【全ドライバー独自採点/F1第19戦】辛い結末のハミルトン。レッドブルも認めただろう角田裕毅の実力
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回はアメリカGPの週末を振り返る。
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サーキット・オブ・ジ・アメリカズはドライバーの力が結果に大きく影響するトラックであり、最高のパフォーマンスを発揮できた者は良い結果を手にすることができる。多数の異なるラインで走ることが可能な、現代のサーキットのなかでも数少ないひとつで、そのため、ドライバーの要素が他のサーキットよりも大きくなる。
しかし今年のアメリカGPでは、このチャレンジングなサーキットで完璧な週末を過ごしたドライバーはいなかった。
■評価 9/10:優勝まであと一歩のノリス。チームメイトに圧勝したハミルトン
ランド・ノリス(マクラーレン):予選2番手/スプリント・シュートアウト4番手/スプリント4位/決勝2位
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選3番手/スプリント・シュートアウト3番手/スプリント2位/決勝失格(2位フィニッシュ)
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選6番手/スプリント・シュートアウト1番手/スプリント1位/決勝1位
満点に最も近かったのは、ランド・ノリス(マクラーレン)だ。予選でフロントロウをつかみ、ライバルたちに衝撃を与え、日曜レースの序盤をリードした。しかしタイヤマネジメントでうまくいかない部分があった。ハードタイヤの両セットにおいて、アウトラップで少しプッシュしすぎて、その代償として、後にデグラデーションに見舞われ、ポジションをふたつ失ったのだ。それでも、速さは素晴らしく、優勝する日が近いという強い印象を改めて示した。
ルイス・ハミルトン(メルセデス)は、今回、チームメイトに圧勝した。しかしひとつマイナス点をつけたのは、日曜日のレース中、戦略面においてリーダーシップを発揮しなかったことだ。ハミルトン自身は、ファーストスティントを長くとるのは間違ったことであるという正しい考えを持っていたにもかかわらず、いつもどおりチームに決断を委ね、それがよくない結果につながった。
しかしハミルトンは予選でもレースでも素晴らしい速さを見せた。失格により2位を失うという非常に辛い結末を受け止めなければならなかったが、もし優勝していたら、さらに大きな痛手になっていたことだろう。
週末の両レースを制したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)だが、メインレースの方では、珍しく非常に不安定だった。高いプレッシャーの影響を受ける部分が彼にはまだ残っているということだろう。スプリントデーは完璧だったが、日曜決勝では、ブレーキの不調で100パーセントの自信を持って走ることができず、RB19を好きなように走らせることができなかった。それでも彼は素晴らしい仕事をし、ハミルトンを抑えきった。
■評価 8/10:センセーショナルな予選ラップでポールを獲得したルクレール
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選1番手/スプリント・シュートアウト2番手/スプリント3位/決勝失格(6位フィニッシュ)
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選4番手/スプリント・シュートアウト6番手/スプリント6位/決勝3位
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選7番手/スプリント・シュートアウト10番手/スプリント7位/決勝6位
センセーショナルなポールポジションを見て、シャルル・ルクレール(フェラーリ)は驚くほどの速さを持ったドライバーであることを、誰もが再確認したことだろう。しかし両レースにおいては、始まる前からすでに負けているように見えた。どちらもスタートでポジションを失った後、タイヤが持たないことを心配し、ペースを抑えて走った。スプリントでは3位に入ることができたものの、日曜日には、1回ストップが良い結果をもたらすという信念に基づいて走った末に6位までポジションを落とし、その後、失格に。非常に速いが、今回の彼は、士気が低いようにも感じられた。
チームメイトのカルロス・サインツ(フェラーリ)は、週末を通して、チームメイトと同等のペースがなかったと、自ら認めている。しかし冷静な頭脳と努力によって、彼はチームに貴重なポイントをもたらした。いつもどおりサインツは、トラックポジションよりもタイヤマネジメントを重視すべきであるということを承知した上で、慎重にバトルを選択した。ルクレールの方が才能の面では上かもしれないが、そのチームメイトとしてサインツはフェラーリにとって必要な存在であることが、改めて証明された。
