【F1ハンガリーGP決勝の要点】マシンに合うはずのコースでも入賞が精一杯。我慢の時期を迎えたアストンマーティン
フェルナンド・アロンソ9位、ランス・ストロール10位に終わったF1第12戦ハンガリーGPの決勝レース後、ふたりのコメントには諦めムードが溢れていた。
「前を行くライバルたちに追いつくのは、とても無理。2台で3ポイントが限界だった」(アロンソ)。「今日はペースが上がらなかった。10位が精一杯だった」(ストロール)。「入賞圏内でフィニッシュすることが最大の目的だった」というマイク・クラック代表の言葉を待つまでもなく、レッドブルに次ぐ戦闘力を発揮して、表彰台の常連だった今季序盤の大活躍がウソのようだ。
ここ数戦、より正確には7月に入ってからのヨーロッパのレースで、アストンマーティンは精彩を欠き続けている。レッドブルリンク、シルバーストンで上位入賞できなかったのは、中高速主体のコースレイアウトを苦手とするAMR23の車体特性から、ある程度説明できたからだ。実際、同じようなコース特性のバルセロナ-カタロニア・サーキットでのスペインGPでも、アストンマーティンのふたりは6位、7位に終わっている。
しかしハイダウンフォースで、長いストレートのないハンガロリングなら、アロンソが2位表彰台を獲得したモナコGPのような速さが蘇るのではないか。だが予選はアロンソ8番手、ストロールは14番手。決勝レースも、9位、10位が精一杯だった。つまり今の彼らは、得意のはずのコースでも好成績を挙げられなくなっているのだ。
となればアストンマーティンの快進撃に急ブレーキがかかった最大の理由は、相対的なものであろう。より具体的には、改良を重ねて速さを増してきたライバルたちに、後れを取り始めたということだ。
フェラーリはオーストリアGPで大きなアップグレードを投入し、シャルル・ルクレールが4月のアゼルバイジャン以来となる久々の表彰台に上がった。メルセデスも特徴的なゼロポッドから大きくコンセプト変更し、ルイス・ハミルトンは今回1年半ぶりとなるポールポジションを獲得している。
そして一番の驚きが、マクラーレンだ。レッドブルリンク、シルバーストンと連続して繰り出したアップデートのおかげで、弱点のひとつだったタイヤの持ちの悪さが劇的に改善。路面温度が40度を越した今回のハンガロリングでも、追走するセルジオ・ペレス(レッドブル)を寄せ付けず、シルバーストンに続く2位表彰台を射止めた。
今季のアストンマーティンの美点のひとつが、レースペースのよさだった。しかし今やマクラーレンを始め直近のライバルたちも、アストンマーティンと遜色ない速さを発揮しはじめた。
シーズン真っ最中に新ファクトリーに移転したことの車体開発への影響も、あるいはあるのかもしれない。最新鋭の風洞も建設途中で、その恩恵を受けるのは2025年以降とのことだ。「今はじっと低く構えて、ハードワークを続けるしかない」というクラック代表のレース後の言葉は、「現状を打破する特効薬はなく、しばらく我慢するしかない」ということなのかもしれない。
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