたことで、弱点の30%は解決できた。でもまだ70%はそのままだ。これは過去5年間のマシン開発から引きずっている特性に関係している。具体的なことは、言えないけどね」
「今は最高の気分だけど、次に続くサーキットは僕らにとってそれほど優しくはないだろう。確かに進歩はしている。でもレッドブルはいうまでもなく、特定のサーキットではメルセデスと互角に戦うのも難しいだろう。やるべきことはまだたくさんあるし、複雑で時間がかかる作業ばかりだ」
長期的な目標は、特定のコンディションに左右されないマシンにすることだ。
マクラーレンは次戦ハンガリーGPで、3戦連続となるアップデートを持ち込む。MCL60の外観は、2月に発表された最初の仕様とまったく異なるものになるとのことだ。
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