【未来のF1ドライバー候補紹介(2)ビップス】差別発言で不祥事を起こすもレッドブルは見捨てず。再起への努力に注目
2022年の新たな規則により、各チームはシーズンに最低2回、F1昇格を狙うドライバーを金曜プラクティスで起用することとなった。これは、テストの機会が非常に限られる状況のなかで、若手ドライバーにF1マシンに乗るチャンスを与えるために、F1が導入した規定だ。FP1ドライバーとして選ばれた彼らはどのようなキャリアをたどってきたのか、そしてFP1で実際にどういう走りを見せたのかを、F1ジャーナリストのクリス・メッドランド氏がレポート、各チームが最も期待をかけている若手ドライバーの将来性を探る。第2回は、スペインGPのFP1にレッドブル・レーシングから参加したユーリ・ビップスに焦点を当てた。
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ユーリ・ビップスは、今年早い段階でF1ウイークエンドに参加する初めての機会を得た。これは大きなチャンスだったが、現在の彼は、将来レギュラードライバーの座に就くという夢に近づいているようには思えない。エストニア出身のビップスは、レッドブル・ジュニアドライバーのメンバーであり、22歳という年齢からしても、まだ時間的にチャンスはある。だが、F1への道は険しいと言わざるをえないだろう。
エストニアでのカート時代に好成績を挙げたビップスは、2016年にプレマからドイツのF4選手権にステップアップ、ルーキーシーズンにランキング6位という結果を出した。2年目にチャンピオンとなり、2018年にはF3ヨーロピアン選手権に参戦、印象的なシーズンを過ごしてF1チームから注目され始めた。この年のタイトルはミック・シューマッハーが獲得。ビップスは、ダン・ティクトゥム、ロバート・シュワルツマンに続くランキング4位だった。2018年にはマカオGPにも挑戦、予選レースで14番グリッドから7位を獲得し、速さをアピール。そうしてこの年、ビップスはレッドブル・ジュニアチームに加入した。
2019年にはFIA F3選手権に参戦し、3勝を挙げてランキング4位、マカオGPでは2位を獲得した。レッドブルのモータースポーツコンサルタントを務めるヘルムート・マルコは、ビップスのポテンシャルを確かめるために、2019年全日本スーパーフォーミュラ選手権最終戦にスポット参戦させた。翌年は本格参戦する予定だったビップスだが、新型コロナウイルス感染症の流行の影響で結局レースに出場することができずに終わった。
計画変更を強いられたレッドブルは、FIA F2選手権のシーズン後半、ビップスをDAMSに乗せることを決めた。途中参戦で難しい状況のなかでの3位表彰台は非常に印象的だったといえるだろう。このころにビップスはレッドブルとアルファタウリのリザーブドライバーの役割も任された。COVID-19の影響でキャリアの進行を妨げられたビップスにとって、これは非常に大きなチャンスだった。
2021年にはFIA F2選手権にハイテックからフル参戦。ここで大きく挽回したいところだったが、ビップスはトラブルや接触によるリタイアが多く、ランキング6位に終わった。一方で優勝も挙げており、2022年シーズンに大きな期待がかけられた。
2022年には5月のスペインGPにおいてレッドブルからFP1ドライバーに選ばれ、F1レースウイークエンドへのデビューを果たした。この時のビップスは、データ収集やエアロマッピングの作業を任され、燃料を軽くした状態でタイムを出す機会は与えられなかった。そのため、F1マシンでの彼のポテンシャルを評価するのは非常に難しいが、一度もミスをすることなく、課された仕事をすべてこなしたことは間違いない。
F1で大きなチャンスを与えられたビップスだったが、F2の方ではミスを繰り返して優勝やポイントのチャンスを逃がし、タイトル争いから脱落していった。
それよりもさらに深刻な事件が起きた。6月にビップスがオンラインゲーム中に人種差別的な発言をしたことが明るみに出て、すぐさまレッドブルからテスト&リザーブドライバーの役割を剥奪されたのだ。
それでもレッドブルはビップスを若手ドライバープログラムの一員に残している。従って彼はすべてのチャンスを失ったわけではないが、F1マシンに乗るチャンスは当分与えられないだろう。彼はこれから、もっといい成績を出さなければならないし、同時に人間としての評判を回復することに努める必要がある。
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