【全ドライバー独自採点/F1第7戦】モナコが浮き彫りにした実力。完璧な仕事をした3人と、僚友との落差が大きすぎる2人
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回はモナコGPの週末を振り返る。
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モナコは、ドライバーに、純粋な才能と計算されたリスクによってマシンのペース不足を埋め合わせるチャンスを与えるサーキットだ。そのため週末全体を振り返って、満点にふさわしいドライバーがいれば、非常に低い評価を与えざるを得ないドライバーもいる。ウォールとの距離やストップウォッチは嘘をつかない。今年は3人のドライバーがほぼ完璧な週末を過ごし、さらにふたりが自分のマシンの力をはるかに上回るパフォーマンスを見せた。
■評価 10/10:決して順調ではない中で、最大の結果をつかんだフェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選1番手/決勝1位
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選2番手/決勝2位
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選4番手/決勝3位
ウイナーのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)にとっての週末は順調に進んだわけではなかったが、そのなかで完璧な仕事をしてみせた。
金曜日にはRB19のボトミングがひどく、チームは土曜には車高を上げなければならかった。それによりマシンのピークパフォーマンスは失われたが、モナコで必ず必要な予測可能性を向上させることができた。
それでもフェルスタッペンは、ポールポジションをつかむために、限界ぎりぎりまで力をふり絞る必要があった。アロンソとルクレールに勝つために壁に2回もぶつかりながら走り、見事なラップを走った。
決勝ではいずれ雨が降ると予想されていたため、ミディアムタイヤで長く走りながら、アロンソがピットに入るのを待ち続け、使い古したタイヤで何度かウォールに接触しながら走った。最終的に、フェルスタッペンは、後半が雨になった難しいレースでしっかり仕事をこなし、チャンピオンシップで大きくリードを広げた。
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は、今シーズンここまでの自己ベストの成績を収めたが、勝利には届かなかった。AMR23が最終セクターでペース不足だったことで、ポールポジションを逃した時に、優勝の望みが消えたといっていいだろう。
レースではマシンの感触が完璧ではなかったというが、それでも一度もミスをせず、自分よりソフト寄りのタイヤを履くフェルスタッペンのピットウインドウ内にとどまり、プレッシャーをかけ続けた。
しかし雨が降り始めた時、いったんミディアムタイヤに換えて、翌周インターミディエイトに交換し直したことで、優勝の可能性は完全に失われた。それでもチームにとって貴重なポイントを大量に稼いだ。
エステバン・オコン(アルピーヌ)は今回、彼のキャリアのなかで最も優れた予選ラップを走り、アルピーヌA523を本来の順位よりはるかに前の位置につけた。決勝では堅実にディフェンスし、チームに久々の表彰台をもたらした。彼の実力によるこのリザルトは、チームのCEOと代表の関係が懸念される、今のアルピーヌが必要としていたものだ。オコンは、適切なマシンがあればトップ争いができるドライバーであるということを証明した。
■評価 9/10:今年も母国で運に恵まれなかったルクレール
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選6番手/決勝4位
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選3番手/決勝6位
もしもFP3終盤、ミラボーでウォールにヒットするというミスを犯さなければ、ルイス・ハミルトン(メルセデス)には10点を与えたいところだった。このミスで最高点には至らなかったものの、ハミルトンは、アップグレードが投入されたW14で何ができるかを示した。予選Q1では危うい場面もあったが、全体的には明らかにラッセルよりも速かった。
ハミルトンは決勝では一度もミスせず、サインツにプレッシャーをかけ、サインツがミラボーでコースオフした後は、オコンに挑んだが、3位には届かなかった。
今年もホームGPで運に恵まれなかったシャルル・ルクレール(フェラーリ)に、心から同情する。ポールポジションを争えるほどの速さのないマシンでルクレールは驚異的なラップを走り、フェルスタッペンのポールタイムからわずか0.106秒差まで迫ったというのに、チームの愚かなミスにより、他車妨害のペナルティを受け、3グリッド降格されてしまった。
