F1技術解説:第6戦(3)メルセデスと異なる方向性を選んだ、フェラーリのポーパシング対策
2022年F1第6戦スペインGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点などについて解説する。第1回「劇的に速くなったメルセデス。W13に向上をもたらした新フロア」、第2回「W13はレッドブルとフェラーリのいいとこ取りに? 悩めるメルセデスが踏み出した大きな一歩」に続く今回は、フェラーリのアップグレードに焦点を当てた。
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シャルル・ルクレールはパワーユニットが故障する前、12秒のリードでレースを支配していた。ではフェラーリにとって今季初となったこのマシントラブルがなかったら、ルクレールは勝っていただろうか。
フェルスタッペンとのバトルは、タイヤが決め手となった。カタロニア・サーキットは37℃という暑さの中、タイヤに厳しい試練を与えた。特に重要なのが、フロントとリヤタイヤのデグラデーションバランスだった。レッドブルは金曜日にはこの点でリードしていたが、フェラーリも土曜日になってF1-75のセットアップを変更し、フロントにダウンフォースを追加した。その結果マシンはややオーバーステアになり、サインツは対応に苦労し、一方ルクレールは乗りこなすことができた。タイヤの持ちが飛躍的に向上しており、おそらくルクレールは走り切っていれば優勝していたものと思われる。
スペインで投入されたアップデートが、十分機能したことも大きかった。
変更点は主に、フロアとディフューザーに集約される。外側のフラットボトムデフレクターは高さが増し(黄色矢印)、ライバルたちと同様の形状となった。さらにベンチュリートンネルインレットを再設計することで、マシン下の気流が最適化された(青色矢印参照)。
奇妙なことにフェラーリは、メルセデスが今回のスペインで追加したフロア両脇のカットアウトを、逆に削除している。両チームは、ポーパシング現象を制限するという共通の理由で、違う解決法を取ったことになる。つまりこの現象は、見かけよりもずっと複雑なものだと考えた方がいいかもしれない。
上記写真のようにフロア両端上部の切り欠きがなくなった(黄色矢印)。そこで、タイヤ前方にある吸気口の前にフィンを設け、ホイールと平行に渦を発生させ、フロア下およびディフューザーを密閉させた(赤色矢印)。
ディフューザー自体も、デザインが一新された。中央部に小さなフェアリングが追加され(黄色矢印)、膨張角を小さくして気流のエネルギーを分散させ、ディフューザーの幅により均等に広げているのがわかる。このパーツはすでにメルボルンからテストが重ねられており、フェラーリの一貫した改良姿勢が伺える。
一方でルクレールのターボとMGU-Hは修復不可能なほど破損しており、モナコ以降3基目の投入は必至だ。フェラーリは部品の設計や耐久性自体には問題がないと主張しており、操作や取り付けに問題があったと考えられる。
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