レッドブル&HRC密着:SC導入で優勝争いの主導権はフェルスタッペンへ。無線トラブルを抱えながらも接戦を制す
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とカルロス・サインツ(フェラーリ)がレース終盤、テール・トゥ・ノーズを繰り広げた今年のF1カナダGP。この要因となったのは、47周目の角田裕毅(アルファタウリ)のクラッシュによるセーフティーカー導入だった。
しかし、あのときセーフティーカーが導入されていなくとも、このふたりはレース終盤に激しいバトルを演じていたかもしれなかった。
43周目に2度目のピットストップを行ったフェルスタッペンに対して、サインツは動かなかった。1回目のピットストップをフェルスタッペンより11周遅い20周目に行っていたサインツとフェラーリは、1ストップも視野に入れてレースを続けていたからだった。
フェルスタッペンがピットアウトした翌周の44周目の時点で、トップのサインツと2番手のフェルスタッペンのタイム差は約10秒。レース後、クリスチャン・ホーナー代表は「残り10周あたりでサインツに追いつき、オーバーテイクしていただろう」と語ったが、フェルスタッペンは「あの差を縮めて、逆転できていたかどうかはわからない」と本音をもらしていた。
そうして迎えた47周目に、角田がクラッシュ。セーフティカー導入によって差がない状態で再スタートとなれば、タイヤが古いサインツには勝ち目がないと、フェラーリは2度目のピットストップを命じた。つまり、角田のクラッシュによって、レースの主導権はサインツからフェルスタッペンに移ったのだった。
またこの日のフェルスタッペンはサインツと対決していただけでなく、別のトラブルとも戦っていた。それは無線の不具合だった。
「いつから故障していたのかはわからないけど、あるときからGP(ジャンピエロ・ランビアーゼ)から僕の声が聞こえないって言われたんだ。まあ僕の声が聞こえなくとも彼らは問題なかったと思うし、僕もGPの声が聞こえれば、それでよかった」とフェルスタッペンは笑うが、現在のF1は毎周のように無線でやりとりしていることを考えると、このトラブルは決して小さくはない。しかし、そのようなトラブルがあったことなど感じさせないあたりが、フェルスタッペンの強さでもある。
なお、8周目にリタイアしたセルジオ・ペレスはマシンを止める直前に「エンジン!!」と叫んだため、フェルスタッペンのパワーユニットを心配していた日本のファンも多いと思うが、実際にはパワーユニットには関係なく、「おそらくギヤボックスだと思う」とホーナーは語っている。
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