レース前半はハミルトンの後ろを走り、もちろんハミルトンはミスをしなかったため、順位を上げられず。さらにハードタイヤスタートだったが、チームは雨を待たずにタイヤ交換をし、インターミディエイトへの交換も遅かったことで、ルクレールは6位フィニッシュにとどまった。
■評価 7/10:ドライコンディションで見事な走りを見せた角田裕毅
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選5番手/決勝8位
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選8番手/決勝5位
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選7番手/決勝7位
ランド・ノリス(マクラーレン):予選10番手/決勝9位
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選11番手/決勝10位
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選15番手/決勝11位
角田裕毅(アルファタウリ):予選9番手/決勝15位
ここまで紹介した5人と他のドライバーたちのパフォーマンス差は非常に大きく、8点に値する者はいなかった。カルロス・サインツ(フェラーリ)は、週末の前半はルクレールより速いように見えたが、予選Q3でチームメイトにかなわなかった。
ルクレールのペナルティにより、サインツは4番グリッドに繰り上がり、前のオコンを追うが、ミスをして接触、ウイングのエンドプレートを失った。それでも4番手をつかめるかと思われたものの、雨が強くなってきた時にコースオフし、ポジションを落としてしまった。
フェラーリとは異なり、メルセデスはジョージ・ラッセル(メルセデス)を雨が降るまで古いタイヤで走らせた。その戦略で走ったのは、トップ8のなかでは、ラッセルの他に、フェルスタッペンとアロンソだけだった。ファーストスティントを長く取ったことで、ラッセルは3番手に浮上。しかしラッセルはミラボーでコースオフ、コースに戻る際にはペレスと接触した。ポジションをふたつ失った後、ラッセルは、ダメージを負ったマシンで前を行くオコンとハミルトンに追いついていったが、タイヤのデグラデーションにより、再びギャップが拡大した。
ラッセルは週末を通してハミルトンにかなわなかったが、同じことがピエール・ガスリー(アルピーヌ)にも言える。今回ガスリーは堅実な仕事をしたが、それでも予選、決勝ともに、オコンに勝てなかった。Q3でオコンのような見事なラップを走ることができず、7番手となり、決勝でその位置をキープ。1回しかピットストップをしなかったラッセルの後ろに下がり、コースオフをしたサインツより前に出て、ガスリーは7位でフィニッシュした。
ランド・ノリス(マクラーレン)は、Q2終盤にミスをし、マシンの修理が必要になったことで、Q3で後れを取り、最終アタックでは、ルクレールからの妨害を受けて10番手となった。レースでのMCL60は、ドライコンディションではペースが良くなかったが、雨が降り始めると調子が向上。ノリスは終盤のコンディションではコース上で最速で、角田裕毅を抜いて9番手に上がった。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン)には、ウエットコンディションではチームメイトに匹敵する速さはなかったが、それでもF1で走った初めてのモナコで1ポイントを獲得したのは立派だといえるだろう。ドライコンディションでは、予選でもレースでも素晴らしい走りを見せ、今シーズンのルーキーのなかで最も印象的だった。
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は経験を生かして、良いレースをしたが、惜しくも入賞を逃した。51周目に誰よりも早くインターミディエイトタイヤに交換。正しいタイミングにより、デ・フリースの前に出た。角田の後退により11番手に上がり、ピアストリに手が届くかと思われたが、タイヤの劣化により、11位に甘んじることとなった。
角田裕毅(アルファタウリ)は、ブレーキの問題により、貴重な2ポイントを逃がした。今回も予選で素晴らしい走りを見せ、マクラーレンのふたりを破って9番手を獲得。決勝ではドライコンディションの前半、ノリスとの差を徐々に広げていた。しかし雨のなかでは、ブレーキに苦しみ始めた。チームからはプッシュするように指示されたが、ポジションを落とし、ポイント圏内に残れず、悔しいレースとなった。こういう状況ではAT04の性能に応じたペースで走ることを心がけるべきであったため、角田のミスの責任の一部はチームにもある。
■評価 6/10:堅実な週末を送ったデ・フリース
ニック・デ・フリース(アルファタウリ):予選12番手/決勝12位
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選13番手/決勝14位
