F1第14戦技術解説(2)アップデート効果で予選3番手か。メルセデスが導入した新フロア
2023年F1第14戦オランダGPの各マシンを観察したF1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが、細部の画像を紹介するとともに、注目点について解説する。
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連載第1回で新パーツについて紹介したマクラーレンの進歩について、さらに探っていこう。
ランド・ノリスが予選で2番グリッドを獲得したことは、マクラーレン技術陣が進歩を成し遂げたことを証明している。彼のラップタイムを分析すると、ターン7まではマックス・フェルスタッペンに最大0.185秒のリードを築いていた。しかしRB19の優れた空力効率のおかげで、フェルスタッペンはセクター2でコンマ3秒、セクター3でもコンマ2秒以上の大量リードを築いた。
とはいえMCL60が曲がりくねったセクションでこれほどの強さを見せた事実は、ダウンフォースの面でマクラーレンの空力エンジニアたちが勝ち得たものを示している。ただしドラッグについては、まだ課題が残っている(その辺りは、同じくオランダでアップデートを導入したアストンマーティンも事情は似ている)。
最強レッドブルに比べれば、マクラーレンは依然として空力的洗練さが欠如しているということだ。それに加えてMCL60は、長くまわり込むコーナーでは不安定な挙動に悩まされている。典型的だったのが3速で回る長い左のターン10だった。
ノリスはこのコーナーの立ち上がりでギヤを1段上げすぎたとはいえ、ポールポジションをフェルスタッペンから奪い返すには、レッドブルとの直線でのスピード差が大きすぎた。またノリス自身も指摘したように、レースペースは予選ほど良くなかった。しかし、より効果的なリヤウイングを搭載していることから、今後のパフォーマンスは期待できそうだ。
前戦ベルギーGPでは、そんな適切なリヤウイングがまだなかった。そのためダウンフォースが効き過ぎるマシンとなり、表彰台を逃した(ただしそのおかげで、オスカー・ピアストリは雨のスプリントレースで2位を勝ち取れたのだが)。
そして今週末のモンツァに向けての朗報は、 ローダウンフォースのウイングが準備されているということだ。
「モンツァにはスパで遭遇したのと同じような問題が予想される。そこでベルギーを終えてから、最高速を稼ぐための緊急アクションを開始した。モンツァではラップタイムだけでなく、トップスピードでも競争力を発揮できるように、いくつかの変更を行う予定だ」
■メルセデスの新フロア
マクラーレン同様、メルセデスもオランダGPで多くのアップデートを導入した(下の写真でわかるように、主にフロアエッジを中心にした変更だった)。しかしレースでは戦略が混乱したために、せっかくのマシン競争力の向上はあまり脚光を浴びずに終わってしまった。とはいえジョージ・ラッセルの予選3位は、このアップデートなしには不可能だった。
「決勝レースでの我々は、あまりにも長い間、(ドライタイヤで)走り続けた」とトト・ウォルフ代表は語る。
「完全に見通しを誤ったということだ。特にレーススタート直後だ(注:メルセデスがドライタイヤからインターミディエイトに履き替えたのは、ハミルトン3周目、ラッセル4周目で、2台はほぼ最後尾まで後退した)」
「クルマがとても速かっただけに腹立たしい。それでもレース終盤のインターミディエイトでは、ジョージはマックスとほぼ互角のペースだったし、ルイスは(カルロス・)サインツの後ろでとても速かった。我々はもっといい位置にいられたはずだ。だが、“できたかもしれない”という後悔は、このスポーツでは何の役にも立たない」
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