F1技術解説:アブダビGP(3)選手権4位争いを繰り広げたマクラーレン&アルピーヌが抱えていた問題点
2022年F1第22戦アブダビGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回「タイヤに厳しいはずのフェラーリがレッドブル/ペレスに勝てた理由」、第2回「ヤス・マリーナ・サーキットの特性に苦しめられたメルセデスW13」に続く今回は、シーズンを通してコンストラクターズ選手権4位の座を争ったマクラーレンとアルピーヌがそれぞれ苦労した問題点に焦点を当てる。
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マクラーレンはシーズン最終戦で、ダブル入賞を果たした。しかしコンストラクターズ選手権では、アルピーヌから4位を奪取することはできなかった。とはいえランド・ノリスはこのレースでファステストラップを記録し、「中団グループ最速ドライバー」の称号を得た。
ドライバーズ選手権でも、ライバルであるアルピーヌのエステバン・オコンより30点、フェルナンド・アロンソより41点多くポイントを獲得した。ダニエル・リカルドの奇妙な不調がなければ、おそらくマクラーレンは選手権4位の座を失うことはなかっただろう。
一方ファクトリーでは、インフラの老朽化という問題もあった。確かにアブダビでは、上の画像にあるように、レッドブル(真ん中の切り込み)とフェラーリ(切り込みとタイヤ前のフィン)にヒントを得て、新しいフロアをテストしている。
とはいえMCL36は、もはや時代遅れになりつつあるケルンにあるトヨタの風洞で造形されたものだ。マクラーレンは現在、自前の最新風洞を建設中だが、運用開始は2023年にずれ込む見込みだ。したがって来季のMCL37は、その恩恵にあずかることはできない。
一方チームは空力部門を中心に、集中的なリクルート活動を開始した。この冬のテスト中では、ブレーキ冷却の問題でマクラーレンは走行時間を失った。あのトラブルはまさに、チームの人手不足、人材不足が浮き彫りになった事件だった。
「今シーズンは、我々の幾つもの弱点が表面化した1年だった」と、アンドレアス・ザイドル代表は語る。
「特にファクトリーのエンジニアリング面で、他チームと比べて大きく劣っていることに気づかされた。具体的にはブレーキの問題解決を含む現行車の開発と、来年のシャシーの設計を同時に進めることができなかった。これはかなり、危機的な状況と言っていい。そこで財務部門とも協力して、費用を節約できる分野では極限まで節約を実行し、そこで浮いた資金を新規スタッフ採用に振り向けた。その結果プロジェクトを並行して実行することも、なんとかできるようになった」
一方のアルピーヌは、最後まで信頼性不足に苦しめられた。アルピーヌでの最後のレースで、フェルナンド・アロンソはチェッカーフラッグを受けることなくリタイアを余儀なくされた。サウジアラビア、イタリアに続き、またしてもウォーターポンプが故障してしまったのだ。
「ウォーターポンプが大きな問題で、何度もハンディキャップを負ってきた」と、ローラン・ロッシCEOはフランスのTV局カナル・プリュスのインタビューに答えた。
「少しデザインを攻めすぎた結果、信頼性の問題を起こしてしまったということだ。なので来季は、よりクラシックで頑丈なものに変えるつもりだ。今季の仕様は、空力的には非常に有効だった。しかし壊れてしまっては、元も子もない。来年はシーズン序盤こそ、コンパクトさが少し犠牲になるだろう。しかしそれもすぐに、盛り返せると信じているよ」
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