「エンジニアたちは信用できない」アルファタウリF1代表から衝撃的な発言。“二重のプレッシャー”に直面か
2023年F1第2戦サウジアラビアGP金曜日の定例会見で、アルファタウリのフランツ・トスト代表から、衝撃的な発言が飛び出した。開幕戦がノーポイントで終わったことを問われた際、こう答えたのだ。
「エンジニアはいい方向に進んでいると言っていた。でも実際には、そうじゃなかった。私はもう、彼らを信用していない」
さらに今季を戦うAT04の問題点については、「とにかくダウンフォースが少なすぎる」と言う。
「そのためブレーキングで不安定になり、リヤタイヤがオーバーヒートし、コーナーでしっかりインにつけない。立ち上がりのトラクションも悪い。いいラップタイムを出すために必要なものが、すべて足りないということだ」
技術陣に対する、完全なダメ出しである。司会者が改めて、「『エンジニアをもう信用しない』という言葉は、本心なのか」と、念を押すと、非難はさらにトーンアップした。
「冬の間、何カ月にもわたって、彼らはクルマは素晴らしい、大きく前進していると言い続けていた。なのにバーレーンに来てみると、我々はいるべき場所にいなかった。一体、どういうことなんだ?」
会見後の囲み取材で、トスト代表はこの発言について改めて言及した。
「直前テスト前の段階では、確かに風洞などのデータを見ると、新車のパフォーマンスは去年型よりかなり改善されていた。ところがバーレーンテスト、そして開幕戦でも、データ上の数値は出なかった。パフォーマンス不足は明らかだ」
トスト代表はこれまでも、期待したような結果が出ない時にドライバーやエンジニアについて厳しくコメントすることはあった。しかしあくまで奮起を促すことが目的で、これまで10数年トスト代表を取材してきた僕も、今回のような「エンジニアが信用できない」という類の、全面否定の言葉は聴いたことがない。
メルセデスも同じように2年続けて戦闘力不足に苦しんでいるが、トト・ウォルフ代表は開発陣を含むチームスタッフとの一体感を強調している。両者の姿勢は、あまりに対照的だ。
トスト代表に何が起きているのか。ひとことで言えば、レッドブルからの二重のプレッシャーであろう。
去年、コンストラクターズ選手権9位に終わった不振を受けて、「レッドブルはアルファタウリの売却を考えている」という報道が出た。トスト代表はすぐに全面否定したが、レッドブル重鎮のヘルムート・マルコは、「株主の決定次第だ」と、含みのある発言をしていた。
確かなのは、創業者ディートリッヒ・マテシッツ亡き後の新経営陣が、この件についてミーティングを持ったことだ。その際、トスト代表の去就についても話し合われたであろうことは想像に難くない。最終的に続投は決まったが、もし今季も低迷から脱出できなければ、テクニカル・ディレクターのジョディ・エギントンと共にクビになる可能性が高い。
そんな背水の陣の状況にもかかわらず、新車AT04は設計段階のパフォーマンスを実走で発揮できずにいる。唯一期待できそうな点は、去年の失敗を教訓に細かいアップデートを繰り返して、性能向上を図るアプローチを取っていることだ。
「次のオーストラリア、続くアゼルバイジャンでも立て続けに新しいものを持っていく。ほぼすべてのレースで、小さなアップグレードを重ねていくよ」
3年目の今季、着実な進化を見せている角田裕毅のためにも、チーム一丸となって戦闘力の回復に努めてほしい。
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