【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第7/8戦】先輩より熟練して見える最近の角田。結果につながる日がいずれ来る
F1での3年目を迎えた角田裕毅がどう成長し、あるいはどこに課題があるのかを、F1ライター、エディ・エディントン氏が忌憚なく指摘していく。今回は2023年F1第7戦モナコGPと第8戦スペインGPについて振り返ってもらった。
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F1はずいぶんと変わったものだ、とスペインでの角田裕毅のペナルティを見て思った。私がチームを運営していた時代に、自分のドライバーに角田のような状況で5秒ペナルティを言い渡されたら、すぐさまチームマネージャーをスチュワードルームに送って、馬鹿げたペナルティを取り消してもらおうとしただろう。
今の裁定には一貫性がなく、不公平だ。たとえば、マックス・フェルスタッペンはターン1に進入する際に、カルロス・サインツに対して全くスペースを与えていなかったが、それについては記録すらされなかった。レース中、エステバン・オコンは追いついてきたフェルナンド・アロンソからポジションを守ろうとして、極めて遅いタイミングで方向転換をしたが、この一件も記録されず、もちろん調査は行われなかった。スタート直後、ジョージ・ラッセルはエスケープロードを使って、ターン1でのレイトブレーキングで得たポジションをキープした。これについては記録されたが、調査は必要なしとされた。これを見ると、ペナルティに一貫性があるとはとても言い難い。
角田裕毅はモナコとスペインの両方で素晴らしい走りをして、ポイント圏内を走っていたのに、結局ポイントをつかむことができなかった。来年のシートをかけて戦っているときに、この結果は痛い。アルファタウリのドライバーを決めるヘルムート・マルコは、シーズンの途中に起きたことは何ひとつ覚えていない。彼にとって大事なのは、最終的なランキングだけなのだ。
皆さんももうご存じのとおり、私はヘルムートのファンではない。彼がジュニアフォーミュラでチームオーナーを務めていたころも、ペーター・ザウバーと組んでいた時もそうだ(普段穏やかなペーターが、時々ヘルムートにキレているのを見るのは面白かったが)。そして、今のヘルムートの若手ドライバー選択と管理にも感心しない。レッドブルがドライバーに費やした金の1パーセントでもあれば、私ならもっと多くのF1優勝者を生み出すことができた。
話がまた脱線しているって? オーケー、オーケー、角田の話に戻ろう。モナコでの角田は、予選でシケインでのミスがあったものの、最終的に9番手を獲得した。AT04の本来の位置よりもはるかに良い結果だ。決勝で彼は楽に2ポイントを獲得できそうだったが、雨が降り始め、温度が下がってくると、ブレーキがきちんと機能しなくなった。ファエンツァの友人から聞いたところでは、冷却しすぎていたという話で、そうであればチームの責任だ。
スペインでは、全体的に混乱した予選のなか、角田はQ2でトラックリミット違反を犯した。このラップのタイムが抹消されていなくても、Q3には届かなかったが、セルジオ・ペレスやラッセルより前からスタートすることができた。
角田は毎週末、マシンの性能を超えた速さを見せている。ミスは少なく、感情をコントロールし、素晴らしい走りをしているのだ。モナコとスペインに関していえば、ペレスよりも角田の方が経験豊富なドライバーに見えるほどだ。
今、角田が電話をかけてきて、私にアドバイスを求めたとすれば、どう答えるか。「今の調子でやりなさい」とだけ言うだろう。彼は今、素晴らしい仕事をしているのだから、それ以上言うことはない。
君を岸から遠ざけようとする潮流に逆らって泳ぎ続けなさい。そのうち流れは変わる。このまま頑張っていれば、うまく行く時が必ず来る。そうして、2024年に君からシートを奪うべきではないのだということを、マルコを含めたすべての人々に対して、分からせることができるだろう。
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筆者エディ・エディントンについて
エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。
ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。
しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。
ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。
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