【全ドライバー独自採点/F1第19戦】ハミルトンの速さに陰りなし。決勝はパーフェクトだったフェルスタッペン
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回はアメリカGPでの戦いぶりを振り返る。
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■評価 10/10:今季初優勝は実現しなかったが、変わらぬ速さを見せつけたハミルトン
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選5番手/決勝2位
ほんの数周の間だったが、ルイス・ハミルトン(メルセデス)がついに今季初優勝を挙げる時が訪れたと思った。マックス・フェルスタッペンはシャルル・ルクレールを抜くのに手間取り、タイヤをかなり使ってしまったのだ。結局はRB18の速さが勝り、ハミルトンは首位を明け渡したのだが、アメリカGPの週末を通して、彼のパフォーマンスは完璧だった。ハミルトンは過去10戦の予選で8回、チームメイトに勝っている。今回のレースではレッドブル1台とフェラーリ1台に勝ち、7度のワールドチャンピオンは昨年までと同様に速くて強いということを改めて証明した。
■評価 9/10:決勝で非の打ちどころがない戦いをしたフェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選3番手/決勝1位
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選2番手/決勝3位
セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン):予選12番手/決勝7位
レースウイナー、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、決勝日にはやるべきことをすべてやり遂げた。スタートでカルロス・サインツの前に出てトップに立ち、ペースをコントロールしてレースをリードした。タイヤ交換でタイムロスをした直後のチーム批判はどうかと思うが、そこから挽回して勝利をつかみ、コンストラクターズタイトルを確定させ、チームに報いた。ただ予選では、RB18との相性がいいサーキットでフェラーリ2台に敗れており、彼のレベルではベストの出来とはいえなかった。
シャルル・ルクレール(フェラーリ)はグリッドペナルティにより12番グリッドからのスタートとなり、3位が望み得る最大の結果だっただろう。このリザルトにより、ルクレールはセルジオ・ペレスからランキング2位の座を奪い返した。いつもよりも落ち着いたレースぶりで、ファーストスティントでは時間をかけて慎重にアストンマーティンをパス、セカンドスティントの初めにはペレスの後ろにつけて、その後、見事なオーバーテイクを見せた。アンダーカットされるのを防ぐために早めにピットストップを行った後、2周、フェルスタッペンの前を走ったものの、抜かれた後はついていくことができず、ハミルトンを追いかけることもできなかった。
セバスチャン・ベッテルは、引退が近いとはいえ、速さを失ったわけではないと、今回も証明した。予選Q2でミスをしたことが残念だったが、レースでの素晴らしいスタートで挽回し、タイヤを良い状態に維持し、チームメイトをオーバーカットし、レース後半には2周にわたりトップを走行した。6位は固いと思われたが、2回目のタイヤ交換で時間がかかって後退。だが再びポジションを上げて、8位でフィニッシュした。彼の追い上げは、今回のレースのハイライトのひとつといっていいだろう。
■評価 8/10:大クラッシュ後にトップ10圏内でフィニッシュしたアロンソ
フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ):予選9番手/決勝15位
ランド・ノリス(マクラーレン):予選8番手/決勝6位
もうひとりの賞賛すべきベテランはフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)だ。ランス・ストロールが原因を作ったクラッシュでマシンに大きなダメージを負いながら、最終的に7位でフィニッシュしたのだ。予選は彼のレベルからするとベストではなかったものの、レースではアクシデントまではいつもどおりの堅実な走りをし、クラッシュ後も全くミスなく走った。だがレース後のペナルティでポイント圏外まで降格されてしまった。
ランド・ノリス(マクラーレン)は予選で8番手と健闘、6番グリッドから決勝をスタート。体調不良だったノリスは、ファーストスティントではポジションを落としたが、最終スティントではいつもの強さを発揮、13番手から6位まで挽回してみせた。ターン1とターン12のブレーキングには、バトル相手のライバルたちは驚いただろう。
■評価 7/10:最後列から入賞を果たした角田裕毅
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選1番手/決勝リタイア
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選4番手/決勝4位
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選16番手/決勝8位
ピエール・ガスリー(アルファタウリ):予選13番手/決勝13位
角田裕毅(アルファタウリ):予選15番手/決勝9位
ポールシッターのカルロス・サインツ(フェラーリ)は、気の毒なことに1コーナーでのアクシデントでリタイアとなった。ただ、スタート時のリアクションタイムが遅く、ホイールスピンも起きたことで、すぐさまフェルスタッペンにリードをを奪われたのは、マイナスポイントだ。素晴らしい予選で優勝のチャンスを手にしていたが、勝つためにはスタートでリードを維持することが重要だった。
