“グリーン・レッドブル”と呼ばれるアストンマーティンAMR22。FIAは合法と明言も、レッドブルは知的財産流出を疑う

 

 アストンマーティンがF1第6戦スペインGPに持ち込んだアップデート版AMR22が、レッドブルRB18と似た形状の部分があることが注目を集めているが、FIAは、類似性について調査済みであり、アストンマーティンはレギュレーション違反を犯してはいないと明言した。しかし、レッドブル側は納得しておらず、「深刻な懸念」を示している。

 2022年に苦しいスタートを切ったアストンマーティンは、第5戦までに6点しか獲得していない。しかしスペインには“Bスペック”と言えるほど異なる形状のマシンを走らせる予定であることは事前に判明しており、スペイン初日からアストンマーティンには注目が集まっていた。

 セバスチャン・ベッテルとランス・ストロールが乗るアップデート版AMR22は、フロア、サイドポッド、エンジンカバー、リヤウイング、ヘイローが一新されている。そのなかのサイドポッドは以前のバージョンとは大幅に異なり、RB18と似た形状に変更されており、“グリーン・レッドブル”と呼ぶ者も出てくるほどだ。

2022年F1第6戦スペインGP セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)
2022年F1第6戦スペインGP セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)

2022年F1第6戦スペインGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2022年F1第6戦スペインGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 FIAは、アップグレードパッケージがレギュレーションに則ったものかどうかをチェックする、通常どおりの作業をスペインGP前に実施し、「他の競技者のパーツに似たものがある」として調査を行ったことを明らかにした。FIAの調査の結果、アストンマーティンのデザインには規定違反はなかったという。

「FIAは、2022年のFIA F1スペインGPに向けて、アストンマーティンチームが計画している空力アップグレードについて、イベント前のルーティンの合法性チェックを行った」と、FIAは述べている。

「この過程で、アストンマーティンの多くの特徴が、他の競技者のものと類似していることが明らかになった。そのためFIAは、技術規則第17.3条の順守状況を確認するため、調査を開始した。特に“リバースエンジニアリング”および不正な知的財産権移転の可能性についての調査である」

「両チームは、この調査においてFIAと完全に協力し、すべての関連情報を提供した。CADのチェックとアストンマーティンが採用した開発プロセスの詳細な分析を含む調査の結果、不正行為が行われていないことが確認されたため、FIAはアストンマーティンの空力アップグレードが規定に準拠していると考える」

「第17.3条は、写真(または他のデータ)をCADモデルに変換するデジタルプロセスである“リバースエンジニアリング”を明確に定義し禁止しており、チーム間での知的財産権の移転を禁止している。しかし同様にこの条項は、F1では常にそうだったように、他チームのデザインに影響を受けた車両のデザインを許可している」

「我々が行った分析では、アストンマーティンが行ったプロセスはこの条項の要件と一致していることが確認された」

 しかしFIAがこの声明を発表した直後、レッドブルは次のようなコメントを発表した。

「レッドブル・レーシングは、FIAの声明に関心を持って注目している」

「模倣は最大のお世辞ではあるが、デザインの複製は、当然ながら、FIAが定める“リバースエンジニアリング”に関するルールに従っている必要がある。しかしながら、知的財産の移転が行われた場合、それは明らかに規則違反であり、深刻な懸念となる」

 レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは、過去数カ月にレッドブルの従業員がアストンマーティンに引き抜かれていったことが関係していると示唆している。レッドブルの元空力責任者であるダン・ファローズは、4月にアストンマーティンのテクニカルディレクターに就任した。

レッドブル・レーシングのチーフエアロダイナミクス・エンジニアを務めたダン・ファローズ
レッドブル・レーシングのチーフエアロダイナミクス・エンジニアを務めたダン・ファローズ

「我々のマシンに非常に似ているクローンを作るようチームに指示するとしたら、それは重大なことだ」とホーナーが述べたと、『BBC』が伝えている。

「この冬の間に、何人かが移籍していった。彼らの頭の中にあるものはコントロールすることができない。だが、我々が深く懸念しているのは、知的財産が何らかの形で他の者の手に渡ったのかどうかだ」

「それに関しては、FIAの仕事であり、彼らに頼るべき問題だ。彼らが調査を行い、すべてのアクセス権を持って取り組む。レッドブルの知的財産があのマシンに取り込まれていないことを確認することを、彼らに強く期待している」

 アストンマーティンのスポークスパーソンは、FIAが合法であると認めたことを強調する声明を発表したと、『BBC』が伝えた。

「我々はFIAの技術担当者と我々のアップデートの詳細を共有している」

「アップデートの製作に使用されたデータとプロセスを分析した結果、FIAは我々のアップデートが技術規則に従って、合法的な独自の作業の結果として生まれたということを、文書で確認した」

 ランス・ストロールは、アストンマーティンは、冬の間、2種類のマシンを開発していたのだと、formula1.comに対して明かした。

「冬の間、僕たちはふたつのフィロソフィーを開発していた。シーズン序盤、最初のマシンを試したが、期待したような競争力がなかった。もうひとつのフィロソフィーがあったので、チーム全体が今週末にそれを持ち込むために奮闘した」

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