【全ドライバー独自採点/F1第13戦】強みである速さとレーステクニックを発揮、成熟度も増した角田裕毅
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回はベルギーGPの週末を振り返る。
────────────
スパ・フランコルシャンは、男性ドライバーたちが、真の“男”なのか、“少年”なのかをはっきり見せつけるサーキットだと言われる。天候の変化が絡むと、最高のドライバーたちはますます輝きを増し、他のドライバーたちとの差が開く傾向にある。それはスプリント方式で行われた今年のグランプリにも当てはまった。
■評価 10/10:グリッド降格でも楽勝だったフェルスタッペン
・マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選1番手/スプリント・シュートアウト1番手/スプリント1位/決勝1位
今回もマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は圧倒的な強さを見せた。乗り越えなければならない障害は、グリッドペナルティにより日曜決勝を6番グリッドからスタートしなければならなかったことだけだった。
予選では、Q2で危うく敗退しそうになったが、Q3ではライバルたちを打ち破った。スプリント・シュートアウトでは、オスカー・ピアストリとの接戦の末に最速タイムをマーク。スプリントを楽勝で制した。日曜決勝では、17周でトップに立ち、チームメイトのセルジオ・ペレスを含むライバルたちを完全に置き去りにした。湿った路面のラディオンで態勢を崩す場面があったが、それが唯一の危うい瞬間だった。
■評価 9/10:フェラーリの良いサポートを受けて、ルクレールが表彰台に
・シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選2番手/スプリント・シュートアウト4番手/スプリント5位/決勝3位
・ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選4番手/スプリント・シュートアウト7番手/スプリント7位/決勝4位
レッドブルと戦えるマシンを持たないシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、フェルスタッペンのペナルティでメインレースでポールポジションに繰り上がったものの、セルジオ・ペレスに勝つことができなかった。しかし、チームが戦略やピットストップでミスを犯さなかったことにも助けられ、ルイス・ハミルトンを余裕で抑えきって3位を獲得した。
この週末、マシンは比較的うまく機能していたとはいえ、メルセデスには3番目の力しかなく、ルイス・ハミルトン(メルセデス)には、レッドブルやルクレールを相手にやれることはなかった。スプリントでのペレスとの接触は、レーシングインシデントだったにもかかわらず、適切でないペナルティを受け、ハミルトンは3ポイントを奪われた。
■評価 8/10:ドライでセンセーショナルな走りを見せた角田裕毅
・オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選6番手/スプリント・シュートアウト2番手/スプリント2位/決勝リタイア
・角田裕毅(アルファタウリ):予選11番手/スプリント・シュートアウト16番手/スプリント18位/決勝10位
・フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選9番手/スプリント・シュートアウト15番手/スプリント リタイア/決勝5位
・ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選12番手/スプリント・シュートアウト6番手/スプリント3位/決勝11位
マクラーレンペアのうち、週末を通して速さで勝っていたのは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)の方だった。ランド・ノリスはトリッキーなコンディションを得意としていることを考えても、ピアストリの優秀さは際立っている。スプリント・シュートアウトでは最速に僅差に迫り、スプリントレースで数周をリード、2位を獲得した。メインレースでもノリスより良いグリッドを確保していたが、スタート直後のターン1でカルロス・サインツとクラッシュし、レースを終えた。このインシデントの責任はピアストリが全面的に負うべきものではないが、ターン1に向けて3台が同時に入って無事に済んだためしがないので、もう少し慎重にいくべきだっただろう。