ニック・デ・フリース(アルファタウリ)はついに堅実な週末を送ることができた。モナコのウォールにヒットせずに走るのはルーキーにとって容易でないことだが、デ・フリースはそれをやり遂げた。予選ではうまくラップをまとめきったが、チームメイトの角田にはかなわず。それでもQ2に進んだのは立派だったし、日曜にも良いレースをした。タイヤにグレイニングが生じるなかで、自分より速いマシンに乗るボッタスを抑え続け、タイヤがパフォーマンスを取り戻すと、ギャップを拡大していった。
インターミディエイトタイヤへの交換のタイミングがボッタスより遅かったことで順位を落とした後も冷静さを保ち、角田がコースオフしたことでポジションを上げて、グリッドと同じ位置の12位でフィニッシュした。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、FP1の終盤に激しいクラッシュをし、それが週末全体に大きな影響をおよぼした。新しいパーツのいくつかを壊し、交換のストックがなかったことで、旧型で戦わなければならず、さらにFP2では走行時間を大幅に失ったのだ。
その後のアルボンは、いつもどおり良い走りをし、Q3進出をかけた戦いにも加わったが、予選13番手。決勝では最初のスティントで順位を維持した後、タイヤのデグラデーションが深刻になり、18周目というかなり早い段階でピットストップしなければならず、トラフィックのなかを走ることになった。インターミディエイトへの交換を早いタイミングで行ったことでいくつかポジションを取り戻したものの、最終的に14位どまりだった。
■評価 5/10:ギャンブルが実を結ばなかったマグヌッセン
周冠宇(アルファロメオ):予選19番手/決勝13位
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選17番手/決勝リタイア(19位完走扱い)
周冠宇(アルファロメオ)の週末は、悪くはなかったが、ボッタスにははるかに及ばなかった。予選は0.5秒遅い19番手。決勝では、ソフトタイヤでスタートし、1周目の終わりにハードに交換するというギャンブルが功を奏し、雨が降り始めるまでには15番目まで順位を上げた。ボッタスと同様に早い段階でインターミディエイトに交換したことが役立ち、13位でフィニッシュした。
ハースのふたりは、マシンが路面のグリップが増すにつれて競争力を失うことで、困難な週末を送った。ケビン・マグヌッセン(ハース)は、予選ではチームメイトをわずかに上回って17番手。決勝では、自分よりも速いマシンを抑えるために戦い続けたが、ペレスに後ろからヒットされるというインシデントもあった。ダメージを負ったマシンでスリックタイヤのまま走り続け、その後フルウエットに交換するというのは、考えられないギャンブルだった。何度かコースオフを喫し、最終的にはチームからリタイアを指示された。
■評価 4/10:ヒュルケンベルグ、ペナルティの連続で浮上できず
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選18番手/決勝17位
ローガン・サージェント(ウイリアムズ):予選16番手/決勝18位
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)は、1周目にサージェントに対して過度に楽観的なアクションを取ったため、ペナルティを受けた。しかしそのペナルティが適切に実行されなかったと判断され、再びペナルティが科されたため、17位という結果に終わったのも不思議ではない。
ローガン・サージェント(ウイリアムズ)はフリープラクティスで苦労した後、Q1で16番手。レースは、ヒュルケンベルグとの接触の影響を受けた。マシンがダメージを負ったことで、タイヤのデグラデーションがより一層ひどくなり、20周目にピットイン。そのすぐ後にパンクにより再びピットに戻らなければならず、最下位に落ちてしまった。
■評価 2/10:優れたマシンを生かせなかったストロール
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選14番手/決勝リタイア
チームメイトとの対比で見ると、ランス・ストロール(アストンマーティン)の週末はより一層悲惨に思える。FP3では3番手タイムを出したが、予選は14番手にとどまり、決勝では1周目に何度か接触があり、インターミディエイトに交換した直後にクラッシュした。優勝争いができるマシンに乗っているにもかかわらず、ひどい週末だった。
■評価 1/10:ペレスにとってキャリア最悪の週末
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選20番手/決勝16位
モナコでのセルジオ・ペレス(レッドブル)は一体どうしたのか。彼の長いキャリアのなかで最悪の週末といっていいかもしれない。Q1でのクラッシュは不可解だった。彼にとっては、それなりに走ってQ2に安全に進めばよいだけのセッションだったはずだ。レースでは、何度も接触があり、マシンがダメージを受けた。すべてのインシデントの責任が彼にあったわけではないが、チームメイトは優勝したというのに、その2周遅れの16位というのは、ペレスにとってショックな結果だっただろう。
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