F1技術解説:第7戦(1)本来負けるはずがなかったフェラーリ。F1-75が持つ明らかな優位性

 

 2022年F1第7戦モナコGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回では、フェラーリF1-75のレッドブルRB18に対する優位性を分析する。

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 モナコでのフェラーリは最高のマシンを持ちながら、戦略的に失敗した。少なくとも予選までの、ドライ路面のモナコでは、F1-75は低速コーナーからの脱出の速さという特徴を遺憾なく発揮していた。

 この特性はギヤシフトの短さによるものか、あるいは加速性能自体の高さなのか、まだはっきりと説明はついていない。イタリアメディアによれば、フェラーリ製パワーユニット066/7のターボ径は平均より小さく、同じエネルギー量ならレスポンスに優れるということだ(これはフェラーリのERSが、直線や高速コーナーの終わりで追いつくレッドブルより、一般的に早くエネルギー切れを起こす現象を説明するものでもある)。つまり、フェラーリのV6は、最高回転数で最もパワフルというわけではなく、低・中回転域で強力なパワーを提供することができるということだ。

フェラーリF1-75 リヤウイング比較
フェラーリF1-75 リヤウイング比較

 いずれにせよ、バルセロナで導入されたハイダウンフォース仕様のリヤウイング(写真上)を装着したF1-75は、RB18に比べて加速が速く、フロントタイヤの温度上昇も早かった。イモラとマイアミでシャルル・ルクレールがレース中にデグラデーションに苦しんだのも、モナコのレース終盤にセルジオ・ペレスとマックス・フェルスタッペンがミディアムを、ルクレールやカルロス・サインツがハードを履いたのも、おそらくその理由からだろう。

 この純粋なスピードの優位性は、どのようにして現れたのだろうか。モナコの予選では、サント・デボート(ターン1)からミラボー間のセクター1ではフェラーリが明らかに優位に立ち、レッドブルはフロントタイヤのウォームアップに苦労した(フェルスタッペンとペレスはアタックの準備に1周余計にかかった)。

 対照的にミラボーからル・ポルティエにかけては、RB18が最速を記録した。おそらくトラクションが優れているからだろうが、同時にフェラーリの加速力を生かすにはコーナー間の距離が短すぎたのだろう。

レッドブルRB18 フロントブレーキダクト
レッドブルRB18 フロントブレーキダクト

 いずれにしてもレッドブルは、フェラーリに追いつくほど速くはなかった。モナコでは長いストレートがないことで、ブレーキを冷却する空気が不足する。そのためレッドブルも他のF1マシンと同様、大型のブレーキダクトを装着した(上の画像参照)。

 トンネルからシケインまでの両者の差は拮抗していたが、プールからの最終セクターでフェラーリが差を広げた。これはレッドブルのリヤタイヤが、オーバーヒートしたためと思われる。

 フェラーリはそれだけの優位に立っていた。にもかかわらず、戦略で敗れてしまったのだった。

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