【F1インタビュー】フェラーリの速さを認めるも「レッドブルもしっかり力を出し切った」と山本氏。次戦フランスは“山場”
2022年F1第11戦オーストリアGPの決勝レースでは、前日のスプリントを制してトップからスタートしたマックス・フェルスタッペンがシャルル・ルクレールに3度のオーバーテイクを許し、優勝を逃した。フェルスタッペンは予想以上のタイヤのデグラデーションに苦しみ、レースペースも不足していたという。
現場を訪れた元ホンダの山本雅史氏も「今日はフェラーリの方が速かった」と認めたが、レッドブルも力を出し切ったと振り返る。また2台ともに入賞を逃す結果に終わったアルファタウリについても、次戦フランスGPでの巻き返しに期待したいと語った。
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──シルバーストンでも優勝できませんでしたが、今回のレースは久々に「負けた」という感じでしたね。
山本雅史氏(以下、山本氏):いいレースでしたが振り返ると厳しかったですね。序盤は頑張っていましたが、タイヤが厳しくなってしまった。何より(シャルル・)ルクレールの速さが上だったのではないでしょうか。ただ、しっかり2位をキープし、ファステストラップも取ったあたりは、さすがマックス(・フェルスタッペン)です。終盤、(ルクレールのマシンにスロットルの不具合が発生して)面白くなるかなと思いましたが、今日はフェラーリの方が速かった。ただ、レッドブルもしっかり力を出し切ったと思います。昨日のスプリントを勝って今日2位、チャンピオンシップポイントでも大きく縮まったわけではありません。
──山本さんはレース前、レッドブルリンクはフェラーリが強いと言っていました。悪い予想が当たってしまいました。
山本氏:フェラーリが強かったことは確かですが、(カルロス・)サインツのエンジンブローを見ると、信頼性を含めた総合的な性能では、HRC&レッドブルパワートレインズの方がいいのではないかと思います。
──一方チェコ(セルジオ・ペレス)の方はちょっと残念でした。
山本氏:ここ数年のターン4は鬼門なんですよね。エンジニアも言ってましたけど、あそこでわざわざ……。行きたくなるのもわかりますけど、あそこはかなりリスクが高いコーナーですからね。
──アウトにいる方が絶対負ける。
山本氏:あそこでわざわざいかなくても、もう1周待って、ターン3でパッシングするチャンスは十分あったと思います。少しもったいないことをしたなっていうのが正直なところです。いまのレッドブルのポテンシャルを持ってすれば(ジョージ・)ラッセルを絶対に抜けるので、最低でも4位でチェッカーを受けないと。少なくともあのポジションにいて、ターン4で飛び出さない限り、たらればですけど、ルイス(・ハミルトン)の前には確実にいたわけですから。ペレスにとっては厳しい週末だったかなと思いますね。
──フェラーリが連勝し、逆にレッドブルは今シーズン初めての連敗。潮目が変わったと思う人がいると思いますが、山本さんはどう思われますか?
山本氏:私は流れは変わってないと思っています。7月の4戦は、次のフランスGPを除けば、もともとフェラーリが優位だと思っていました。よくて2勝2敗、現実的には1勝3敗だと思っていましたから。
──次のフランスはシーズン中盤の天王山ですね。
山本氏:そうです。フランスはどちらかというとレッドブル有利だと思うので、落とせない。ひとつの山場ですね。ハンガリーは逆に低中速のトラクションのかかり方がいいフェラーリが勝つ予感がします。ただ、レッドブルも何か対策してくると思います。夏休み前の2連戦、いい形で終えたいなと思います。
──HRCのエンジンを搭載するもうひとつのチーム、アルファタウリは残念な結果に終わってしまいました。山本さんから見て今週末の角田裕毅選手はいかがでしたか?
山本氏:今週末は角田くんも(ピエール・)ガスリーもクルマが思うように動いていないというのは見ていて感じました。イギリスもそうですが、もう少しドライバーがしっかり走れるようなクルマの状態になってほしいなと思います。フランツ(・トスト)が次のフランスでアップデートを入れると言っていたので、そういった意味で角田はいまクルマが持っているポテンシャルを引き出して戦ったと思います。
──今回も予選でチームメイト同士で少しやり合っていました。アウトラップでチームメイトを抜くという行為を、山本さんはどう見ましたか?
山本氏:木曜日にピエールと話したときに、やっぱり角田くんに当てられたことに対して、まだ吹っ切れていない様子でした。チームにポイントを持って帰るのがドライバーの仕事という思いがありますから、今回のオーストリアGPでピエールは何がなんでも結果を残したいという気持ちがあったと思います。だからこそ、そのままアクセルを踏んで前に出てしまったのだと思います。
──Q2の最後のアタックに出る前、アルファタウリのふたりはどちらもトップ10圏外で、ガスリーは角田選手とコンマ1秒差しかなく、チームメイトに負けたくないというプレッシャーを感じていたのではないのでしょうか。
山本氏:私はピエールをよく知っているから、それはないと思います。純粋にQ3に行くために、やった行為だと思います。5年目で経験豊富だから、このままだとタイヤが冷えてQ2を突破できないので、チームメイトだけど、ごめんなさいって思いながら行っちゃっただけだと思いますけどね。チームメイトとはいえ、最後はやっぱり20人のなかで何番にいるかですからね。アルファタウリに関しては次のフランスの巻き返しに期待したいです。
──FIA F2の岩佐歩夢選手はいかがでしたか?
山本氏:いい経験をしていると思います。彼はドライバーとして論理的で、DAMSとコミュニケーションをとりながら成長しています。だから、そんなに焦ることはない。本人も言ってましたがレッドブルリンクはあんまり得意な意識がないなかで予選4番手でしたので、うまく状態を作っていけばしっかり走ることができるのがわかりました。レース2で優勝した(ローガン・)サージェントがウエットタイヤでスタートしたなかで一番いい成績を残しているので、せめてサージェントの前後でゴールするのがベストだったと思いますが、サージェントはドライセット、岩佐はどっちかというとウエットセットでした。そこもちょっとボタンを掛け違えたかなっていうのはあります。とはいえ、いい形にはなってきてると思うので、このあとフランス、ハンガリー、特にハンガリーは彼なりに相性がいいところなので、期待してレースを見守りたいなと思います。
──最後に今週はホンダの首脳陣が表敬訪問しました。
山本氏:2年間、コロナ禍で日本はなかなか厳しい状況だったので、そういった意味ではきっちり昨年のこととかいろいろ話ができたと思うのでよかったと思います。
──HRCの渡辺康治社長が「昨年の最終戦アブダビGPに行こうと思っていた」と言っていました。
山本氏:ホンダにとって最後のレースだったので、みなさん来る気で動いていたんですけど、コロナの状況が急速に悪化してモータースポーツ部長の長井(昌也)さんだけ来ることになりました。
──その週の火曜日まで行く予定だったと。
山本氏:そうです。それは間違いないです。
──水曜日に断念したという決定の連絡を受け取ったときの心境はどうでしたか?
山本氏:日本の状況を考えれば仕方ないですよね。ただ私は前社長の八郷(隆弘)さんにチャンピオンを獲ると言っていたので、その気持ちは変わらなかったです。
──今回のオーストリアGPには鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドの田中薫社長も訪問していました。7月24日には、日本グランプリのチケットも発売されますね。
山本氏:3年ぶりの日本楽しみですよね。角田くんもいますから。
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