フェルスタッペンが2年連続の母国ポール・トゥ・ウイン。タイヤ戦略でラッセル、ルクレールが表彰台に【決勝レポート/F1第15戦】
2022年F1第15戦オランダGPの決勝が行われ、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が優勝した。2位はジョージ・ラッセル(メルセデス)、3位はシャルル・ルクレール(フェラーリ)となっている。角田裕毅(アルファタウリ)はリタイアだった。
すでに午前中の段階で、超満員の観衆で埋まった決勝当日のザントフォールト・サーキット。快晴に恵まれた前日に比べると雲の多い天候ながら、降水確率は20%でレース中の降雨の心配はほぼなさそうだ。ただし現地時間午後3時のレース開始時点で、気温23度、路面温度35度と、予選時より低温コンディションだ。
それも影響しているのか、グリッドに向かう前のレコノサンスラップ周回中のピエール・ガスリー(アルファタウリ)が「特にフロントタイヤのグリップが低い」と、訴えていた。それでも予選で顕著だったように、周回ごとにどんどんペースが速くなっていくのか。その辺りの見極め次第で、各ドライバーのタイヤ戦略も変わってきそうだ。ピレリはソフトスタートの2回ストップ作戦が最速と予想している。
一方でポールポジションを僅差で逃したルクレールは、「カルロス(・サインツ)と戦略を分けて、マックスにプレッシャーをかける」と、予選後に明言している。しかし上位勢で唯一ソフトのニュータイヤを1セット残している点は、フェルスタッペンにとって大きなアドバンテージといえるだろう。
スタート時のタイヤは、ソフトとミディアムに二分された。トップ10では、4番手ルイス・ハミルトン(メルセデス)、6、7、8番手のジョージ・ラッセル(メルセデス)、ランド・ノリス(マクラーレン)、ミック・シューマッハー(ハース)が新品ミディアム。残りの6人はソフトで、ポールシッターのフェルスタッペンと10番手ランス・ストロール(アストンマーティン)だけがニュータイヤだ。
フェルスタッペンがホールショットを決め、フェラーリ2台が追う。ハミルトンが1コーナーでサインツのインを刺し、2台はわずかに接触。ハミルトンは抜ききれなかった。その後方ではノリスがラッセルをかわし7番手に。ストロール、エステバン・オコン(アルピーヌ)が8、9番手に順位を上げる一方で、シューマッハーは10番手、角田は11番手に後退している。ガスリーもひとつ順位を落とし、12番手だ。
ハミルトンはその後もDRS圏内でサインツに迫るが、このサーキットではそう簡単に抜けない。首位のフェルスタッペンはルクレールに対し2秒前後のギャップを保ち、レースをコントロールしている印象だ。4周目にはラッセルがノリスを抜き返し、6番手に復帰した。
10周目のメインストレートでフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)がガスリーを抜き去り、12番手に上がった。さらに12周目には、同じメインストレートで角田も抜いて行った、アルファタウリは予選一発が速い時はレースペースで手こずるという症状が、このレースでも出ているようだ。
アンダーカットを狙って1周前に入ったガスリーを防ごうと、アロンソは13周目にピットイン。ペース差が大きく、ほとんど使い物にならないはずのハードタイヤを装着してコース復帰した。
15周目、サインツ、セルジオ・ペレス(レッドブル)が立て続けにピットイン。フェラーリ陣営はタイヤが準備できていなかったようで、12秒7もかかってしまい、サインツは11番手まで後退。さらにメカニックがスペアのホイールガンを放置していたために、ペレスが右側前後輪で踏んづけて出て行かざるをえなかった。
18周目にルクレール、そして19周目にフェルスタッペンがピットイン。ルクレールの4秒5前、3番手でコースに復帰した。まだタイヤ交換をしていないハミルトン、ラッセルが、これで1、2番手に立った。メルセデスの2台が決勝レースで1-2を走るのは、今季初めてのことだ。3番手フェルスタッペン、4番手ルクレール、ペレスが5番手まで順位を上げ、サインツは6番手。ともにミディアムに履き替えた角田、ガスリーはアルピーヌの2台に先行され、11、12番手だ。
