F1第14戦技術解説(1)マクラーレンが金曜日に試した新ウイング
2023年F1第14戦オランダGPの各マシンを観察したF1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが、細部の画像を紹介するとともに、注目点について解説する。
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7月のイギリスGP前後から一気に戦闘力を上げ、フェラーリ、アストンマーティンら上位勢と互角以上の戦いを繰り広げるようになったマクラーレン。オランダGPも戦略ミスがなければ、ランド・ノリスは表彰台に上っていたかもしれない。チーム代表アンドレア・ステラのコメントをもとに、マクラーレン躍進の秘密を探ってみよう。
F1において何もかも一度に達成することは、人生と同じように不可能だ。マクラーレンはそのことを、十分にわかっている。なのでシーズン開幕前にMCL60のダウンフォースが全般的に足りないことに気づくと、チームは予定されたアップデートプログラムをいったん脇に置き、ダウンフォース増加作業に集中した。
チーム代表のアンドレア・ステラは、「純粋なダウンフォースを増やす作業は、たとえば特定のサーキットでドラッグレベルを改善することよりも、はるかに複雑なことだ」と説明する。
「空力部門がこれまでその分野に取り組んでこなかったのは、単に優先順位の下位にあったからだった」
それでも彼らは、まず4月のアゼルバイジャン、次に7月のオーストリア、イギリスの2連戦で、段階的にダウンフォース主体のアップデートを投入。一定の効果が確認されると、今度は空力効率、つまり発生するダウンフォースとドラッグの比率など、空力性能の他の側面に時間を割くことができるようになった。
ここで重要なのは、空気抵抗をあまり発生させずにダウンフォースをできるだけ増やすことである。オランダで登場した新しいリヤウイングも、マクラーレンが達成しようとしたことの一環だった(下のベルギーとオランダの比較写真参照)。
「新しいリヤウイングを投入する段階に入ったということだ」とステラ代表は言う。
「金曜日のフリー走行でテストしたウイングは、ハンガリーで装着した“最大荷重バージョン”より、ダウンフォースもドラッグも少し減らしている」
「このウイングはザントフォールトのコースに適している。少なくとも、ドライ路面ではね。しかしコンディションが雨がらみで不透明だったため、土曜日からは旧バージョンに戻した。良いニュースは、新しいウイングがシミュレーションの予測通りに機能したことだ。(同じような空力レベルの)シンガポール、日本、カタールなどで使える効果的な武器を手に入れることができた」。
(第2回に続く)
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