F1パワートレイン事情:レッドブルにとって“ベストなタイミング”だった予選アタック前のPUトラブル
夏休み前の最後の一戦となったF1第13戦ハンガリーGPで、ホンダのパワーユニット(PU/エンジン)に異常が発見された。
ハンガリーGPの予選Q3で、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が最後のタイムアタックに入ろうとコースインしたが、「パワーがない」と無線で叫び、ピットから「フェイル21」という指示が飛んだ。「フェイル21」とは、制御系に不具合が発生した場合に状況をリセットして強制再起動する方法だ。
しかし、フェルスタッペンのパワーユニットはなんらかの制御がかかったままの状態が継続していたため、フェルスタッペンはアタックをあきらめ、そのままピットインして予選を終えた。
その後、レッドブルはフェルスタッペンだけでなく、チームメイトのセルジオ・ペレスのパワーユニットも、予防措置として交換した。いずれもレギュレーションで定められている年間使用基数以内だったため、グリッド降格ペナルティを科せられることなく、予選順位からスタートした。だが、最後のタイムアタックができなかったフェルスタッペンは10番手からのスタートとなった。
チーム関係者によれば、今回の異常はICE(内燃機関)に関連する部品の一部に不具合を検知したため、エンジンを守るために強制的に制御系が働いたのではないかと言う。したがって、ICEそのものにはトラブルは発生していないが、念のために新しい3基目のパワーユニットに全交換しただけだという。今後異常を検知した2基目のパワーユニットに問題がないことを確認したうえで、2基目のパワーユニットも後半戦に使用する予定で、年間3基というスケジュールに変わりはない模様だ。
今回の事態は、パワーユニット側に起きた今シーズン最初の不具合だった。しかし、それは考えられる最もベストなタイミングで起きた。というのも、予選Q3の最後のアタックを始める前に起きたことで、レース前に交換することができたからだ。もしあと2周、異常が発生するのが遅れていれば、フェルスタッペンは予選で使用したパワーユニットを搭載したまま日曜日のレースをスタートさせ、早々にリタイアしていた可能性があるからだ。
「もし、あのまま予選アタックを終えていたら、トラブルは日曜日のレースのグリッドに向かう途中で発生していたからもしれない。そう考えれば、トラブルが発生したのが土曜日だったことに感謝している」(クリスチャン・ホーナー代表)
機械を使うモータースポーツでは、トラブルはつきものだ。ただし、重要なことはそのトラブルが起きるタイミングだ。フリー走行や予選であれば、レースまでに対処する時間はある。最もトラブルを起こしていけないのが、レース中だ。ここでのトラブル発生はリタイアに直結するからだ。
ハンガリーGPの予選で今シーズン最も低い順位に終わったフェルスタッペンだが、それと引き換えにフェルスタッペンはレースでトラブルフリーのパワーユニットを手にした。それが、その後の大逆転につながる。
「10番グリッドからの優勝は、われわれが予想していた5位か6位という成績をはるかに超えた結果だった」(ホーナー)
昨年もホンダはフェルスタッペンがイギリスGPでクラッシュしたICEに亀裂があることを土曜日の予選後に発見。今年はレース前に異常を発見し、交換した。ハード面の信頼性も重要だが、その信頼性をいかに有効に使うのかは現場スタッフの経験と判断力。夏休み前の連勝には、運用面でレッドブル・パワートレインズをサポートするホンダの目に見えない力があったことを忘れてはならない。
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