メルセデスF1代表が説明する、予算制限額を引き上げたい理由「インフレに苦しむスタッフを救いたい」
ロシアのウクライナへの侵攻や新型コロナウイルスの影響により、エネルギー価格や輸送費が世界中で高騰。また特に欧米を中心にインフレも進み、その度合いは過去数十年で最高レベルとも言われている。
F1には昨シーズンから予算制限額が導入。そんな中で様々なコストが上昇したことで、各F1チームは大いに苦しめられている。
メルセデスのトト・ウルフ代表は、エネルギー価格や輸送費の上昇に伴い、予算上限額を一時的に引き上げるべきだと主張。そうすれば、物価上昇に苦しむチームスタッフの給与にも調整を加えることができるはずだと語った。
F1に参戦する全10チームのうち、特にメルセデスやフェラーリ、レッドブル、マクラーレンといった大規模チームは、そもそも予算上限ギリギリの額でチームを運営する計画を立てていた。そんな中エネルギー価格や輸送費の高騰、さらにインフレまでもが追い討ちをかけ、抜本的な対策が導入されなければ、予算上限額を超過してしまうリスクがある。そのためこれらのチームは、現状を考慮して一時的に予算上限額を調整することを求めている。
一方で、そもそも予算上限額ギリギリまで使い切るつもりがなかったいわゆる小規模なチームは、予算上限額を引き上げることに慎重な構えを見せている。そもそもこの予算制限は、チーム間の格差を縮めることを目的に導入されたもの。今回のような事態であっても、特例的に引き上げることとなれば、当初の目的を達成できないのではないかと危惧しているわけだ。
ハースのチーム代表であるギュンター・シュタイナーは、「F1は予算の上限を変更したり、引き下げるべきではない。なぜならこれは、中団グループの戦いには適したモノになっているんだからね」と発言。ただ、輸送費の上昇に対応する形での引き上げについては、FOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)が監視できるとして、認めるべきだともしている。
メルセデスのウルフ代表は、チームの予算上限額をただ引き上げたいと言っているわけではないと主張しつつも、インフレに対応する形でチームスタッフの給与を引き上げる猶予が欲しいと語った。
「我々がより多くの”利益”を生み出したいということではないんだ。人々が苦しんでいる異常なインフレに対応する形で、チームスタッフの給与を保証することを可能にしたいのだ」
そうウルフ代表は語った。
「急にもっと多くの金額が欲しくなったわけじゃない。しかし今年の初めの実態と、今の数字を見てみよう。うまくいけば、調整する方法も見つけることができるはずだ」
「このスポーツにとって最悪の事態は、いくつか小さなチームが『大きなチームがアドバンテージを得ようとしている』とする頑固な立場にあることだと思う。しかし、それを納得させようとしている。反対に我々が上限額を引き上げようとしていると言うが、それは我々もやりたくないことだ」
「チームオーナーとしての立場から言えば、予算上限を引き上げること……当初のコンセプトを打破するためだけに、予算上限額を引き上げることはしたくない。しかし特に今のような厳しい状況では、チームスタッフが十分な給与をもらえるようにして欲しい」
ウルフ代表は、予算上限額を引き上げた際に各チームがその額を開発につぎ込むことを避けるのは簡単だと指摘する。チームの収支を監視し、エネルギー価格と輸送費の高騰分にのみ充てるようにすればいいというのだ。ウルフ代表曰く、コストの増加は約800万ポンド(約13億円/6月上旬のレート換算)になるという。
「我々が実証するのは、非常に簡単だと思う。ブラックリーのファクトリーのエネルギー価格は、250万ポンド(約4億円)から650万ポンド(約10億円)に上昇した。同様に輸送費も200万ポンド(約3億2000万円)から600万ポンド(約9億8000万円)になっていると思う。はっきりしているよ。収支報告書でそれを確認することができると思う」
「これは調整の観点から我々が求めているものだ。これにより、スタッフの賃金を引き上げるために、その一部を使うことができる」
ウルフ代表は、チーム間の格差を埋めるためにこの予算上限を導入したと指摘。しかし損害が及ぶ可能性が生じた時に、その妥協点を見出すことができるようにしたいと語った。
「我々はいかなる状況においても、チームとしての我々や、業界にとって本当に損害を与えるような形で、大きなチームを再編成したり、再構築するようなことは避けたいと思っている」
そうウルフ代表は言う。
「予算制限は、小さなチームが大きなチームと同じ予算額を使うことができるようにするという、特定の目的のために導入された。予算制限額を引き上げるために、毎年交渉をするべきではないと思うが、今の我々は、例外的な状況に直面していると思う」
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