角田裕毅(アルファタウリ)は、堅実な週末を送った。ドライコンディションで輝き、金曜予選で11番手、日曜決勝では貴重な1点をつかんだ。ダニエル・リカルドが苦戦した週末に、角田はセンセーショナルな走りを見せ、元々の長所であるスピードとレーステクニックに加え、成熟度が増してきていることを示した。
スプリントでは珍しくコースオフを喫したので、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)の評価から減点しなければならなかった。それでもそれ以外を見ると、今回もチームメイトよりは圧倒的に強かった。金曜予選ではランス・ストロールより1秒も速かった。スプリント・シュートアウトでは、ストロールが出した赤旗によって敗退を強いられた。日曜決勝では、トラフィックを避けるために早めのピットストップを選択、前があいた状態になると、いつもどおりメトロノームのように安定した走りで、チームのために5位という貴重な結果を持ち帰った。
ピエール・ガスリー(アルピーヌ)がスプリントで3位を獲得したことは、困難な週末に直面したアルピーヌのメンバーたちにとって大きな助けになったことだろう。スプリント・シュートアウトで6番手という素晴らしい結果を出した後、ガスリーは土曜のスプリントレースでセンセーショナルなレースを展開して、ハミルトンを抑え切った。
■評価 7/10:フェルスタッペンとの差が歴然としていたペレス
・セルジオ・ペレス(レッドブル):予選3番手/スプリント・シュートアウト8番手/スプリント リタイア/決勝2位
・ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選8番手/スプリント・シュートアウト10番手/スプリント8位/決勝6位
・エステバン・オコン(アルピーヌ):予選15番手/スプリント・シュートアウト9番手/スプリント9位/決勝8位
・バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選14番手/スプリント・シュートアウト17番手/スプリント13位/決勝12位
・カルロス・サインツ(フェラーリ):予選5番手/スプリント・シュートアウト3番手/スプリント4位/決勝リタイア
・ランド・ノリス(マクラーレン):予選7番手/スプリント・シュートアウト5番手/スプリント6位/決勝7位
セルジオ・ペレス(レッドブル)は日曜に2位を獲得し、チームにマイアミGP以来の1-2フィニッシュをもたらした。とはいえ、チームメイトと比較すると、素晴らしい週末だったとはいえない。2回の予選セッションで、フェルスタッペンより約0.9秒遅く、スプリントではハミルトンとのバトルの後にリタイアした。日曜には素晴らしい走りを見せて2位をつかんだが、ペナルティで後方からスタートしたチームメイトとはまるで勝負にならず、本人もそれを認めている。
ジョージ・ラッセル(メルセデス)にとって、日曜レースで順位を挙げて6位を獲得したのはまずまずの結果だったが、週末を通してハミルトンほどの速さがなかった。そのうえ、スプリント・シュートアウトでは、チームメイトのアタックを台無しにした。日曜レースではハミルトンとは異なる戦略で走り、それが奏功して順位を上げることができた。しかしアロンソの後ろのポジションにとどまったことは、メルセデスのコンストラクターズ選手権において、良いことではなかった。
トリッキーなコンディションでチームメイトよりも苦戦していたエステバン・オコン(アルピーヌ)は、スプリントではガスリーより1周遅れでタイヤ交換を行ったことが不利につながった。日曜日には見事なレースをし、大きく順位を上げて8位をつかんだ。あと1周あれば、ランド・ノリスを抜いてもうひとつ上に上がることができただろう。
アルファロメオが得意としないコースで、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は最善を尽くしたといえる。週末を通してチームメイトよりも速かった。チームの戦略が悪かったため、土曜スプリントのグリッドは後方になってしまったが、スプリントレースのなかで順位を上げた。日曜日には大部分のドライバーとは異なる戦略を採って、フリーエアで素晴らしいペースを見せたが、ポイント争いに加わるには直線スピードが足りなかった。スタート直後に角田を避けるために芝生に出なければならなかったことが響いた。
