F1第12戦技術解説(1)0.2秒速くなるレッドブルのアップデートと、決勝で強さを取り戻した理由

 

 F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが、2023年F1第12戦ハンガリーGPの各マシンを観察し、細部の画像を紹介するとともに、注目点について解説する(全2回)。

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 土曜日の予選でメルセデスに敗れたレッドブルが、なぜ日曜日のレースで再び圧倒的強さを取り戻すことができたのか。画像とともに解説しよう。

レッドブルRB19 F1ハンガリーGPでのアップデート(比較)
レッドブルRB19 F1ハンガリーGPでのアップデート(比較)

「マシンは運転していて、とても楽しかった、特に最後のスティントは最高だった」。ハンガリーでチーム記録となる12連勝を達成した時、マックス・フェルスタッペンは無線でそう語った。

 しかしその前日、ルイス・ハミルトンのメルセデスにポールポジションを奪われた際のコメントは、対照的だった。

「コーナーに進入してクリップに付こうとするたびに、フロントグリップのなさを感じる。クルマのバランスが最悪だ」

 なぜRB19はたった1日で、こんなにも変身できたのか。もちろんレッドブルのマシンは、予選よりも決勝レースのほうが優れている傾向はある。しかもハミルトンとの差は、わずか1000分の3秒だった。実は、フェルスタッペンのふたつの見解は密接にリンクしているのだ。

 端的に言えば、予選でアンダーステアだったからこそ、RB19は決勝であれほど圧倒的な走りを見せたということだ。土曜日にレッドブルのエンジニアたちは、予選でアンダーステアを誘発してでも、決勝では、リヤタイヤに大きな負荷がかかるサーキットでオーバーヒートしないようにマシンをセットアップした。すべては妥協の問題であり、レースで良いバランスを達成するために予選を犠牲にするという決断が下されたのだ。

 この決断の動機となったのは、予選よりも決勝が暑くなるという天気予報だった。実際、日曜日のハンガロリングの路面温度は48℃、気温は28℃だった。このような暑さでは、エンジンを冷やす直線がほとんどない短いサーキットで、タイヤ、エンジン、ブレーキが試されることになる。

レッドブルRB19 F1ハンガリーGPでのアップデート(比較)
レッドブルRB19 F1ハンガリーGPでのアップデート(比較)

「土曜日はいろいろなことを試したけれど、1ラップでは何もうまくいかなかった」とフェルスタッペンは日曜日に総括した。

「タイヤは1周(のアタック)では機能しなかった。それが決勝日にはすべてがより熱くなり、距離も長くなった。そんなコンディションでは、1周で速さを発揮するバランスとは異なる方向性が必要になる。この暑さのおかげで、間違いなくバランスはずっと良くなっていた」

 一方でレッドブルは今回、上の写真に見るように大幅なアップデートを投入した。しかし土曜と日曜でコンディションが大きく異なったため、正確な評価は難しかった。

 理論的には、サイドポンツーン上のエアインテークが低く、広くなったことで(冒頭の6枚の比較写真参照)、ラジエーターを通る空気の流れが速くなる。その結果、エンジンを冷却するために取り込まれる空気の量が減り、ダウンフォースを生み出すためにアンダーカットの下を通過する空気の量が増える。チームによると、この変更によってコンマ2秒の短縮が可能になるとのことだ。

 とはいえ予選では上記の理由から、このアドバンテージは明らかではなかった。スパ・フランコルシャンやモンツァなど、大きなダウンフォースを必要としないコースでは、改善はより具体的になるはずだ。しかし今回のハンガロリングのようにダウンフォースが必要で、過度なドラッグがハンデキャップにならない低速コースでは、大きなメリットは得られなかった。

(第2回に続く)

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