ピエール・ガスリー(アルピーヌ)にとって、ほぼ完璧な週末だった。土日ともにポイントを獲得し、常にチームメイトよりも優れたパフォーマンスを見せていた。好調ガスリーは、自分よりも速いマシン対して素晴らしい防御を見せ、ミスを一切せずに戦った。ひとつ良くなかったのは、日曜決勝のスタート直後、エステバン・オコンに対してドアを開けたままにして、ポジションをいくつか落としたことだった。
■評価 7/10:今季ベストの週末を送った角田裕毅
角田裕毅(アルファタウリ):予選11番手/スプリント・シュートアウト19番手/スプリント14位/決勝8位
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選18番手/スプリント・シュートアウト9番手/スプリント9位/決勝9位
ローガン・サージェント(ウイリアムズ):予選20番手/スプリント・シュートアウト20番手/スプリント19位/決勝10位
角田裕毅(アルファタウリ)は8位でファステストラップも記録、復帰したダニエル・リカルドより好成績を収め、今季ベストの週末を過ごした。まともなマシンがあれば、良い仕事ができるというところを、レッドブルの人々に対して示すことができただろう。シュートアウトSQ1で敗退した原因はトラフィックのせいだと言っていたが、実際にはラップ自体も良くなかった。しかし日曜日には素晴らしいレースをして、貴重な5ポイントを稼いだ。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、確かにポイントを獲得したものの、彼にとって最高の走りをしたとまではいえない。土曜日はシュートアウトをトップ10圏内で終えた後、スプリントではポイントに0.4秒及ばず。しかし日曜日には、素晴らしいブレーキングを何度か披露した後に、上位の失格により、2ポイントを手にした。
ローガン・サージェント(ウイリアムズ)に好評価をつけることができて、本当によかった。今まで、なかなか運に恵まれずにいたけれど、彼は才能あるドライバーであると私は信じていたからだ。両方の予選セッションでは苦戦し、スプリントではケビン・マグヌッセンの後ろでフラストレーションがたまるレースをせざるを得なかった。しかし日曜日には、高い評価を受けているチームメイトに近いペースで走り、ハミルトンとルクレールの失格により、繰り上がりで10位の1ポイントを手にいれた。ようやくひとつのプレッシャーから解放されたサージェントが、今後どれぐらい改善していくか、期待して見ていくことにしよう。
■評価 6/10:ランキングにおいて貴重なポイントをつかんだペレス
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選5番手/スプリント・シュートアウト8番手/スプリント8位/決勝5位
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選9番手/スプリント・シュートアウト7番手/スプリント5位/決勝4位
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選17番手/スプリント・シュートアウト12番手/スプリント13位/決勝リタイア
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選19番手/スプリント・シュートアウト14番手/スプリント リタイア/決勝7位
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選16番手/スプリント・シュートアウト16番手/スプリント15位/決勝11位
ジョージ・ラッセル(メルセデス)は土曜も日曜もポイントを獲得したものの、彼にとっては素晴らしい週末ではなかった。誰よりも本人がそれを認めている。特に予選ではハミルトンに匹敵するペースを出せなかった。しかし日曜決勝ではチームメイトが失格になったため、ラッセルがポイントを獲得したことが、チームにとって救いになった。
フェルスタッペンが両方のレースを制したというのに、自分が一度もトップ3に入れなかったことは、セルジオ・ペレス(レッドブル)にとって、耐えがたいことだったはずだ。とはいえ、少なくとも今回は両方の予選でトップ10に残れたし、決勝ではインシデントに巻き込まれることなく、貴重なポイントをつかんだ。ハミルトンが失格になったことで、ペレスがランキング2位を守れる可能性は高まった。