ターン1への野心的な動きによって、カルロス・サインツ(フェラーリ)は最終的に決勝リタイアという結果になってしまった。ハミルトンを追い抜こうとしてブレーキングを遅らせ、進路を変えたことで、ピアストリとの接触が起きたのだ。サインツはイン側にマクラーレンがいたことに気付かなかったようだ。日曜の結果はよくなかったが、サインツは週末の間に良い走りをいくつか披露した。トリッキーなコンディションではルクレールよりも速さがあり、スプリントで4位を獲得したことには高評価を与えたい。
若きチームメイトに圧倒されたランド・ノリス(マクラーレン)だが、それでもチームに9ポイントをもたらした。予選でコースオフし、フロアにダメージを負ったことが結果に影響した。日曜のドライコンディションでは、ローラーコースターのような展開になり、ミディアムタイヤとハードタイヤで苦戦した後、最終的にソフトタイヤでパフォーマンスを取り戻し、7位をつかんだ。
■評価 6/10:果敢に戦うもポイント争いに絡めなかったアルボン
・アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選16番手/スプリント・シュートアウト12番手/スプリント12位/決勝14位
・ケビン・マグヌッセン(ハース):予選13番手/スプリント・シュートアウト18番手/スプリント14位/決勝15位
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)とチームにとって、期待外れの週末だった。ウイリアムズはウエットとドライの両方で誤ったダウンフォースレベルを選択したようだ。アルボンは果敢に戦ったものの、ノーポイントで週末を終えた。FW45のタイヤの劣化により、最終スティントでかなりのポジションを失うことになった。
ケビン・マグヌッセン(ハース)は予選でも決勝でもチームメイトより優れた結果を出した。ポイント争いに絡むことができなかったものの、ニコ・ヒュルケンベルグよりはタイヤの状態は良かった。
■評価 5/10:角田ほどレースマネジメントがうまくいかなかったリカルド
・ダニエル・リカルド(アルファタウリ):予選19番手/スプリント・シュートアウト11番手/スプリント10位/決勝16位
・ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選20番手/スプリント・シュートアウト20番手/スプリント17位/決勝18位
・周冠宇(アルファロメオ):予選17番手/スプリント・シュートアウト19番手/スプリント15位/決勝13位
・ローガン・サージェント(ウイリアムズ):予選18番手/スプリント・シュートアウト13番手/スプリント16位/決勝17位
ハンガロリンクでは見事な走りを見せたダニエル・リカルド(アルファタウリ)だが、スパでは低迷した。金曜予選はトラックリミット違反でQ1敗退。トリッキーなコンディションの土曜日には勢いを取り戻し、良い結果を出したものの、日曜日には角田ほどのペースを発揮できず、レースマネジメントがうまくいかずに、チームメイトから24秒遅れの16位に終わった。
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)は、日曜レースをピットレーンからスタート。チームメイトほど効率的なレースができず、タイヤがあっという間にだめになってしまい、決勝のなかで順位を上げることができなかった。
全セッションでボッタスに敗れた周冠宇(アルファロメオ)は、スパでのマシンのパフォーマンス不足を埋め合わせることができず、ごく平均的な週末を過ごすことになった。
ローガン・サージェント(ウイリアムズ)も周と同じで、チームメイトに全くおよばなかった。彼にとって週末のハイライトは、スプリント・シュートアウトでアルボンに近づいたことだったが、ドライコンディションでの差は大きく、経験あるチームメイトに匹敵するペースがなかった。
■評価 4/10:アロンソのチャンスをも奪ったストロール
・ランス・ストロール(アストンマーティン):予選10番手/スプリント・シュートアウト14番手/スプリント11位/決勝9位
日曜レースで2ポイントを獲得したものの、ランス・ストロール(アストンマーティン)は週末を通して、アロンソには全くかなわなかった。金曜予選では1秒差をつけられた後、日曜決勝では良い戦略により好結果をつかんだ。とはいえ、終盤にオコンにポジションを奪われ、アロンソからは23秒遅れだった。それより悪かったのは、スプリント・シュートアウトでインターミディエイトタイヤを使い切った後、SQ2でミディアムタイヤでアタックに出てクラッシュし、アロンソのチャンスをも奪ってしまったことだ。
積読本や購入予定の書籍の情報を投稿しています
小説/開発/F1&雑談アカウントは、フォロバを返す可能性が高いアカウントです