フェルスタッペン、三つ巴の”頭脳戦”を制し今季2ケタ勝利。角田裕毅はリタイアに終わる|F1第15戦オランダGP

 

 ザントフールトを舞台にF1第15戦オランダGPの決勝レースが行なわれ、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が優勝した。
 予選日は快晴だったものの、一夜明け決勝レースが行なわれる日曜日は、サーキットを曇り空が覆った。それもあり、現地時刻15時のコンディションは気温23度、路面温度32度だった。
 フェルスタッペンとしては、このオランダGPが母国GPであり、昨年F1世界チャンピオンに輝いて以降初の凱旋レース。グランドスタンドは超満員のファンによってオレンジ色に染め上げられた。
 予選ではファンの後押しもあってかフェルスタッペンがポールポジションを獲得。上位勢では唯一新品のソフトタイヤを残し、それをスタートタイヤに選択した。
 それに続くシャルル・ルクレールとカルロス・サインツJr.のフェラーリ勢は中古ソフトタイヤを選択。4番手と6番手のメルセデス勢は新品ミディアムタイヤを履いたが、多くがソフトタイヤをスタートタイヤに選択した。
 20台のマシンがグリッドに並び、全72周レースに向けてシグナルブラックアウト。フェルスタッペンがターン1を先頭で周り、ルクレールが続いた。サインツJr.は3番手のハミルトンに右サイドを軽く当てられたものの、そのままレースを続行した。
 角田裕毅は今季4度目の予選Q3進出を果たし9番グリッドスタートとなったものの、スタートでランス・ストロール(アストンマーチン)とエステバン・オコン(アルピーヌ)に先行を許し、11番手に後退した。
 首位フェルスタッペンはDRSが使用可能になる頃には1秒以上のギャップを築いた。ルクレールも負けじと食らいついたものの、その差は徐々に広がっていった。
 3番手サインツJr.はトップ2のペースについていけず、4番手のハミルトンが襲いかかる。今年はバンクとなっている最終コーナー手前からDRSが使用可能となったが、狭く曲がりくねったザントフールトではオーバーテイクが容易ではないようで、1秒圏内でも中々抜ききれない周回が続いた。
 後方ではピエール・ガスリーを抜いたフェルナンド・アロンソが、続けて角田をターン1で交わし11番手に。しかしソフトタイヤのデグラデーション(性能劣化)が大きいのか、そのアロンソは角田を抜いた翌周にピットでハードタイヤに交換。下馬評ではハードタイヤのパフォーマンスは低いと見られていたが、アロンソは1分16秒台後半と好ペースを刻んだ。
 上位陣では、レース14周目終わりにサインツJr.とセルジオ・ペレス(レッドブル)がピットイン。ただ、フェラーリは左リヤタイヤの用意が遅れた上、隣のボックスからピットアウトしたペレスに、ファストレーン側に置いていた予備のホイールガンを踏まれるという失態を犯した。結果、サインツJr.は大きく後れを取ることとなった。
 ルクレールは17周目終わりにピットイン。フェルスタッペンもそれをカバーすべく翌周にピットインを行ない、新品ミディアムタイヤを2スティント目に投入した。
 これによりミディアムスタートを選択したメルセデス勢がワンツーに。ライバル勢が1回目のピットストップを終える中、メルセデス勢はステイアウトし走行を継続。ライバル勢が2ストップ戦略を採る中、メルセデス勢は1ストップ戦略で走り切る戦略に出た形だ。
 首位ハミルトンは29周目まで第1スティントを引っ張り、ハードタイヤへ交換。ジョージ・ラッセルは31周を走りきり、残り41周をハードタイヤで走ることに。これでメルセデス勢がペレスの後方4番手〜5番手となった。
 首位フェルスタッペンが16周使用したミディアムタイヤで1分16秒279のところ、メルセデス勢は1分15秒台とファステストラップを更新し続け、首位との差をハイペースで切り崩しにかかった。
 ハミルトンは37周目ターン1で3番手ペレスを攻略。ただ、ピットアウトしてきた周回遅れのセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)に引っかかったこともあり、フェルスタッペンとの差は20秒近くに開くこととなった。
