F1新フォーマット採用で、ロングラン”ゼロ”で決勝に挑む……メルセデスのエンジニア「不可能なタスク」と戦々恐々

 

 F1では今週末のアゼルバイジャンGPから、スプリントを実施するフォーマットで行なわれる週末にはスプリント・シュートアウトが組まれたため、フリー走行がわずか1回しか行なわれなくなる。それによってロングランをせずに決勝に臨むという「不可能」とも言えるタスクに挑戦することになるため、メルセデスは各チームとも頭を悩ませることになるだろうと考えている。
 今週行なわれたF1委員会での承認を受け、今週末のアゼルバイジャンGPは、従来とは週末のスケジュールが変わることになる。金曜日の走行はFP1&予選と昨年までのスプリントを実施する週末と同じだが、土曜日はFP2が廃止され、午前中にスプリント・シュートアウトという、スプリントのスターティンググリッドを決めるセッションが組み込まれることになった。そして日曜日の決勝レースは、スプリントの結果に影響されず、金曜日の予選でスターティンググリッドが決まることになる。
 この変更により、各チームは決勝レースに向けたタイヤ戦略を見極めるためのロングランを行なう時間を失うことになった。通常のレースフォーマットの場合は金曜日のFP2、スプリントフォーマットの場合は土曜日のFP2で各チームがロングランを行なってきたわけだが、これが一切出来なくなるのだ。
 メルセデスのトラックサイド・エンジニアリングディレクターであるアンドリュー・ショブリンは、フリー走行の時間が減ることで、レースに向けた準備に支障をきたすことになるだろうと語る。
「金曜日と土曜日に通常学ぶべきことを、ひとつのセッションに凝縮するのは、事実上不可能なことだ」
 ショブリンはそう語った。
「ロングランに集中する時間がない。本当に優先すべきことは何かを考えなければいけない」
 同チームのロン・メドウズも、このスケジュールの変更により、これまでフリー走行で行なっていることの多くを犠牲にしなければいけなくなるだろうと考えている。
「エンジニアとドライバーにとって、予選と決勝レースに向けた最適なセットアップを見つけるのは、非常に難しいだろう」
 そうメドウズは言う。
「FP1の周回数を最大にする必要があるため、走行時間を奪うようなセットアップ変更を行なう余裕はない。これは全てのチームにとって新しい働き方だ。そして優れた能力を発揮するチャンスをもたらすことになるだろうね」
 フリー走行が少なくなったことで、インシデントが起きるリスクも高まるはずだと、メドウズは言う。
「新しいフォーマットが、ガレージのスタッフが週末に行なう作業量に大きな変化をもたらすことはないだろう。しかし、ドライバーが100%プッシュすることを必要とするセッションが増え、次のステージに進むために全てのラップが重要だということになると、常にクラッシュのリスクがつきまとうことになる」
 ショブリンもこの意見に同意。特に土曜日のスプリント・シュートアウトは、走行距離が圧倒的に不足した中でアタックを行なうため、非常に難しくなるはずだと考えている。このスプリント・シュートアウトは、SQ1、SQ2、SQ3と、通常の予選と同じように3段階のノックアウト形式で行われるが、それぞれのセッションで使えるタイヤは1セットのみと規定されているのだ。
 この1アタックのみという走行機会では、最大のパフォーマンスを期待するのは現実的ではないとショブリンは言う。
「ドライバーたちは、土曜日にいきなり予選セッションを走ることになる。これは非常に珍しいことだ」
 そうショブリンは言う。
「ドライバーたちがすぐにアタックラップで最大限のパフォーマンスを発揮するのを期待することは、難しい注文だと思う。だから、誰もが複数の周回を走ることになるだろう」
「ミディアムタイヤ(SQ1とSQ2は、ミディアムタイヤを使うことが義務付けられる)なら、複数の周回を行なうことができるはずだ。でも、複数のタイヤを使うことができないことは、例えば赤旗が出た時などには不運を被る可能性が高くなる。誰もが常にコースに出て、走ることになるはず。だから、コース上は忙しくなると思うよ」
 
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