F1第12戦技術解説(2)“2番目のマシン”を持つメルセデスは、なぜ不本意な結果に終わったのか
F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが、2023年F1第12戦ハンガリーGPの各マシンを観察し、細部の画像を紹介するとともに、注目点について解説する(全2回)。
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技術解説その1で述べた分析は、レース後に考察されたもので、後付けと言っていい。予選が終わったばかりの土曜日夕方には、状況はそれほど明確ではなかった。実際、レッドブルの予想外の苦戦は、冷却のためにボディに大量の穴が開けられたことが原因ではないかと言われたりもした。エンジンカウルのパネルは5枚とも取り外されており、それがRB19の空力特性に悪影響を与えたのは確かだった。
対照的にメルセデスは、4枚のパネルのうち2枚しか取り外されていなかった。ブラックリーのエンジニアたちはハンガリーの暑さを甘く見ていたのだろうか。確かにこの選択は予選ではハミルトンの助けになったし、ハンガロリンクの舗装の良好なグリップがW14の弱点を消し去ったのも間違いなかった。しかしレースでは、明らかに彼に不利に働いた。
ハミルトンはレース中の無線で担当エンジニアに、エンジン回転数を下げたかどうか尋ねたが、答えはあいまいなものだった。エンジニアが冷却効率の悪いマシンにしたのは、ハミルトンが先頭を走り続け、フレッシュな空気の中にいられるのを期待してのことだったかもしれない。しかし実際にはスタートに失敗し、4番手に後退。マクラーレン2台の後塵も拝することになった。
さらにチームは、ハードタイヤのデグラデーションの低さを見誤った。そのため、ハミルトンに対して第2スティント最初の6周について指示したペースは、あまりにも遅いものだった。レース終盤のハミルトンの素晴らしいペースや、18番グリッドから6位でフィニッシュしたジョージ・ラッセルの逆転劇が示すように、今回のメルセデスにはかなりのポテンシャルがあっただけに残念な戦略ミスだった。
ちなみに今回の戦闘力向上には、サスペンションアームの形状修正も大きく寄与している(下の写真緑矢印参照)。
トト・ウォルフ代表は、後悔を隠さなかった。
「日曜の決勝で、我々は2番目に速いマシンだった。しかし最終結果には、それが表れていなかった。ジョージははるか後方から、アストンマーティンやフェラーリを打ち負かして追い上げてきた。だから、もっとうまくやれる可能性があったと思う。結局は、タイヤマネジメントに慎重になりすぎたということだ。今回はタイヤ温存に、少しバランスを傾けすぎた」
とはいえ、それだけ速かったメルセデスを凌いで、マクラーレンが2位に入ったことに、多くの関係者は驚きを隠さなかった。前戦イギリスGPでの好パフォーマンスは、シルバーストンの特殊なコンディションのおかげだと、彼らは表明していた。しかし低速、高温という今季のマクラーレンが苦手とするはずのハンガロリンクで、連続して2位表彰台を獲得した。これはMCL60が、本当に飛躍したことを示している。
しかもそれは、当初はハンガリーに予定されていたものの、製造の遅れのために最終的に延期された新機能の最終パッケージもない状態でのことだったのだ。
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