 フェルスタッペンも1分15秒台にタイムを戻し、ピットストップ後にハミルトンの前で戻るべく飛ばす。ただその差は着々と縮まっていき、ハミルトンがトップに浮上する可能性が大きくなった。
 対するフェルスタッペンは新品のミディアムタイヤとハードタイヤを1セットずつ手元に残した状態。レッドブルはラッセルにも抜かれたペレスに新品のハードタイヤを先に投入することで”効果測定”を実施し、フェルスタッペンの2スティント目に備えた。
 しかし、45周目にイエローフラッグ。2度目のピットストップを終えた角田が、タイヤが完全に装着されていないとしてコース脇にマシンを止めたのだ。ただチーム側からはタイヤは正常に装着されていると指示が飛び、角田はピットに帰還。走行を再開した。ただそれでも角田はマシントラブルを訴え、再びマシンをコース脇に止めた。
 これによりイエローフラッグはバーチャル・セーフティカー(VSC)へ変わり、フェルスタッペンを始め2ストップ戦略を採るドライバーが続々とピットへ飛び込んだ。
 VSCの影響により掴みかけた勝負権を失いかけたメルセデス勢は、1ストップ戦略をここで捨て、ダブルピットイン。フェルスタッペンが新品ハードタイヤを選択した一方で、ハミルトンとラッセルはミディアムタイヤを選んだ。
 50周目にVSCが解除され、レース再開。首位フェルスタッペンと続くメルセデス勢の差はピットストップで大きく縮まることはなかったものの、フェルスタッペンが1分14秒台に対してメルセデス勢は1分13秒台をマークしながら周回した。
 しかし55周目に再びイエローフラッグ。バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)がトラブルを抱え、ホームストレート上でストップしたのだ。
 イエローフラッグから後にセーフティカー(SC)へと変わり、後方とのタイム差がなくなるフェルスタッペンはピットへ飛び込んだ。
 マシン回収のため、各マシンはピットレーンを通過し、その際にソフトタイヤへの切り替えを要求したラッセルは、タイヤパフォーマンスの利を持って3番手に復帰した。
 サインツJr.もここでタイヤを変えたものの、ファストレーン側にいたランド・ノリス(マクラーレン)はブレーキを踏ませることに。このアンセーフリリースにより、サインツJr.は5秒のタイム加算ペナルティが後に科されることとなった。
 周回遅れの処理が終了し、首位はステイアウトしたハミルトン、フェルスタッペン、ラッセル、ルクレール、ペレスというトップ5で12周を残してレース再開。フェルスタッペンはリスタートで抜群の蹴り出しを見せ、ハミルトンをすぐさま攻略。ファステストラップを立て続けに記録し、逃げ切りにかかった。
 ミディアムタイヤのハミルトンは、ソフトタイヤのラッセルにも先行を許し3番手。続けてルクレールにも交わされ、一気に4番手まで転落した。
 ラッセルは2番手に上がったものの3秒以上に開いた首位フェルスタッペンとの差を縮めていくことはかなわず、フェルスタッペンがそのままトップチェッカー。レッドブルは戦略を決め切り、フェルスタッペンが母国の大観衆の前で今季10勝目を挙げた。フェルスタッペンの優勝を祝うように、持ち込みが”禁止されているはず”の発煙筒のオレンジ色の煙がサーキットを覆った。
 優勝こそ逃したもののラッセルは2位。メルセデス移籍後初の2位表彰台を獲得した。
 3位にはルクレール。フェルスタッペンの前でレースを終えることがタイトル獲得のチャンス存続に向けた絶対条件となっていただけに、マシンを降りたその表情は暗かった。
 ハミルトンは優勝争いを展開したものの、表彰台圏外の4位となった。サインツJr.は5番手フィニッシュだったものの、ペナルティにより8位降格。5位にペレス、6位に13番手スタートのアロンソ、7位にノリスが繰り上がった。
 9位にオコン、10位にストロールが入り、ポイントを稼いだ。
 次戦はヨーロッパ3連戦の最後となるイタリアGP。”スピードの殿堂”ことモンツァで最速バトルが1週間後に展開される。フェラーリとしては母国GPとなるだけに、今回のようなミスでの取りこぼしは避けたいところだろう。
 
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