F1技術解説:バーレーンGP(2)新ウイング導入も苦しんだメルセデス。特殊な環境で発揮されたアストンマーティンの速さ
2023年F1第1戦バーレーンGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回「車体特性が逆転し、苦しんだフェラーリと強さを増したレッドブル」 に続く今回は、開幕戦で苦戦したメルセデスと、3位表彰台を獲得したアストンマーティンの速さを分析する。
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■去年以上に苦しんだメルセデス
バーレーンで、跳ね馬以上に苦しんだのがメルセデスだった。予選でのメルセデスW14は去年型よりわずかに速かったが(2022年がポールシッターから0.680秒遅れだったのに対し、0.632秒差だった)、決勝では大きくタイムを失った。今年のルイス・ハミルトンは、勝者マックス・フェルスタッペンから50秒以上遅れての5位が精一杯だったのだ(1年前は勝者シャルル・ルクレールから9秒差の3位だったが、これはレッドブル2台のダブルリタイアのおかげでもあった)。
木曜日にぎりぎり間に合った、ミディアムダウンフォース仕様の新しいスプーン型リヤウイングは、予選ではメルセデスを助けたかもしれない。しかしレースでは逆にタイヤのデグラデーションに拍車をかけてしまった。
■アストンマーティンAMR23の真価はまだ不明
下の写真で示す極小ウイングレットのような空力トリックに満ちたアストンマーティンAMR23は、メルセデスに対するアンチテーゼと言えるだろう。ただしフェルナンド・アロンソは予選ではポールポジションから0.628秒落ちだった。Q3でのアタックが1周だけだったとはいえ、フェルスタッペンとのタイム差はかなり大きい。トップスピードも総合10位と、イマイチだった。
一方でコーナーからの立ち上がりは、圧倒的に速い。メルセデスの再加速が遅かったとはいえ、ジョージ・ラッセルのメルセデス後部にアロンソが接触したのは、アストンマーティンの加速の凄さが大きな理由だったと言っていい。
さらにアロンソが先行車を次々に抜き去るアグレッシブな運転を続けたにもかかわらず、タイヤの摩耗は非常に少なかった。今季のアストンマーティンは多くのダウンフォースを生み出し、一方でドラッグは少し大きすぎることがわかる。
トップスピードに劣るマシンを駆るアロンソは、ターン1やターン4でオーバーテイクすることができない。そのため通常なら不可能な、ターン10と11でルイス・ハミルトンとカルロス・サインツを追い抜くという離れ業を見せた。
ただし今回のアストンマーティンの速さは、アロンソが以下に言及しているように、バーレーンサーキットというある意味特殊なコースで成し遂げられたものであることを認識する必要がある。一般的なサーキットよりかなり大きいタイヤ劣化、ほとんど高速コーナーのないストップ&ゴーレイアウトなどなど。それらの条件がプラスに働いたことは、圧勝したレッドブルにも言えることだ。
「ここでの僕らの強さは、おそらく次戦サウジやオーストラリアでは再現されないコンディションの下で達成された。でももしそこでも強ければ、2023年シーズンは素晴らしいものになるはずだよ」
アストンマーティンのマシンのポテンシャルを知るには、よりオーソドックスな他のサーキットを待つ必要があるだろう。しかし長く中団にいた元フォース・インディアのチームの大躍進は、本当に尊敬に値するものだ。
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