【F1インタビュー】同士討ちを喫し、レッドブルの優勝争いを妨げた角田は「今までで一番へこんでいた」と山本雅史氏
F1第10戦イギリスGPに続き、第11戦オーストリアGPの現場にも足を運んだ元ホンダの山本雅史氏。舞台となるのはレッドブルリンクで、その名の通りレッドブルの地元だ。
山本氏はイギリスGPを振り返り、同士討ちのきっかけを作った角田裕毅(アルファタウリ)について「いままでで一番へこんでいました」と明かした。一方レッドブルについては、角田のマシンから落下したパーツで車体にダメージを負ったマックス・フェルスタッペンが優勝争いから脱落したものの、投入したアップデートの効果が見られたことに前向きな姿勢であると語った。
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──前回のイギリスGPではレッドブルは実力を出せないまま終わってしまいました。
山本雅史氏(以下、山本氏):実力を出せないまま終わったというより、土曜日のフリー走行3回目でマックス(・フェルスタッペン)がコンマ4秒くらい2番手を離していたことを考えると、十分アップデートのパフォーマンスを見せたと思います。レースではアルファタウリのデブリを拾って残念な結果になってしまいましたが、レース序盤にフロントウイングを破損して最後尾に落ちたチェコ(セルジオ・ペレス)がセーフティカーにも助けられたが、2位まで挽回しました。アップデートの効果があったということはポジティブで、レッドブルはそんなに焦っていません。今日マックスとも話をしましたが、「あの角田(裕毅)のデブリ、ごめんね」と言ったら、「OK、大丈夫。僕もいい経験したよ」と笑っていました。さすがチャンピオンは余裕だなと思いました。
──フェルスタッペンはSNSでも、そのデブリに笑顔を見せていましたよね。
山本氏:あの写真はよかったね。やっぱりチャンピオンたる人間だなと思いました。でも、ピエール(・ガスリー)はまだ怒っていたなあ。木曜日に会ったときも、「あいつはクレイジーなやつだ」と、まだチクチク言っていました。「普通はあんなところで抜いてこないよね」とも。同じドライバーでもチームメイトとそうでないでは違うんだなあと思いました。
──角田選手はどんな様子でしたか?
山本氏:いままでで一番へこんでいました。
──そのへこんでいる角田に対してどんな言葉を?
山本氏:「もう終わったことを引きずってもしょうがないんだから、切り替えてやるしかない。ここはレッドブルの地元だから頑張りなさい」と言ったら、「そうですね」と。
──今年はああいうミスはありませんでしたが、ここにきて急にミスが起きているのはどう分析されていますか?
山本氏:ピエールの残留がカナダGP後に発表されて、現時点でレッドブルの4人のドライバーで来年の契約が発表されていないのは角田だけじゃないですか。そういった意味では大なり小なり、「自分はまだ認めてもらえてないのかな」とか、いろんなことを考えてしまうと思います。カナダGPにしろ、イギリスGPにしても、なんとかチームのためにポイントを獲らなきゃっていう気持ちがこの2戦、変に強く出てしまったと私は見ています。ただ、ピエールだって、アレックス(アレクサンダー・アルボン)だって、(カルロス・)サインツもそうだったように、みんなこういう苦しみやプレッシャーは通過してきたので、気にしない方がいい。もちろん、気にしないでと言われても気にするんだろうけど……。
──今までで一番へこんでいたのですね。
山本氏:私にはそう見えました。ピエールと当たって、チームメイトをリタイアに追い込んだだけでなく、マックスの優勝も結果的にフイにしたわけですから。あの不運がなければ、マックスはレースに勝っていたと思います。本人も「ダブルパンチです」と言っていました。
──ヘルムート・マルコさんはモナコのときの角田選手の無線がちょっと酷かったと言っていましたよね。あのときもシルバーストンの時も、接触した後、無線でFワードを使ってました。
山本氏:メンタル的なところが少し悪く出ているというのが事実なんじゃないですか。確かにその無線の件もそうですし、あれは自分がまいた種なんだから自分が怒ることではない。その辺はもう少し冷静にならないと。今回、イギリスからオーストリアへの移動は、角田のトレーナーと一緒の飛行機だったのですが、トレーナーが「ヤマモトサン、オーストリアに行ったらユウキに話しかけてあげて」って言っていました。みんな角田の速さを認めているので、精神的な面をサポートできる人がいればいいんですが……。
──岩佐歩夢選手はF2からF1を目指していくと思いますので、スーパーライセンスを獲らなければいけません。今年はいきなりランキング4位以上でシーズンを追えるのは厳しいかと思いますが、今後について聞かせてください。
山本氏:でも可能性はまだあると思いますので、今年はまず精一杯やってほしいです。イギリスGPが終わったあとにご飯を食べに行って、こんなことをアドバイスしました。「チームがいかに一体になってシーズンを戦えるかがチャンピオンになる決め手だし、それをきちんと学びなさい。信頼関係を築いて戦っていけば、岩佐君なら必ず結果が残るから」。そして、「マルコさんも岩佐が所属するダムスのトップと話していたので、安心してオーストリアに行きなさい」と伝えました。本人も「そうですね」と言ってました。
一生懸命やった結果、今年スーパーライセンスが獲れたら獲れたでラッキーですし、獲れなかったらまた新たな道を作ればいい。いまはまずは目の前のレースに集中してほしいです。
──今年ランキング4位以上を獲れればもちろんですが、なかったとしても来年もまだチャンスがあるということですね。
山本氏:だから今年だけのターゲットに終えるのではなく、長い目で見る必要があります。どちらに転んでもいいように、レッドブルジュニアとして、きちんとマルコさんも考えてくれていますし、それを私も聞いていますから大丈夫だと伝えています。
──この間のメカニックのミスに関して岩佐選手が、「僕もミスすることがあるので、完璧を求めないで、コンスタントにやろう」とコメントしていました。
山本氏:チームのオーナーがミーティングで「お前たち、アユムのレースを台無しにして、このままじゃアユムとチャンピオンシップを獲りに行けなくなってしまうじゃないか」と檄を飛ばしていたらしいです。今後が楽しみです。
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