セルジオ・ペレス(レッドブル)は優勝したシンガポールの時のようなパフォーマンスを発揮できず、アメリカではフェルスタッペンの陰に隠れた目立たない存在だった。予選は4番手どまり、グリッドペナルティで9番手からスタート、1周目にアグレッシブに行きすぎて、バルテリ・ボッタスと接触。フロントウイングの右側のエンドプレートを失い、ダウンフォースとタイヤライフにおいて万全でない状態で走らなければならなかった。アメリカでランキング3位に落ちたことで、ホームグランプリのメキシコではより大きなプレッシャーがかかりそうだ。
ケビン・マグヌッセン(ハース)は、ピレリが2回か3回ストップと予想していたレースを1回ストップで走り切った。タイヤの専門家が予測していたよりも長くタイヤを持たせて走ることができたのだ。レースを通してペースをコントロールし、不必要なバトルをせずにチェッカーを目指した。終盤はさすがにタイヤを使い切ってしまっていて、ノリス、アロンソ、ベッテルに抜かれたが、重要なのはコンストラクターズ選手権の順位を争っているアルファタウリの前でフィニッシュしたことだ。
アルファタウリAT03は今回のトラックとの相性が良さそうだったが、ピエール・ガスリー(アルファタウリ)は予選でブレーキの問題に見舞われ、Q2で敗退した。ガスリーの決勝1周目は素晴らしく、コース上でノリスを抜き、その後、速さで勝るボッタスのアルファロメオを抑え続けた。しかしセーフティカー出動時の違反で5秒のタイムペナルティを科され、チームのミスでふたつ目のタイムペナルティが出てしまったことで、入賞する可能性は完全に消滅した。
角田裕毅(アルファタウリ)はグリッドペナルティを受けて最後列からのスタートになったが、決勝オープニングラップでポジションアップ。最終スティントでは最後までタイヤを持たせてトップ10圏内でフィニッシュし、貴重なポイントを稼いだ。
■評価 6/10:健闘するも入賞圏内にとどまれなかったアルボン
ミック・シューマッハー(ハース):予選19番手/決勝14位
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選11番手/決勝12位
ミック・シューマッハー(ハース)はレースの大半でエステバン・オコンと戦った。予選Q1でスピン、後方に沈んだことで、日曜に入賞のチャンスを見出すことができず。しかもアロンソとストロールのアクシデントで出たデブリを拾ってしまい、困難なレースとなった。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は今回も速さを発揮し、ポイントを目指して戦っていた。しかし自分より速いマシンを抑え続けて走ることで、タイヤを使い切ってしまい、ついには崖を迎えてポジションを維持することができなくなった。
■評価 5/10:金曜につまずいたラッセル
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選6番手/決勝5位
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選10番手/決勝リタイア
周冠宇(アルファロメオ):予選14番手/決勝11位
ジョージ・ラッセル(メルセデス)は、今シーズン最悪の週末だったと自分で振り返っている。FP1でクラッシュしかけたことで自信を失ったのだという。予選ではハミルトンに近づいたが、決勝スタート直後のターン1でチームメイトに勝とうとするあまり、前のサインツに突っ込んでしまった。サインツをリタイアに追い込むと同時に、ラッセル自身もマシンに小さなダメージを負った。
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は、マシンのアップグレードがうまく機能しており、予選Q3に進出。カナダ以来のポイント獲得かと思われたが、珍しくミスをして、ターン19でスピン、貴重なポイントを逃した。
周冠宇(アルファロメオ)は予選で速いタイムを出したものの、ほんの小さなトラックリミット違反でそのラップタイムを取り消されてしまった。レースでうまく挽回し、最後のスティントで一時ポイント圏内を走行。しかしギャンブルで早めのピットストップを行ったことにより、終盤タイヤが終わってしまい、グリップを失って、ポジションを落としていった。
■評価 4/10:シューマッハーを押し出してペナルティを受けたラティフィ
ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ):予選20番手/決勝17位
ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)は今回も予選最下位だった。だがレース中にアルボンのライバルたちを抑え続けたことは、チームへの小さな貢献となった。シューマッハーをコース外に押し出してペナルティを受けたことについては、自分の非を認めている。
■評価 3/10:ストロールの行為はあまりにも危険
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選7番手/決勝リタイア
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選18番手/決勝10位
ランス・ストロール(アストンマーティン)は予選で素晴らしい速さを見せた。レースでは最初のタイヤ交換でチームメイトの後ろに下がり、セーフティカーの後、背後のアロンソを抑えようとして危険な動きをしたことが大きなアクシデントにつながった。あれほどの危険行為に対して次戦3グリッド降格というペナルティは軽すぎる。
エステバン・オコン(アルピーヌ)にとってアメリカGPの週末は長く厳しいものだった。A522に良い感触を持てず、予選Q1で敗退。レースでは12位フィニッシュだったが、他者のペナルティで10位に繰り上がった。
■評価 1/10:厳しい週末を過ごしたリカルド
ダニエル・リカルド(マクラーレン):予選17番手/決勝16位
ダニエル・リカルド(マクラーレン)は週末を振り返ってこう言った。「やっと終わるから、今笑顔なんだ。本当に辛い週末だった」。その言葉が彼にとって悲惨な週末のすべてを言い表しているだろう。
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