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は、今年初めて予選Q1で敗退。アメリカに導入されたアップグレードの効果を感じられず、アロンソは日曜日に古い方の仕様のパッケージで走ることを希望した。ガスリーを倒そうとしていた際に、縁石に乗りすぎてフロアにダメージを負ってしまうなど、今回のアロンソは、速さはあったが、いつもとは異なり、不安定だった。
ランス・ストロール(アストンマーティン)は、週末を通してチームメイトにかなわなかったが、新しいパッケージで走り続け、サマーブレイク後、初めてのポイント獲得を果たした。ピットレーンスタートが決まっていたにもかかわらず、決勝前、ピットに入らずにグリッドに向かってしまい、どこか上の空であることは明らかだったが、レース中は堅実な仕事をした。
今回、ハースVF-23の大規模なアップグレードがデビューしたが、ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)は、予選で通常ほどの速さを発揮できなかった。タイヤのデグラデーションの問題は残っていたが、彼は両方のレースで最大限の仕事をした。今回もチームメイトより優れたパフォーマンスを見せながらも、ポイントには届かなかった。
■評価 5/10:復帰戦を無事に走り終えたがペース不足のリカルド
ダニエル・リカルド(アルファタウリ):予選15番手/スプリント・シュートアウト11番手/スプリント12位/決勝15位
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選8番手/スプリント・シュートアウト13番手/スプリント11位/決勝リタイア
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選10番手/スプリント・シュートアウト5番手/スプリント10位/決勝リタイア
周冠宇(アルファロメオ):予選12番手/スプリント・シュートアウト15番手/スプリント17位/決勝13位
ダニエル・リカルド(アルファタウリ)にとって良かったことは、骨折した左手が回復し、問題なくフルレースを走れたことだ。一方で、彼はアップグレード版AT04を乗りこなすことができなかった。決勝中にデブリによってマシンがダメージを負い、パフォーマンスが低下したとはいえ、チームメイトと比べてペースが良くなかった。
エステバン・オコン(アルピーヌ)は予選でもレースでも速さに欠けており、ガスリーにかなわなかった。日曜日の1周目はアグレッシブにいきすぎて、オスカー・ピアストリとの接触が起き、2台ともリタイアする結果になった。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン)にとって、オースティンは、今季最も低調な週末だった。ノリスに肉薄できたのは、スプリント・シュートアウトのみだった。COTAで走るのが初めてだったピアストリにとって、スプリント・フォーマットだったことが不利に働いたといえるだろう。スピードを発揮することができず、土曜日にはタイヤのデグラデーションに苦しみ、日曜日には、オコンとのホイール・トゥ・ホイールの戦いは、リスクが高いということを学んだ。
アルファロメオにとって両予選セッションの結果は期待外れだったが、少なくとも周冠宇(アルファロメオ)はチームメイトより上位を獲得した。日曜決勝では、タイヤのデグラデーションをコントロールすることができず、バルテリ・ボッタスの後ろに落ちた。F1で今年2年目の周だが、まだ学ぶべきことがたくさん残っているようだ。
■評価 4/10:大規模なマシンアップグレード導入も、精彩を欠いたマグヌッセン
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選13番手/スプリント・シュートアウト18番手/スプリント16位/決勝12位
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選14番手/スプリント・シュートアウト17番手/スプリント18位/決勝14位
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は、チームメイトより状況が悪かった。彼はチームをリードし、若きチームメイトを上回るパフォーマンスを発揮するために雇われているにもかかわらず、両予選で周に敗れた。経験によりレースではチームメイトに勝つことができたが、ポイントには全く届かない位置だった。
アップデートされたハースVF-23を手に入れたものの、ケビン・マグヌッセン(ハース)にとって、良い週末にはならなかった。今回、予選ペースは向上したため、今後状況が改善するかもしれないという希望はあるが、レースでは相変わらずチームメイトより早くタイヤをだめにしており、課題は残っている。
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