F1第13戦技術解説(3)メルセデスとマクラーレンが低調だった理由
2023年F1第13戦ベルギーGPの各マシンを観察したF1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが、細部の画像を紹介するとともに、注目点について解説する(全3回)。
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■再びバウンシングに悩まされたメルセデス
スパ・フランコルシャンでのメルセデスは、不測の事態に見舞われた。去年のようなバウンシング現象が、突然現れたのだ。これは悪天候とスプリント形式のレースだったため、新しいパーツを評価し、調整する時間があまりなかったためだろうか。
もはや解決済みと思われていたバウンシング現象がベルギーGPで突如再発したのは、メルセデスだけではなく、フェラーリなど一部ライバルチームも同様だった。ただしメルセデスが、その影響を一番受けたのは確かだ。
「今週末のわれわれが期待したようなパフォーマンスを発揮できなかったのは、主にバウンシングの問題に手こずったためだ」と、トト・ウォルフ代表はレース直後に嘆いていた。
「すべてのストレートで、マシンが跳ねていた。(普通ならスロットル全開で行ける)ブランシモンでさえ、ルイスはアクセルペダルから足を離さなければならなかった。ストレートでバウンドし、ブレーキングでタイヤはオーバーヒートした。完全に、悪循環に陥ってしまったんだ」
「何が起こったのかを理解するには、テレメトリーを詳細に分析する必要がある。もしかすると新しいフロアがバウンシングを誘発した可能性があるが、まだ断定はできない。いずれにしてもモナコから始まった開発の方向性は、正しいと確信している」
今回のアップデートでダウンフォースが増大し、その結果バウンシング現象を再燃させた可能性があると、ウォルフは示唆した。バジェットキャップで開発費が制限され、メルセデスは計画していたリヤサスペンションの変更を諦めざるをえなかった。それもまた、空力の最適化に影響を及ぼしたのかもしれない。ただ、その後、チーフテクニカルオフィサーのマイク・エリオットは、バウンシングは、アップデートの影響というよりは、スパのコース特性とセットアップにあった可能性が高いとコメントした。
■天候に左右されたマクラーレンのパフォーマンス
ではメルセデスの開発は、本当に正しい方向に進んでいるのだろうか。それは時間が経ってみなければわからない。いずれにしてもレッドブルの後方にいるマシンの、レースごとのパフォーマンスのばらつきには驚かされるばかりだ。
ベルギーGPで言えば、ハミルトンはシャルル・ルクレールを予選でもレースでもとらえることができなかった。フェラーリはベルギーで予選2番手を獲得し、前週のハンガリーGPで輝きを放ったマクラーレンをも大きく引き離したのだ。
マクラーレンが相対的に低調だった理由は、セットアップの偏りにあった。激しい雨を予想して、ウォーキングのエンジニアたちは2台のMCL60のウイングをよりハイダウンフォース方向に振ったのだ。
この選択はスプリントレースでは功を奏したが(オスカー・ピアストリが2位でフィニッシュ)、決勝レースではランド・ノリスに最高速が遅いという致命的なハンディを負わせた。
ところが雨が20周目に降り始め、3周降り続いたことが、彼等に幸運を呼び寄せた。この間、早い段階でソフトタイヤを履いていたノリスはほぼトップタイムをマーク。20周目から23周目にかけて、ミディアムタイヤを履いたフェルスタッペンとの差を8秒縮めた。これでいくつかポジションを上げ、7位でフィニッシュすることができたのだった。
メルセデスとは対照的に、マクラーレンはスパ・フランコルシャンやモンツァ用の特殊ウイングの投入は考えていない。彼等の優先順位はあくまで、MCL60の全体的なパフォーマンスを向上させることなのだ。
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