【F1チーム代表の現場事情:アルピーヌ】CEOからの脅しに毅然と反論。表彰台で批判に応えたサフナウアー
大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、アルピーヌのチーム代表オットマー・サフナウアーに注目した。
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オーストラリアGP後、私はこの連載においてアルピーヌを取り上げ、チームはチャンスを生かし切れずにおり、その状況をできるだけ早く改善しなければ、代表オットマー・サフナウアーへのプレッシャーがどんどん高まっていくだろうと書いた。その後のアルピーヌのCEOローラン・ロッシの行動を見ると、まさにそのとおりのことが起こりつつある。
マイアミGPの週末、ロッシは、私が記した文章と似た内容のことを、より厳しい言葉で語り、チームを強く批判した。まず決勝日に彼のインタビューがフランスメディアで報じられ、翌日にはF1公式サイトを通して、彼の言葉が伝えられた。
マイアミでアルピーヌがダブル入賞を成し遂げたにもかかわらず、そういう報道がなされたことからして、ロッシがどれだけ強い不満を抱いていたかが分かる。ロッシは、チームのパフォーマンスに関して責任を担う者としてサフナウアーを名指しし、シーズン中に何らかの変更を行うことも辞さないと脅しをかけた。
しかし、F1キャリアを25年間も続けてきたサフナウアーが、上層部からの圧力に簡単に屈するわけはない。彼は、自分にかかるプレッシャーを軽減するために反撃しなければならないと考えた。そうして彼は、アルピーヌが良い結果を出していないことをネガティブに報じた者たちに対して、すぐさまその内容への疑問を呈し、自分は就任してわずか1年であるにもかかわらず、チームに良い影響を与えており、チームには大きなポテンシャルが見えるという点を強くアピールした。
サフナウアーも、アルピーヌの他のメンバーも、ロッシが予告なく、ああした発言をしたことに驚いていた。サフナウアーは、このことに対し、舞台裏で毅然とした態度をとっていたが、完全に批判を払拭するには、成績を明確に向上させるしかない。シーズン序盤戦のアルピーヌが最大限の結果を出したわけでないことは確かだ。開幕戦バーレーンとサウジアラビアでは入賞したが、オーストラリアもその次のアゼルバイジャンもひどいものだった。しかしサフナウアーにはどうすることもできない要素はいくつもあった。たとえば、マシンのセットアップを行うのはサフナウアーの仕事ではないし、サフナウアーが予選でウォールにヒットしたわけでもないのだ。
イモラ戦が中止されたことで、ロッシが厳しい発言をした後の初めてのレースまで、時間があくことになった。それによってこの騒動に関する憶測や注目度が下がったのはアルピーヌにとってよかったが、一方で、アップデートの効果を証明してロッシに反論する機会は、モナコに延期されることになった。
そのモナコで、サフナウアーは上層部に対して小さな反撃を行った。CEOが現場に口を出し、自由に発言できるようなダイナミクスは少しおかしいのではないか、と示唆したのだ。サフナウアーがアストンマーティンを去った理由のひとつは、マーティン・ウィットマーシュがグループCEOとして加入したことで自分の権限が低下したと感じたことだった。
しかし、ロッシに対する最大の反撃は、サフナウアーの言葉でなく、コース上の結果によって行われた。モナコでアルピーヌは大きなミスなく戦い、エステバン・オコンが3位でフィニッシュしたのだ。戦略がベストなものであれば、ピエール・ガスリーは7位よりも上位でフィニッシュしたかもしれないが、2台ともがポイントを狙える位置からのスタートだったため、チームが大きなリスクを冒さなかったことは理解できる。
アルピーヌは、過去2年、マシンをうまく改善させてきており、モナコで導入されたアップグレードも効果を見せた。スペインでは、ガスリーは、ふたつのペナルティを受けなければ、グリッド2列目からスタートすることができた。レースペースは特別良くはなかったが、それでもオコンは8位、ガスリーは10位で入賞を果たしている。
この結果は、チームにかかるプレッシャーをある程度軽減するのに役立つはずだ。ただ、ロッシの発言からして、彼を満足させるのは簡単ではないと思われる。アルピーヌとサフナウアーは、今後も高いパフォーマンスを発揮し続けなければならないだろう。
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