F1技術解説:オーストラリアGP(1)予選で不利な特性を持ちながらポールtoウインが可能なレッドブルRB19のコンセプト
2023年F1第3戦オーストラリアGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回では、レッドブルRB19の細部の画像を紹介するとともに、今季3勝目を挙げた同マシンの強みに焦点を当てる。
────────────────────────────────
第3戦オーストラリアGPの勝者マックス・フェルスタッペンと2位ルイス・ハミルトンの差は、わずか0.179秒だった。しかし言うまでもなく、この僅差は両者の実力を正確に反映したものではない。全車が最終ラップをセーフティカーの後ろで走ったからであり、実際にはバーレーンやサウジアラビア同様、レッドブルは圧倒的優位でレースを支配していた。
今季のレッドブルRB19は予選一発、レースペースの両方に優れたマシンだ。しかもアルバートパークには4つのDRSゾーンがあることから、予選でのフェルスタッペンとセルジオ・ペレスはライバルたちに大差をつけてフロントロウを独占すると予想されていた。
しかし実際には、そうではなかった。気温が低かったこと、昨年全面的に舗装をやり直して路面がスムーズだったこと、そして雨が降ったこと。この3つの条件が重なり、フロントタイヤはなかなか温まらなかった。そのため全ドライバーが、1セットのソフトタイヤで数周を走る形でアタックした。ただしその方法は、同じではなかった。
レッドブルのドライバーは、アタックラップ、クールダウンラップ、2回目のアタックラップという通常の方法をとった。一方メルセデスを含む多くのドライバーたちは、ウォームアップラップを終えてからさらにもう1周、プレップラップ(準備周回)をこなしてから、1周だけのアタックラップを敢行した。
振り返れば、レッドブルのアプローチは燃料搭載量も多く、2回のアタックの間、タイヤをしっかり持たせる厳格なマネージメントが必要だった。そして時間もかかるという、決して理想的なものではなかった。
ジョージ・ラッセルとルイス・ハミルトンはよりコンパクトなランで、マシンの性能を最大限に引き出すことができた。対照的にフェルスタッペンは完璧に近いラップを刻むまで、より厳しい時間を過ごした。
■予選より決勝重視で設計されたレッドブルRB19
とはいえレッドブル勢の予選での優位は、開幕2戦と比べて劇的に低下したわけではない。2番手との差がオーストラリアでは0.308%だったのに対し、サウジアラビアでは0.176%、バーレーンでは0.326%だった。さらに言えば、予選でコンマ2、3秒のアドバンテージを持つRB19は、決勝レースではさらに大きな優位を築く。その理由は何だろう。
クリスチャン・ホーナー代表はオーストラリアGPのレース後、こう語っている。
「我々は予選ではなく、レースを見据えた重量配分をマシンに施している。予選でタイヤをアグレッシブに温めているチームはレースでより苦しんでいることに、あなた方も気づいているだろう?」
RB19はブレーキング時のフロントの沈み込みが少ない。その美点は一方で、フロントタイヤのウォームアップに時間がかかるという欠点にもなる。これは予選では小さな不利となるが、決勝では大きな有利となる。
つまりレッドブルの本質的な優位性は、予選よりも決勝レースで発揮されるのである。エイドリアン・ニューウェイは最新作であるRB19に独創的なサスペンションとフロアを組み込み、重心移動を極力少なくすることに成功している。その詳細に関しては、別の機会に改めて紹介しよう。
積読本や購入予定の書籍の情報を投稿しています
小説/開発/F1&雑談アカウントは、フォロバを返す可能性が高いアカウントです