メルセデスF1、ポーパシングの発見が遅れたのは、シェイクダウン時の”嵐”のせい?

 

 今シーズン序盤から、ポーパシングやバウンシングといったマシンの上下動に見舞われているメルセデス。その苦悩の一端は、今季マシンW13のシェイクダウンが行なわれた日の天候にあった可能性がある。
 メルセデスは今シーズン序盤、マシンのフロア下を流れる気流を安定させることができず、ダウンフォースの発生量が増減し、マシンが激しく上下動するポーパシングに悩まされ、パフォーマンスにも大きな影響を与えた。その後、ポーパシングは解消したものの今度はマシンのフロア下が路面に当たってしまうバウンシングにも悩まされることになった。
 シーズン前半戦の終盤には、これらの問題を解消することができ、パフォーマンスも向上。2戦連続でダブル表彰台を獲得し、サマーブレイクを迎えることになった。
 メルセデスが序盤のポーパシングに苦しんだのは、W13のシェイクダウンが行なわれた日の気象条件にあった可能性があることが分かってきた。
 メルセデスは2022年用マシンW13を、2月18日にシルバーストン・サーキットで発表。その日のうちに同サーキットでシェイクダウンテストが行なわれた。しかしその日の天候は嵐とも言えるもので、当日はイギリス国内で時速200km近い突風が観測され、交通機関にも影響を及ぼした。ジョージ・ラッセルもこの日の風について「完全にクレイジー」だったと説明した。
 ただこの風は、メルセデスにとっては非常に大きな意味を持つものだった可能性がある。この風により、このシェイクダウンではポーパシングの深刻さに気付くことができず、カタルニア・サーキットでの合同テストを迎えてしまったようだ。
 メルセデスのトラックサイド・エンジニアリングディレクターのアンドリュー・ショブリンは、グラウンドエフェクト効果によって起こりうる問題について議論したが、「実際には我々を悩ませたようなメカニズムは予測していなかった」と語った。
「その日シルバーストンにいた時には、嵐の真っ只中だった。時速70マイル(約112km/h)の強い風が吹いていたんだ」
「シェイクダウンだったこともあり、かなり車高を上げて走り始めた。ダメージを受けるのを避けるためにね。後に車高を下げることはよくある。そしてその日は、通常の乗り心地だった。でもその後で問題が見え始めてきたんだ」
「しかしサーキットで適切な形で見て、何が起きているのかを理解し始めることができたのは、バルセロナに行ってからだった」
 メルセデスは2回目の合同テストとなったバーレーンで、ゼロポッドと呼ばれる大型アップデートを投入した。しかし、ポーパシングを解消することができなかった。この問題はシーズンが開幕した後も続き、レッドブルやフェラーリに太刀打ちすることができなかった。
 ショブリンは、シーズン前のテストと答えを追求することは、メルセデスにとって”特別な問題”だったと振り返り、そしてポーパシングは「これまで経験しなければならなかった最も複雑なこと」だと語った、
「ただ、その進歩は急進的で、とても心強いモノだった。我々が行なってきたことは全て、どんどん意味のあるモノになっていった」
 そうショブリンは語った。
「我々があまり理解していなかったのは、この問題が玉ねぎのようなモノだということだった。皮を一枚一枚剥いでいっても、常に同じモノを見ているような、そんな感じだった。そしてしばらくして、いくつかのメカニズムが働いていることに気付いた」
「問題は、レースの期間中にその課題に対処することは、自分達の時間の中で問題を探究できるファクトリーに戻って対処するより、はるかに感情的だし、困難でストレスが多いことだった」
「今年の序盤は厳しいモノだった。これまでの数年は、ほぼ全てのレースで優勝を争い、ポールポジションを獲って勝利を目指すことができると考えていたチームなんだ。かなりチャレンジングなことだった」
「でも現実には、ファクトリーで理解し、レースカーが実際に速く走るまでには、かなりのタイムラグが生じる。そしてバルセロナのテストが、学習してきたことをコース上で実践できる最初の機会だったんだ」
 ポーパシングの問題に悩まされたことで、メルセデスは技術面の一部をリセットすることになった。そして開幕戦やシーズン序盤に集中するのではなく、問題を長期的に修正することにしたという。
「我々エンジニアは、このレギュレーションが4年続くという観点から検討していた。そしてチームを本当の意味で傷つけるのは、開幕戦で勝てるかどうかではなく、次のシーズンに、今のレギュレーションの中で成長できるかどうかだ」
「我々が最も恐れていたのは、ファクトリーで開発を行ない、パーツを作り、コースに持ち込んで、それが機能しなければ、パフォーマンスの面で我々が扱っている基準が無価値になるということだった」
「それは、非常に恐ろしいモノだったんだ」
 
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