レッドブル&HRC密着:「我慢して相手のミスを待つ」ことを選択したフェルスタッペン。慎重なレース運びで今季12勝目
F1第15戦イタリアGPのレース前、レッドブル・ホンダRBPTとマックス・フェルスタッペンには3つの嫌な予感があった。
ひとつは、スタート直前のフォーメーションラップで同じホンダRBPT製のパワーユニットを搭載しているアルファタウリの角田裕毅がエンジントラブルで止まってしまったことだった。
クリスチャン・ホーナー代表は「同じエンジンであれば、同じことが我々にも起きる可能性はゼロではない」と不安を感じていたという。
しかし、角田のエンジンは今回イタリアGPに投入されたばかりの4基目。それが1グランプリも走り切る前に壊れたということは、信頼性以前の品質不良のパーツがあった可能性が高い。
一方、レッドブルの2台は1〜3基目のいずれかのエンジンで、いずれもすでに複数のレースを走っているため、角田と同じような問題が起きる可能性は低かった。
ふたつ目の嫌な予感は、『モンツァの呪い』と呼ばれるジンクスだ。これは、2019年以来、イタリアGPの勝者は、翌年勝てていないという事実だ。2019年の勝者のシャルル・ルクレール(フェラーリ)も、2020年にここで初優勝したピエール・ガスリー(当時アルファタウリ)も、そして2021年にマクラーレン移籍後、初優勝したダニエル・リカルドも、翌年はモンツァで勝てていないどころか、全員がリタイアしている。
そして、3つ目がホンダがマクラーレンと組んでいた1988年に連勝が止まったのが、このモンツァだったことだ。11連勝で迎えた12戦目のイタリアGPで、スタート直後からエンジントラブルに悩まされていたアラン・プロストは途中でリタイア。これでひとりだけとなったアイルトン・セナは周回遅れを抜く際に交錯して、リタイアしてしまった。
しかし、日曜日のレッドブル・ホンダRBPTはそんな不安を吹き飛ばすほど、速く強かった。
「フェラーリはウイークを通じてトップスピードが速かったから、我慢して相手のミスを待つことにした」と言うフェルスタッペンは、いつもより慎重だった。スタート直後の1コーナーを2番手で通過したフェルスタッペン。カルロス・サインツ(フェラーリ)をオーバーテイクしてトップにたったのは、レースがもうすぐ3分の1に差し掛かろうとする15周目だった。
この後、5番手からスタートしていたチームメイトのセルジオ・ペレスもフェラーリ勢2台抜いて、2番手に浮上。これでレッドブルが46周目から1-2体制を築いた。
残り6周。もしどちらかのマシンにトラブルが起きたとしても、もう一方が優勝し、レッドブル・ホンダRBPTの開幕14連勝は確実となった。
最後までトラブルや不運なアクシデントに見舞われることもなく、ミスのない完璧な走りでトップでチェッカーフラッグを受けたフェルスタッペンは、見事、前人未到の10連勝を達成した。
「10連勝という記録は、達成しようと思ってもなかなかできないことなので、とても誇りに思うし、今日もチームがやってのけたことを誇りに思う。そしてもちろん、ここモンツァでワン・ツーを達成できたことは、僕たちにとって特別なことなんだ」
すべての呪いが解けたレッドブル・ホンダRBPTのスタッフたちに笑顔が戻った。
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