スズキ、MotoGP復帰は当分ない? 株主総会で“匂わせ”も「具体的なレースへの参戦について答えられることはない」

 

 MotoGPを2022年限りで撤退したスズキ。最近になりにわかに活動再開に関する話題が世間を騒がせた。
 発端となったのは6月23日に行なわれたスズキ株式会社の第157回定時株主総会だ。質疑の場で株主からレース再参戦について声があがると、鈴木俊宏社長は「まだ決めたわけではないが、レースで新しい技術開発ができるのであれば参戦することに取り組みたい」と答えたのだ。
 この“匂わせ”ともとれる発言に、MotoGPファンやスズキファンは機敏に反応。MotoGPで圧倒的な強さを発揮しているドゥカティに対して対抗できるだけの強さを見せたチーム・スズキ・エクスターを撤退させたことも合わさり、性急な復活の匂わせには批判的な意見も見られた。
 そもそも、スズキがMotoGPを撤退する決定を下した背景には、自動車業界を取り巻く事業環境の変化があった。当時、鈴木社長は次のようにコメントを寄せている。
「スズキは、持続可能な社会の実現に向けた他の取り組みにリソースを再配分する必要があることから、MotoGPとEWCへの参戦を終了することを決定しました」
「モーターサイクルレースは常に、サステイナビリティを含む技術革新や人材育成に挑戦する場でありました。今回の決定は、これまでの2輪レース活動で培った技術力と人材を、持続可能な社会に向けた他のルートに振り向け、新たな二輪事業運営に挑戦していくことを意味しています」
 リソースの再分配から“泣く泣く”MotoGPやEWC(世界耐久選手権)から撤退したスズキ。では今回の株主総会での社長の発言は、どういった意図だったのか?
 motorsport.comの取材に対し、スズキ広報部は社長の発言の意図を以下の通り説明した。
 また検討している新しい技術開発の詳細についても公表は行なっておらず、さらに現時点で具体的なレース参戦について決まったことはないと答えた。
「レースでの技術開発は有益であり、意味のあることと理解しますが、今までレースで培った技術・ノウハウを、優先度の高いサステナビリティ技術へと資源(リソース)を振り向け、今後の二輪車開発に生かしていくための撤退とご理解ください」
「なお二輪、四輪、その他を含めて具体的なレースへの参戦について現時点でお答えできることはありません」
 なおスズキ株式会社の業績は、連結決算で売上高4兆6416億円(前期比30.1%増)、営業利益は3506億円(前期比83.1%増)と為替要因はありつつも好調に推移している。二輪事業を見てもインドやASEAN、中南米地域での販売台数が増加している。
 ただスズキは2023~2030年度に電動化関連投資2兆円を見込むなど、カーボンニュートラル達成に向けて多大な資金を投じていることも確かだ。
 リソースの再分配による具体的な成果はまだ目に見えて表れてはいないが、スズキは2024年度に二輪車でもBEV(バッテリー式電動車)を初投入する予定だと明かしている。
 スズキが説明するように、MotoGPの活動再開はすぐに見込めるようなモノではないだろう。MotoGP撤退を受けて割り振られたリソースによる成果が出てくれば、ふたたびスズキがモータースポーツで活躍する日が訪れるかもしれない。
 
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