F1第15戦技術解説(2)予選を重視したフェラーリが勝てるシナリオはあったのか
各グランプリのF1マシンを観察するF1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが、細部の画像を紹介するとともに、注目点について解説する。今回は2023年F1第15戦イタリアGPのフェラーリとレッドブルに焦点を当てた。
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F1イタリアGPで、レッドブルとは異なり、フェラーリは、非常に軽いダウンフォースのウイングで走ることを選択した。そしてこれが引き起こした不利は、日曜日の気温の高さによっていっそう際立った。
軽いダウンフォースとアスファルトが発する42℃を超える熱は、F1マシンの左リヤタイヤに厳しい試練を与えた。マックス・フェルスタッペンのエンジニアで、いまや有名なジャンピエロ・ランビアーゼは、スタート前にタイヤを温存するよう求めた。
しかしタイヤでより苦しんだのは、フェラーリだった。首位を死守するカルロス・サインツはフェルスタッペンのアタックに絶え間なくさらされ、タイヤは限界まで摩耗し、ブレーキングやコーナリング中にスリップしまくった。
「左リヤタイヤの劣化を、予想以上に早く感じた」と、サインツはレース後に嘆いていた。
「マックスの猛攻を防ごうとして、タイヤを使いすぎたことはもちろんわかっていた。このままだと苦しくなるのはわかっていたから、早めのタイミングでハードタイヤに替えようとも思っていた。結局は、マシンとタイヤが対応できる以上に、激しくプッシュしてしまったということだ」
「でも僕らは結果的に、1ストップ作戦に固執した。レース前の数字が、それが最適な戦略だと示唆していたからだ。でも正直なところ、各スティントで少なくとも5周多すぎたと思う。ミディアムタイヤで走った最後の4周で、タイヤは完全に摩耗していたからね。ハードタイヤで走った最後の10周も同じで、ラバーが残っていなかった」
しかしもしラバーを温存する走りをしていれば、もっと早くフェルスタッペンに抜き去られていただろう。一方、アンダーカットを試みようと、もっと早くピットインしていたら、バルテリ・ボッタスとエステバン・オコンの後ろに下がってしまったはずだ。では無線で一時話し合っていたように、2回ストップしていたらどうだったか。15秒ほどロスして、表彰台も難しかった可能性がある。
この週末はハンガリー同様、ATA(代替的なタイヤ配分)が実施された。そのためチームが自由に使えるタイヤの数が少なく、事前に想定したテストがフリー走行で思うようにできなかった。さらにピレリが昨シーズンよりも一段階ずつソフトなコンパウンドを選択したことも、フェラーリにとっては不利な要因だった(去年はC2、C3、C4で、今年はC3、C4、C5)。
モンツァで最速タイムを出そうとしたら、リヤウイングはできるだけ薄くするのが理想的な選択であることは間違いない。しかしこの選択は、よりダウンフォースを発生するウイングよりもタイヤの消耗が激しくなるというデメリットがある。
フェラーリが予選重視のセッティングだったのに対し、レッドブルはあくまでレース当日に向けてシャシーを最適化していた。それでも逃げ切れると、フェラーリは思ったのか。あるいは表彰台に1台でも入れれば、十分だと思ったのか。いずれにしてもレッドブルの優位は、ここでも脅かされることはなかった。
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