25周を回っても、メルセデスの2台がピットインする気配はない。メルセデスは1回ストップ作戦のようだ。優勝は無理としても、フェラーリ2台の前に出ることを狙っているのだろう。28周目のメインストレートで、フェルスタッペンがラッセルをあっさりと抜いて2番手に浮上。ハミルトンは30周目まで引っ張ってハードに履き替え、ペレスの後ろ、サインツの前で5番手でコースに戻った。
さらに32周目にラッセルもハードに履き替え、ハミルトンの後ろ、サインツの前につけた。直後の33周目にはラッセル、34周目にはハミルトンが立て続けに最速タイムを叩き出した。ペレスの予想以上に、ハードタイヤがしっかり機能しているようだ。
ハミルトンはその勢いを駆って、3番手ペレスを追いつめる。36周目のターン1ではペレスが辛くも守ったが、37周目にはなす術もなく、ターン1のブレーキングで抜かれて行った。さらに39周目にはラッセルも、ペレスを抜き去った。メルセデスがガチ勝負でレッドブルを抜いて行く。そんな今季初めての光景が、立て続けに繰り広げられた。
ルクレールに10秒差をつけ、首位を独走しているフェルスタッペン陣営にも緊張が走る。「ハードはどうだ?」と、2セット目のタイヤを打診するフェルスタッペン。41周目に先に入ったペレスは、ハードに交換。1分14秒台の最速タイムを叩き出した。
44周目にピットインした角田が、「タイヤがしっかりはまってない!」とコース脇にストップ。これで黄旗が出たが、チームから「大丈夫だ」と言われて再始動。ピットインして再びコースに復帰したが、「何かリヤがおかしい」と訴えながら、ターン4のコース脇にマシンを止めた。これで48周目にバーチャルセーフティカー(VSC)が導入された。
このタイミングで首位フェルスタッペン、2、3番手のハミルトン、ラッセルが次々に2回目のピットインに向かった。フェルスタッペンはハード、メルセデス2台はミディアムに履き替えた。「VSCで台無しにされた」と、ハミルトン。ハードタイヤでこのまま走りきって、優勝を狙って行きたかったようだ。
すると55周目にバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)が「エンジンが壊れた」と、メインストレートで立ち往生。これで1周後にセーフティカー(SC)が導入された。フェルスタッペンはすかさずピットに向かい、ソフトに交換。ハミルトン、ラッセルはステイアウトし、再び1、2番手を占めた。しかし58周目にラッセルだけがピットに入り、ハミルトン、フェルスタッペン、ラッセルの順位となった。
61周目、レース再開。ソフトの蹴り出しが優れていたのか、あるいはレッドブルマシンが依然として優位ということか。ハミルトンはあっさり、フェルスタッペンに抜かれていった。後方ではサインツがペレスをかわし、5番手に上がった。フェルスタッペンは最速ラップを連発し、2周後にはハミルトンに早くも2秒差をつけた。さらにソフトに履き替えたラッセルにも、64周目のストレートで抜かれて行く。「どうして(僕だけ)ステイアウトさせたんだ」と、怒りを露わにするハミルトン。66周目にはルクレールにもかわされ、4番手に後退した。
フェルスタッペンはこのまま72周を走りきり、地元グランプリで2年連続のポール・トゥ・ウインを遂げた。第12戦フランスGPからの4連勝で今季10勝目。さらに2017年の初優勝以来、節目の通算30勝目となった。ドライバーズ選手権ではフェルスタッペンが310ポイントまで伸ばした一方で、ルクレールとペレスが201ポイントで、その差はさらに広がった(優勝回数で選手権2位はルクレール)。
2位ラッセル、3位ルクレール、4位ハミルトン、5位ペレス、6位アロンソ、7位ノリス、8位サインツ、9位オコン、10位ストロール。サインツは5位でチェッカーを受けたが、ピットアウトの際のアンセーフリリースで5秒ペナルティを科され、8位に後退した。ガスリーは惜しくも11位完走だった。
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